トライクと言えば、前1輪、後ろ2輪の3輪バイクである。しかし、その逆のモデルもまた、存在する。つまり、前2輪、後ろ1輪の3輪バイクだ。見た目にも迫力あるこの3輪バイク、一体どのような乗り味なのか……そしてどういった経緯で誕生したのか……興味ばかりが募るトライクなのだ。
REPORT/PHOTO●伊藤英里(Eri Ito)
第46回東京モーターショー2019のBRPジャパンのブースで展示されているのが、この前2輪後ろ1輪の3輪バイクだ。トライクとも呼ばれるが、通常とはタイヤの数が前後逆、ということでリバーストライクとも呼ばれる。
今回展示されているのは、『Can-Am Ryker 600』と『Can-Am Ryker Rally Edition』の2モデル。『Can-Am Ryker 600』はRotax600 ACE並列2気筒エンジンを搭載。900ccの並列3気筒エンジン搭載モデルもラインアップされている。一方、『Can-Am Ryker Rally Edition』は900cc 並列3気筒エンジンが積まれており、モデルとしてはオフロードの印象を色濃くした。『Can-Am Ryker 600』とはホイールやタイヤ、シート形状などが違っている。
前側に2輪配置されているので、前から見るととても迫力がある。フロントタイヤからナナメに伸びるサスペンションはレーシングカーのよう。それでいてシートはとてもコンパクトに収まっている。CVT(無段変速機)が採用されており、操作は右手のスロットルと右足のブレーキペダルのみ。ブレーキが三輪駆動という点は、なるほどクルマに近いのかもしれない。
見れば見るほど、前2輪、後ろ1輪のトライクの乗り心地がとても気になってくる。BRPジャパンの代表取締役 大貫陽介さんに乗り心地を伺うと、「バイクでもないし、クルマでもない……独特の乗り味なんです」と、表現を見つけるのに窮した様子。
「一番近いのは、カートでしょうか。クイックに曲がっていく感じなんです」
実は筆者、過去に2度ほどレーシングカートに乗った経験がある。その印象からすると、ハンドルの動きがリニアにフロントタイヤへと伝わる操作感……に近いということらしい。
そんなリバーストライクを販売するBRPはカナダを拠点とする会社で、スノーモービルや水上スキーを開発している。そのスノーモービルからインスピレーションを得て生まれたのが、リバーストライクだったそうだ。
そう言われてみれば、『Can-Am Ryker 600』、『Can-Am Ryker Rally Edition』ともに前から見るとスノーモービルの形状に似ていることに気がつく。フロントからハンドルにかけてのカウルのゆるやかな曲線も、バイクやクルマとは違う。デザインは、スノーモービルと共通性が持たされているのだそうだ。なるほど、そうした経緯で生まれたリバーストライクということならば、バイクでもクルマでもない独特な乗り味、というのはうなずける。
ちなみにこのリバーストライク、普通自動車免許、しかもオートマチック限定免許で乗ることができる。車両区分としてはサイドカー(側車付2輪車)なので、普通自動車免許で乗れる3輪バイク、とも言える。法律上はヘルメット不要だが、BRPジャパンとしては安全性の面から被ることを推奨しているそうだ。
知れば知るほど気になってくるこのリバーストライク。第46回東京モーターショー2019のDRIVE PARKエリアで、同乗試乗体験ができる。モデルは『Can-Am Spyder F3-Limited』、日本自動車ジャーナリスト協会会員の運転での同乗となり、期間は10月28日(月)~31日(木)。同乗試乗体験には予約が必要で、試乗時間の2時間前から受け付けが開始される。自分での運転ではないものの、「独特な乗り味」を味わってみては。