
甲子園春夏58勝のPL学園(大阪)元監督、中村順司氏(78)がセンバツ大会準決勝2試合の見どころを語った。昨秋関東大会決勝の再戦となる横浜(神奈川)と健大高崎(群馬)の対決を、目の離せないハイレベルな試合と予想。また初陣校・浦和実(埼玉)との対戦に臨む智弁和歌山には、近畿勢最後のとりでとしての存在感に期待した。
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今の高校野球が生み出すハイレベルな対決を見ることができるのではないか。昨秋の関東大会決勝から一冬越えて、横浜と健大高崎がセンバツ準決勝で再戦を果たす。
開幕前、健大高崎のエース石垣君が左脇腹を痛めているというニュースが飛び込んできた。だが、いざマウンドに立つと力強い速球を披露。グラブをはめた左手の使い方がうまい。右の上手投げ投手にとって、左手は腰のあたりにあるのが理想的。上から投げ下ろしてくる右手を受け止めるような形で交差する。左脇腹に一番負担がかからない投げ方を見せている。
過去3試合で先発に左打者7人を並べた横浜打線に対し、左腕の下重君が先発し、これまでより早い回から石垣君が救援するのでは、と思っていた。だが石垣君は先発を志願したという。それだけ横浜は好敵手なのだろう。公式戦無敗が示すように、奥村頼人君、織田君が軸の投手陣は多彩。守りもうまく、打線も力強い。相手のスキをつく走塁も光る。
両校とも難敵を倒してきた。厳しい戦いを乗り越えるたび、身につけてきた力が発揮され、新たな力も身につく。延長タイブレークで決着した昨秋とはまた違う、目が離せない試合になるだろう。
準決勝第2試合では智弁和歌山が浦和実と対戦する。PL学園の監督だったときに、関東のある監督に、強い近畿勢に向かっていくのも甲子園の目標の1つと言われた。その言葉が心に残り、しっかりしたチームを作ろうという原動力になってきた。近畿勢で唯一4強に勝ち上がった伝統校の底力を見守りたい。攻撃力も、投手力もレベルが高い。体格のいい選手がそろい、ユニホームが甲子園に映える。
一方の浦和実は、今大会で旋風を巻き起こしている。変則左腕エース石戸君の活躍が目立つが、打撃もしぶとい。どの打者も振りが鋭い。打席での構えがオーソドックスで、きちんとセンター返しをして勢いのある打球を外野に運んでいる。変則左腕攻略も楽しみだが、始まってみれば攻撃力の勝負になるかもしれない。(PL学園前監督)