主砲と1歩ずつ、リーグ王座奪還へ! 阪神藤川球児監督(44)が新年に向けた取材に応じ、指揮官として初めて迎えるシーズンへ熱い決意を語った。就任後に座右の銘を新たに「球進一歩」に決定。岡田彰布前監督(67=オーナー付顧問)が大切にした「球道一筋」を球児流にアレンジした。また、今オフに国内FA権を行使して残留を決めた大山悠輔内野手(30)の名前を挙げ、打線の中心、チームを率いる存在として期待を寄せた。【取材・構成=磯綾乃】
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「球進一歩」。指揮官として初めて迎える新しい年に、藤川監督が新たな座右の銘を決めた。
「岡田監督が『球道一筋』。村山実さんからの言葉だった。僕は入団会見の時に『村山実さんみたいな投手になりたい』と言って、岡田監督に育てていただいた」
レジェンドOB村山実氏から、岡田前監督へと受け継がれた大切な言葉。藤川監督は2文字を残し、2文字を変えて、新たな風を吹き込んだ。
「『一筋』を一『歩』ずつ、『球道』を『進』む。タイガースの言葉として残っていくかなと。1個勝てば(優勝すれば)1個戻そうかなと思います。岡田監督がやったように」
大先輩から引き継いだリーグ王座奪還の使命。重圧は? と問われると、笑って否定した。
「全くないですね。能力を持った首脳陣と力のある選手たち、年齢層も若い。そういう選手、スタッフがいる状況でチームを預からせてもらうことに対する感謝の方が大きいですね」
ともに戦うのは頼もしいコーチ、スタッフ、選手。中でも猛虎打線には、大きな信頼を寄せる主砲がいる。藤川監督は言い切った。
「コアは大山です」
今オフ国内FA権を行使した大山は、ライバル巨人も獲得に乗り出していたが、悩み抜いた末に残留を決断した。
「すごい球団が取りに来ていたわけですし。日本で1番人気の選手だったわけなので。2025年に勝ち続ける、セ・リーグ、日本の球界のリーダーシップをとっていく中で、一番大事なリーダーシップを持ってもらう選手。彼が一番輝くところで、と考えています」
豪快なアーチで沸かせる佐藤輝、侍ジャパンで4番を務めた森下。チームの顔には事欠かない中、軸に据えるのは大山と迷いなく決めた。
「勝負強さ、出塁率、それから守備のハンドリングを含めてね。金本さんがよく仕込んでくれて、紆余(うよ)曲折あって、苦しんでつかんだ、与えられて出てきた選手ではないからこそ、力強さを持っている」
金本監督が率いた16年秋、サプライズでドラフト1位指名された際には後ろ向きな反応も経験した。それでも地道に練習を重ね、1つずつ技術を培い、今では誰もが認める存在。優勝を目指して1歩ずつ進む、藤川阪神の中心としてふさわしい。
「僕はもう、彼は40歳までやると思っている。40歳を超えても現役でできると思います。それだけの取り組む姿勢を持っていて、基礎があるので。まあ、いいところで打ってくれるでしょう」
阪神は今オフ、大山を筆頭に、原口、糸原、坂本の4選手が国内FA権を取得したが、全員の残留が決まった。選手1人1人の権利と静かに見守ってきた藤川監督も、これ以上ない“補強”を心から喜んだ。
「フリーエージェント(FA)の選手たちが落ち着いたというところが非常に大きい。FAの選手が残って、残留してくれて、非常に前向きな気持ちでいてくれているということが、一番の自分たちの力。計算というか、チーム作りは滞ることなくできると思います」
球団創設90周年を迎える25年。未来ある選手たちとともに、頂点へ続く道を歩んで行く。(後編に続く)
◆「球道一筋」 村山実氏の座右の銘。岡田前監督は、04年に初めて指揮官就任した際に「球」を外した「道一筋」を座右の銘とした。23年にリーグ優勝、日本一を達成し「頂点をとれば付けようと思っていた」との思いから、翌24年に「球道一筋」に変更した。