
<センバツ高校野球:花巻東1-9健大高崎>◇26日◇準々決勝
健大高崎(群馬)が花巻東(岩手)に9-1と快勝し、2年連続の4強入りを決めた。8回から登板したエース石垣元気投手(3年)がセンバツ大会最速で甲子園最速タイとなる155キロを計測し、2回無失点の圧倒的な投球で締めた。史上4校目の連覇へあと2勝とした。初出場の浦和実(埼玉)は延長10回に甲子園史上初の延長1イニング8得点を挙げ、タイブレークの末に聖光学院(福島)に勝利した。28日の準決勝は健大高崎-横浜、智弁和歌山-浦和実が対戦する。
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スタンドのどよめきが心地いい。健大高崎・石垣が、自慢の速球で先人たちの記録に並んだ。8回から登板し、155キロを連発。8回1死から花巻東の打者2人に4球連続で計測し、9回2死から空振り三振で締めた勝負球もこの日最速。全27球のうち5球も155キロに到達し「今日もストレートが一番良くて、出るかなと思いました。うれしい気持ちです」と確かな感触を得た。
甲子園大会で球場表示されたスピードでは春夏通じて最速タイ。センバツ大会では単独最速となり、夏を含めても過去に07年佐藤由規(仙台育英)、13年安楽智大(済美)の2人しか体感できていない「155」。肌寒さを感じる春に大台に達したことで準決勝以降、さらには夏に向けて期待が高まる。大会直前の練習で左脇腹を痛めていたが、影響を全く感じさせない2イニング0封。「ほとんどマックスに近く投げられました」。名前にふさわしい“元気”な姿で2試合連続の好救援だ。
名前の由来は10日ほど遅れた出産予定日。愛息の成長を気にかけた両親が「とにかく元気な体に生まれてほしい」と願って名付けた。結果的に3900グラムから健康な体ですくすく育ち、甲子園を沸かせるスターにまで上り詰めた。
2回戦の敦賀気比戦では152キロを投げたが、大会2度目の登板でさらに3キロを上積み。昨秋の関東大会で記録した自己最速158キロ越えも見据え「まだまだ行けるなと感じました」と笑みがはじけた。甲子園最速更新に向けて「期待してもいいか」と問われても「はい!」と自信満々だ。
準決勝は昨秋の関東大会決勝で敗れた横浜が相手。大会前から対戦を熱望していたライバルが連覇阻止へ立ちはだかるが、不安なそぶりは一切なし。「今日みたいなピッチングをして圧倒できれば」。次戦も“元気に”腕を振る。【平山連】
健大高崎・石垣が155キロ。04年春から甲子園球場のスコアボードに球速が表示されて以降、春夏を通じて07年夏の佐藤由規(仙台育英)、13年夏の安楽智大(済美)の最速記録に並んだ。春だけでは08年平生拓也(宇治山田商)と12年藤浪晋太郎(大阪桐蔭=ともに153キロ)を更新した。
〇…これまでスカウト計測では01年夏の寺原隼人(日南学園=158キロ)が最速。これは大リーグのブレーブスが計測した98マイルを換算した約157・7キロだが、当時テレビ中継だけに表示した甲子園球場のスピードガン(92年設置)では154キロだった。スカウトの数字は場所や機器の違いなどで球場表示の上や下にぶれることがある。今大会では横浜・織田も152キロを出した。12年春に大谷翔平(花巻東)と藤浪が150キロを投げ合ったように、準決勝で快速競演が見られるかもしれない。【織田健途】
◆イニング3者連続3球奪三振 「イマキュレート(欠点のない)イニング」と呼ばれる。プロ野球では昨季の森浦、森下(ともに広島)まで通算20人(22度)が記録。梶本隆夫(元阪急)とモイネロ(ソフトバンク)が1人で2度マークした。最近の高校野球では22年夏、近江・山田陽翔(現西武)が鳴門戦の7回に達成した。
◆横浜対健大高崎 両校の甲子園での対戦は過去1度。11年夏、柳裕也(現中日)、近藤健介(現ソフトバンク)らを擁した横浜が、延長10回に6-5でサヨナラ勝ちした。昨秋の関東大会決勝も横浜が延長10回、4-3でサヨナラ勝ち。
◆春連覇へあと2 昨年優勝の健大高崎が4強。前年優勝校の春4強は23年大阪桐蔭以来。過去の連覇は29、30年第一神港商、81、82年PL学園、17、18年大阪桐蔭の3校が達成。
◆石垣元気(いしがき・げんき)2007年(平19)8月16日生まれ、北海道登別市出身。小1で野球を始め、中学は洞爺湖シニアでプレー。健大高崎では1年春の県大会からベンチ入りし、2年春には5試合防御率1・96で2年生コンビの佐藤龍月とセンバツVに貢献。卒業後の希望進路は「プロ1本」と明言しており、将来の夢は大リーガー。最速158キロ。178センチ、78キロ。右投げ両打ち。