3代目となったポルシェ・カイエン。もはや各ブランドにとって当たり前となったスポーツカー顔負けの性能を誇るSUVというのは、間違いなくこのカイエンからスタートしたといえる。その元祖の秘密をあらためて考えた。
REPORT◉(山崎元裕)
PHOTO◉田村 弥(Wataru Tamura)/三橋仁明(Noriaki Mitsuhashi)N-RAK PHOTO AGENCY
※本記事は『GENROQ』2019年3月号の記事を再編集・再構成したものです。
スポーツカーに匹敵する驚異的な走り
2002年に初代モデルが誕生して以来、2世代にわたって世界中の市場で77万台以上をセールスしたとされるポルシェ・カイエン。進化した第3世代をじっくりと味わってみると、その爆発的なヒットの背景には確かな理由というものがあることを知ることができた。それはポルシェ自身が、このカイエンをSUVではなく、常に4ドアスポーツと称することからも明らかだ。
今回試乗したモデルは最もベーシックなもので、シンプルに「カイエン」というネーミングを与えているのもまたポルシェの流儀。搭載エンジンは340㎰/450Nmの最高出力/最大トルクを発揮する3ℓのV型6気筒ターボで、これに8速AT=ティプトロニックSを組み合わせる。駆動方式はPTM=ポルシェトラクションマネジメントによる4WD。ドライバーは圧倒的な安定感とともに、軽快なドライブを楽しむことができる。
メーターユニットの視認性や、ステアリングホイールの機能性も大きく高まった。とりわけメーターユニットの両側にレイアウトされる7インチサイズのHDディスプレイには、ナビ画面はもちろんのこと、さまざまなドライビングデータを表示することが可能。オプションのスポーツクロノパッケージを選択すれば、ステアリングホイールに、ドライビングモードを選択するためのダイヤルスイッチが装備され、さらに操作性は高まる。
3ℓのV型6気筒ターボエンジンのパフォーマンスは、空車重量で1985㎏(EU)、全長×全幅×全高で4918×1983×1696㎜というカイエンのボディを力強く加速するには十分なパフォーマンスだ。最大トルクの450Nmはわずか1340rpmで立ち上がると、そこから5300rpmまでフラットに発揮され続けるから、当然のことながらカイエンの加速はとても息が長いものに感じられる。高速域でも振動やノイズは小さく、8速ティプトロニックSをマニュアル操作すれば、まさにスポーツカーにも匹敵する速さで、ワインディングを駆け抜けることさえ可能になる。
さらに驚くべきはフットワークの完成度だ。試乗車には20インチ径のタイヤが装着されていたが、それがほとんどネガティブな印象を感じさせなかったのは、さすがはポルシェの仕事といったところ。カイエンにはほかにオプションで、3チャンバー方式のエアサスペンションなど、さらに走りと乗り心地をともに向上させるアイテムも用意されているが、あえてそれを選ばなくても、十分に魅力的なセッティングを感じることができるように思う。
第3世代への進化を果たしたことで、すでにカイエンというモデルの個性は完全に確立された。それを証明するのは、もちろんエクステリアデザインだ。今回もその外観は、基本的なシルエットはそのままに、そのディテールをより現代的に、そしてスタイリッシュに手直ししてきたカイエン。プレミアムSUV市場での存在感は、やはりこれからも変わることはないだろう。それを確信することができた試乗だった。
SPECIFICATIONS ポルシェ・カイエン
■ボディサイズ:全長4918×全幅1983×全高1696㎜ ホイールベース:2895㎜
■車両重量:1985㎏
■エンジン:V型6気筒DOHCターボ 総排気量:2995㏄ 最高出力:250kW(340㎰)/5300rpm 最大トルク:450Nm(45.9㎏m)/1340~5300rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕ&Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ255/55ZR19(8.5J) Ⓡ275/50ZR19(9.5J)
■パフォーマンス 最高速度:245㎞/h 0→100㎞/h加速:6.2秒
■環境性能(EU複合モード) CO2排出量:209~205g/㎞ 燃料消費率:9.2~9ℓ/100㎞
■車両本体価格:976万円