
<センバツ高校野球:横浜5-1西日本短大付>◇26日◇準々決勝
横浜の奥村頼人投手(3年)がその名の通り「頼れるエース」の投球で、優勝した06年以来19年ぶりの4強入りに導いた。チームは昨秋神奈川大会からの連勝を「18」に伸ばした。
「流れを変えてくれ」。同点に追いついた直後の6回表、村田浩明監督(38)から声をかけられ登板した。「その一言だけを信じてマウンドに上がりました」。指揮官から託された思いを胸に、右翼のポジションからマウンドへ。1球1球、魂を込めた。
今大会、いずれも本塁打を放っている西日本短大付の3、4、5番に「怖さはあったんですが、攻めていくのが自分の持ち味」と1歩も引かなかった。それどころか「この冬磨いた真っすぐがどれくらい通用するか試したかった」と真っ向勝負を仕掛けた。
厳しいコースを狙い、真っすぐとチェンジアップで緩急をつけ、6回の1イニングはいずれも3球で三振を奪う「イマキュレートイニング」を達成。笑顔でベンチに戻った。
頼れるエースの力強い投球にも後押しされ、攻撃陣が息を吹き返した。その裏、4安打で3得点を挙げ一気に逆転に成功。奥村頼も9回までの4イニングを完全投球で試合を締めた。
昨夏、神奈川県大会決勝の東海大相模に先発するも逆転負け。試合後、村田監督から「おまえは信頼できない」と言われた言葉が胸に突き刺さった。「すごく悔しくて、誰よりも練習しないと信頼をしてもらえないと思った」。
朝7時からの朝練習から手を抜かず。人一倍の練習量で信頼を勝ち取った。「横浜の背番号1を背負っているからには負けるようなピッチングはできません」と胸を張った。
名前の由来通りに成長した。滋賀県出身。父倫成さんは地元の八日市高校で野球部の監督を務める。母いつこさんは「父が現役時代、右翼(ライト)を守っていたこともありますが『明るい』『人に信頼される人になってほしい』という思いを込めて名付けました」と話す。投手を務めることには「想定外!」と笑い飛ばすが、まさに名前を地でいく活躍だ。
次戦は昨秋、関東大会決勝で戦った健大高崎。「手ごわい相手。しっかり勝って決勝の舞台に進みたい」。明るく横浜の未来を照らすライトになる。【保坂淑子】