
中日、DeNAなどで本塁打王、打点王、首位打者に輝いたトニ・ブランコ氏(44)が8日(日本時間9日)、故郷ドミニカ共和国のナイトクラブで事故死した。
コンサートが行われていた首都サントドミンゴの有名クラブ「ジェット・セット」の屋根が崩落。少なくとも98人以上が死亡し、160人以上がけがを負った。米大リーグ13球団でプレーしたオクタビオ・ドテル氏(51)らも死去した。
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心優しき大砲ブランコ氏が、非業の死を遂げた。午前1時前ごろ、メレンゲのコンサート中に天井が突如崩落した。全米野球記者協会のヘクトル・ゴメス記者のX(旧ツイッター)によると、ブランコ氏は寸前で崩落を察知。トイレから席に戻ろうとした、元西武、オリックスで活躍したエステバン・ヘルマン氏を押した。機転によってヘルマン氏は一命を取り留めたが、ブランコ氏は数秒後に亡くなったという。
ブランコ氏は05年にナショナルズでメジャー昇格し、09年に中日入りし来日。本塁打王、打点王を獲得し、DeNAに移籍した13年には首位打者、打点王に輝いた。ドミニカ共和国のスポーツ省はSNSで「元メジャーリーガー、トニ・ブランコの死を深く悲しみます。彼の遺産は、私たちの国の野球史に永遠に残るでしょう」と悼んだ。
コンサートを行っていた人気メレンゲ歌手のルビー・ペレスは、元ロッキーズ内野手のネイフィ・ペレスのきょうだい。1000人近く収容できる平屋建ての会場には、政治家やスポーツ選手らが多数集まっていた。メジャー通算109セーブのドテル氏は約6時間後に救出され、当初は意識があったが、病院に搬送された時点で既に心肺停止状態だったという。
MLBで本塁打王、打点王を獲得し、現在は機構特別アドバイザーを務めるネルソン・クルーズ氏の妹で、モンテクリスティ州知事のネルシー・クルーズ氏も死亡した。アビナデル大統領に「屋根が崩れ、私は閉じ込められている」と直接電話したが、その後に病院で死亡が確認された。
ドミニカ共和国政府は悲劇を受け、8日から10日までを国葬期間とした。米大リーグ機構のマンフレッド・コミッショナーは「野球とドミニカ共和国とのつながりは深く、今日、私たちはドミニカ出身の選手やファンの皆さんのことを思いながら心を痛めています」と追悼メッセージを発表した。
○…ブランコ氏の長男でパイレーツ傘下1Aのトニ・ブランコ・ジュニア外野手が、父の死を悼んだ。インスグラムに報道を引用し「お父さん、神様が良い場所にお導きくださいますように」と投稿した。19歳のジュニアは22年1月に外野手でプロ入り。3年間ルーキーリーグでプレーし、昨季は初めて打率3割を記録。今季から1Aに昇格している。
◆トニ・ブランコ 1980年11月10日、ドミニカ共和国生まれ。05年4月にナショナルズでメジャーデビュー。09年中日入団。初打席本塁打でデビューすると、いきなり本塁打王、打点王の2冠。13年にDeNAに移り、同年は球団新記録の136打点をマークして首位打者と2冠。15年オリックスに移籍し、16年退団。ベストナイン3度(09、12、13年)球宴出場4度(09、10、13、14年)。現役時代は188センチ、102キロ。右投げ右打ち。