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360kgの巨体が浮きあがる?|ハーレーダビッドソン ストリートグライドスペシャル試乗


鮮やかなオレンジ色がまばゆい、ホットロッド・バガースタイルの巨体をスイスイと走らせる。ハーレーダビッドソン ストリートグライドスペシャルは、見かけよりも気軽に乗れる、いい意味で裏切られた1台だ。




REPORT●ノア セレン


PHOTO●山田俊輔

ハーレーダビッドソン ストリートグライドスペシャル…… 3,375,900円〜



ハーレーの中でも「堂々さ」トップクラス!

「ぶはっ! でけぇ!」




 まだまだ力持ちのアラフォー、そして長身の筆者だが、ファーストコンタクトで思わず口からこぼれた言葉だ。ストリートグライドスペシャル。最新のミルウォーキーエイトエンジン、しかも排気量が大きい方の「114」を搭載した、ホットロッド・バガースタイルのハーレーである。オレンジ色が妖しく輝いていた地下駐車場から秋晴れの下に出してくると、ますますその塗装クオリティの高さに引き込まれる。大きな車体がそこに置いてあるだけで何たる存在感。




 1868ccのロングストロークVツインエンジンを搭載する車体は359kg。1000rpm以下で安定してアイドリングし、163Nmのトルクを3000rpmで発生させる。ハーレーといえば重心が低くて初心者にも敷居の高くない大型バイクという認識の人もいるかもしれないが、冷静に考えるととんでもないバケモノだろう。しかもこのストリートグライドスペシャルはクラシックな見た目とは裏腹に最新設備も充実。ABSはもちろん、前後連動の電子制御ブレーキシステムを備え、トラクションコントロールも付帯。まさに最先端のハーレーといえるのだ。

間違いなく重いが、慣れれば何とかなる?

 取り回しは「意外と大丈夫」などと安易に書きたくはない。何せ360kgである、軽いわけがない。しかもハンドルにはBOOM BOXと呼ばれるサウンドシステム/ナビなどが装備され、ハンドル周りの重量もなかなか。押し歩いている時にハンドルが一定角以上切れるとカゴに買い物を満載したママチャリのようにグワッと一気に切れてくることがあるため気を付けたい。取り回しは意外に跨ったままの方が安定した。足つきが良く、またシートがタンクの方まで伸びているため傷つける心配もなかった。




 ところがズシっとした重要感は走り出せば気にならない。極低回転域から十分すぎるトルクがあり、繋がりがわかりやすいクラッチを繋ぐと車体全体がフワッと離陸したように軽くなる。これだけマッシブな車格なのにタイヤが細めであるおかげか、交差点の右左折も意外と軽やか。第一印象の巨大感は街中を流しているうちに薄れていった。




 特に印象が良かったのは、第一に静かであることだ。個性的な排気音も特徴であるハーレーだが、爆音ではさすがに気がひける。フィーリングは十分に残したまま最新の騒音規制に対応し、大人の音量で気兼ねなく走れるのは好印象。またズシっと座ってしっかりと尻がホールドされるシートも高い安心感を提供してくれ、おかげで足は逆にステップボードに無造作に放り出すことができてしまう。その開放的な姿勢はいかにもハーレーを満喫している感があって楽しかった。

幸せになって欲しい

 でけぇ! という第一印象ながら、取り回しさえ注意し走り出してしまえば、こんな巨体でもハーレーワールドを楽しめてしまう、そんなところがハーレーマジックだろう。気持ちの良い秋晴れだったこともあり、「ははっ、最高じゃん!」と試乗を終えた。しかし冒頭に書いたように筆者は大柄で力持ち、バイクの経験も人並み以上にある。だから再び書いておきたいが「誰でも乗れる。大丈夫」と安易には書きたくない。やっぱり大きくて重いバイクだし、もし倒してしまったら起こすのは容易ではないはずだ。素晴らしいルックスなだけにキズなど付けたくはない。ある程度経験を積んだライダーや、ハーレー慣れしたライダーにお薦めしたい、ハイエンドモデルと言えよう。

ディテール解説

かつてのツインカムエンジンから、再びシングルカムに戻しつつヘッドを水冷化した新時代「ミルウォーキーエイト」エンジンの排気量の大きな114キュービックインチ仕様を搭載。メカニカルノイズも洗練され、スムーズで使いやすいエンジンだ。

大きなステップボードには厚手のラバーが張ってあり振動も気にならない。足の位置を限定されずに投げだせるのは開放感があるが、ニュートラルが出しにくかったのは気になった。

変わらぬ丸タイプのヘッドライトながら、ハイ・ローが中で独立するなど個性も演出。当然LEDで、ハーレーはその明るさに定評がある。今回は夜間の試乗がなく残念だ。

大変優秀なシート。快適なだけでなく、パワフルなエンジンによる加速時にしっかりと腰をホールドしてくれて安心感が高い。オプションでバックレストも装着できるため長距離にも向くだろう。タンデムライダーの面積は少なめではあるが。

グロスブラック仕上げのホイールはフロント19、リア18インチ。ブレーキにはブレンボキャリパーを採用し、前後で独立したABSシステムを搭載する。

堂々とした4連メーターと左右のスピーカーはまさに「アメ車」感。防風効果もあるが、これらすべてがフレームマウントではなくハンドルに乗っているため重量はなかなかだ。中央のディスプレイはタッチパネル式で、音楽などのエンターテインメントやナビなど多彩な機能を持つ。



スイッチ類は相変わらず独特のハーレースタイル。普段使わない機能は説明書を読みながらおいおい勉強するとして、ウインカーが左右独立式というのはなかなか慣れが必要な部分だ。

自分のアゴが美しいオレンジに照らされているのを感じられるほど、視界に入ってくる22.7ℓ容量のタンクは美しい。メインキーは開錠したままでイグニッションのオン・オフができてしまうためハーレー初心者は気を付けたい。

バガースタイルを印象付けるのは「ストレッチサドルバッグ」。ロー&ロングなスタイリングを演出する。テールランプはウインカーと一体となっているためすっきりしている。

蝶番の部分やロック機能など非常に高品質な作りとなっているサドルバッグは容量もたっぷり。着脱もワンタッチで、とても使いやすい収納スペースとして活躍するはずだ。

主要諸元

●パワーユニット


エンジン:Milwaukee-Eight® 114


ボア:102 mm


ストローク:114 mm


排気量:1,868 cc


圧縮比:10.5:1


フュエルシステム:電子シーケンシャルポートフュエルインジェクション(ESPFI)


エキゾースト:ブラック、2-1-2デュアルエキゾースト with テーパードマフラー




●ディメンション


全長:2,425 mm


シート高:690 mm


最低地上高:125 mm


レイク(度):26


トレール:173 mm


ホイールベース:1,625 mm


フロントタイヤ:130/60B19 61H


リアタイヤ:180/55B18 80H


燃料容量:22.7L


オイルタンク容量:4.9L


出荷時重量:359 kg


車両重量:375 kg


ラゲッジ積載容量(容積):0.071 ㎥




●ドライブトレイン


プライマリードライブ チェーン, ギア比:34/46


ギア比(オーバーオール):1速 9.593


ギア比(オーバーオール):2速 6.65


ギア比(オーバーオール):3速 4.938


ギア比(オーバーオール):4速 4


ギア比(オーバーオール):5速 3.407


ギア比(オーバーオール):6速






●シャシー


フロントタイプ:5 グロスブラック プロディジイ


バックタイプ:グロスブラック プロディジイ


ブレーキ・キャリパータイプ:32 mm、前後-4ピストン固定

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