
<センバツ高校野球:横浜5-1健大高崎>◇28日◇準決勝
令和の怪物が覚醒した。昨秋の明治神宮大会で優勝した横浜(神奈川)が、連覇を狙う健大高崎(群馬)の剛腕を攻略し、19年ぶりの決勝進出を果たした。投げては、2年生の織田翔希投手が7回を6安打無失点の快投。レジェンドOBの松坂大輔氏が、かつて「平成の怪物」と呼ばれたように、令和の横浜から再び「怪物」が誕生した。新チーム発足から負けなしの19連勝で、7年ぶり決勝進出の智弁和歌山と紫紺の大旗をかけて争う。29日は休養日で、決勝は30日午後0時半開始。
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「この試合がお前を怪物にする」。前夜、村田浩明監督(38)から言われた言葉が、横浜の織田を奮い立たせた。「しっかり投げて自分も怪物になりたいと思いました」。無双状態で投げきる「怪物」を心に描きマウンドに上がった。
1、2回は低めの制球が定まらずピンチを招くも、自信のある真っすぐを投げ込み無失点に抑えると波に乗った。140キロ超えの真っすぐで内角を強気に攻め変化球で空振りを奪った。7回を投げ6安打無失点。「今日は勝利に貢献できるような投球ができたと思います」。笑顔が戻った。
ここまで3試合に先発も、大会前に痛めた中指の爪の影響もあり、納得のいく投球ができなかった。「心の弱さが出た」と下を向いたが、スタッフ、チームメートが背中を押した。試合前には、春夏5度甲子園Vの渡辺元智元監督から、電話で「周りを見て、力まず投げなさい」と励まされた。試合が始まり周りを見渡すと「リラックスだぞ」とチームメートが笑顔で声をかけてくれた。5回で交代の予定も「まだ行きます」と志願し、0を重ねた。
織田が描く怪物像はもちろん、レジェンドOBの松坂大輔氏だ。「自分の持ち味はまっすぐ。でも(松坂氏と比べると)変化球やメンタルは、まだまだです」と、上を見つめた。試合後、OBの村田監督は織田に声をかけた。「怪物になったな。ここから怪物は、どういうふうになっていくのかだぞ」。高校時代に中日涌井秀章や元ロッテ成瀬善久ら“本物”たちの球を受けてきた村田監督の言葉には、説得力がある。ここからがスタートだ。【保坂淑子】
◆無失策試合 健大高崎-横浜戦で記録。今大会4度目。