
<ヤクルト1-7巨人>◇21日◇神宮
あとひとつ-。マー君が17年ぶりの神宮で仁王立ちした。プロ19年目の巨人田中将大投手(36)が5回3安打1失点で今季2勝目。4月3日中日戦以来となる約4カ月半ぶりの勝利で、史上4人目の日米通算200勝に王手をかけた。内外角ともベース板をいっぱいに使う、安定感ある投球で余力を残した81球。中6日の28日広島戦(マツダスタジム)で悲願の大記録を狙う。チームも3カードぶりの勝ち越しを決め、勝率を5割に戻した。
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大好きなチームメートが待っていた。グラウンドを引き揚げる田中将を待ち受けていたのは内海投手コーチやリリーフ陣。歓喜のハイタッチや抱擁を交わした。約4カ月半ぶりの白星に「周りの方々に支えられているのはずっとそうですし。そういう支えやサポートがあって、マウンドに立ってプレーすることができている」と感謝の言葉を並べた。
糸を引くようなアウトローで勢いに乗った。2回1死二塁。ヤクルト山田を2球で追い込むと、最後は外角低め146キロ直球で見逃し三振に仕留めた。4回にオスナにソロ本塁打を浴びて1点を失うも「全体的に直球の状態が良かった」と、ファームで取り組んできたアウトローへの制球力を遺憾なく発揮した。
1軍の舞台を離れても決して気持ちを切らすことはなかった。5月2日に1軍登録を抹消されてから、3カ月以上にも及ぶ2軍暮らし。「いろんなところを意識しながら」と、1人黙々とネットスローを行う日もあった。楽天時代に数々の伝説を残し、米大リーグの名門ヤンキースでも主力を張ってきたレジェンド。どこかでやるせない思いもあったはず。それでも「グラウンドに出てきたらそこは関係ない」と、若手に交じって汗を流した。
根底にはフォア・ザ・チームの精神がある。練習中の合間を縫っては、若手投手のブルペンを見学したり、アドバイスする姿があった。この日も5回に二塁手の中山が一塁へ悪送球し走者を背負ったが、後続を抑えて、笑顔で中山を出迎えた。
大偉業が目前に迫る。日米通算199勝目。200勝の機運も高まるが「勝ちへの思いが強くなったからといって、勝てるわけじゃないし。できることを1つ1つやっていこう。自分の状況を理解して前に進んでいこう、もうそこだけ」。あとひとつだ。【水谷京裕】
◆200勝メモ 日本で200勝は08年山本昌(中日)まで24人が達成。日米通算で記録した日本人選手は05年野茂(デビルレイズ)16年黒田(広島)24年ダルビッシュ(パドレス)の3人。日米199勝の田中将があと1勝と迫っており、田中将の下には石川(ヤクルト)が188勝、岸(楽天)が169勝、涌井(中日)が166勝と続く。
▽巨人阿部監督(田中将に)「立ち上がりはちょっと球が走っていなかったけど、何とか切り抜けてそこから上がってきた。(日米通算200勝目へ)もう、頑張ってもらうよ。(ローテは)そのまま」