10数年前に経験した「ある話」が急に蘇ってきた。
それも結構鮮明に、である。
ある若者から「トライアンフGT6が欲しい」と連絡があった。
それこそが、今回のテーマ「20代の若者に旧い輸入車が欲しいと相談されたら?」を投げられたときに真っ先に思い浮かんだ物語である。
実際に20代の若者に「旧い輸入車が欲しい」と相談された
10数年前は、まだSNSといったワードすら耳にしたことがない時代だった。情報はブログで発信し、欲しい情報もブログでかき集めていた頃だ。
ある日、関西在住の若者から筆者のブログにコメントが書き込まれた。
彼は、以前から何度か筆者のブログにコメントを書き込んでくれてはいたが、今回は驚いた。その内容とは、「以前からトライアンフGT6が欲しかったのですが、横浜で売りが出ているので買いに行きます!」といった主旨だったからだ。
初めて乗る旧車にしては情報量が少なく、ハードル高いかな…という思いはあったのだが、何度かやり取りしているうちに、その若者から情熱が伝わってきた。
彼がちょうど横浜に来る日は筆者もオフだったので、「それなら自分が駅まで迎えに行って店まで連れて行ってあげるよ」と返信した。もちろん、彼とはネット上でしか面識がなく、このときが初対面となった。
彼はかなり驚いた様子で「会長が連れて行ってくれるのですか!」と、喜んでくれていたような記憶がある。
筆者自身、「若者のクルマ離れ」といったキーワードを耳にしはじめていた頃だったので、「こんな楽しい話題は放っておけない」と、自分なりに興味があった。よって、このときの流れは必然だったのかもしれない。
そして、いざトライアンフとご対面!
トライアンフGT6が売られていたのは、横浜市港北区にある小さな工場だった。今、その工場が存在するのかは分からない。よくぞここまで分かりづらい店を探し当てたものだと思いつつ、皮肉を言いたくなるほど難解な小道を進みながらようやく到着した。
当時、著者はMGC GTという、ほとんど日本で走っている姿を見たことがない3リッター直列6気筒エンジンを搭載した英国車に乗っていたので、工場に到着するや数人に取り囲まれることなった。しかも「横浜の知り合いと一緒に来ると話には聞いていたのですが、まさかユダ会長だったとは」と、筆者のことも知ってくれていたようだ。
そうなると話は非常にスムーズだ。