
東京ヴェルディの城福浩監督(64)が21日、夏の移籍期間が前日で閉められた中、チームの補強事情について言及した。
20日に発表されたJ2山形DF吉田泰授ら合計6人が新たに加入。吉田に関しては左サイドを専門とする貴重なレフティーであり、現在のチームにいない選手ということでの補強となった。ただ今季J2でリーグ戦8試合出場が示す通り、レギュラーではない。そんな事情も踏まえ、あらためて今季の補強戦略についてこう総括した。
「はっきり言えるのは、彼ら自身が成長しないとピッチに立てないぐらいのキャリアであることは確かです。それは否めない事実なので。彼らの持っているポテンシャルと成長の意欲というものを我々は加味してチョイスしましたけど、このクラブが今できるギリギリのところだったのかなと。もし、可能であれば、これがもう1カ月早く、こういうメンバーがそろえば、彼らを練習場で鍛えて成長させられる時間をもらえれば、より今年の戦力としてもっと早く出ていくんでしょうけど、この時期にというのがこのクラブの今の力なのかなと思います。ただ我々は与えられた戦力の中で、より成長を促して、彼らが5分、10分の時間を獲得していきながら、今の先発メンバーの立ち位置に迫っていくというところ、みんなでやらない限り、今シーズンは難しいシーズンになると思うんでね。彼らの成長に寄り添っていきたいと思います」
つまりチームスタイルに合致しそうな素材を選び、練習グランドでヴェルディ仕様へと昇華させていく。チームが大事にする攻守のハードワークや精神性を学ぶ必要がある。
「繰り返しになりますけど、J1の他のクラブと補強が違うのは明らかなんです。それを我々のスタイルの中で1日も早く戦力化していくか、というのが僕らがやれることなので、そこはもう1日1日の勝負なので、彼らにグループでも、個人でも映像を見せていますし、個別のトレーニングもやっているし。自分たちコーチングスタッフに与えられたタスクなのかなと、成長というのが1カ月必要なものを3週間で、3週間で必要なものを2週間にしていくのが我々の仕事だと思っている。彼らの意欲を自信に変えさせてあげながら、選手層をとにかく厚くしていくこと、ベンチメンバーが熾烈(しれつ)になっていく、そこから今度先発メンバーが熾烈になっていく。段階を踏まないといけないので、まだそこのスタートラインだと思っています」
前節の京都サンガFC戦(0-1)では、ガンバ大阪から加入したばかりのFW唐山翔自が後半34分から出場した。期待されるアタッカーであるが、心身ともにたたき上げていくチームゆえに即戦力という考えはない。
「まずは、このチームに合流して何日しかたっていない選手を使う選手層だということです。それは否めない事実で、その彼に大きく期待するのは酷かもしれない。彼も覚悟を持ってきたので、それなりにやろうとしてくれましたけど、我々からしたら今までやっていたチームの量とか、今までやっていたチームの強度でやっていたのなら、このチームではピッチに立てないということは、みんなと共有しています。それはボールを奪いにいく量も、強度も、ボールを受ける時のサポートの動きの量も、動き直しも、すべてにおいても上回らない限り、どこかのチームにいたら出られなかったけど、このチームに来たら出られるということはありえないので。このチームに来ていきなりJ1で通用する選手になるかって言うとありえないですよ。我々はすべてをブラッシュアップしなければいけない、そういう補強なので、辛抱強くやりたいと思います」
限られたバジェット(予算)の中、選手の特長を踏まえながらより成長させていく。J1残留へギリギリの戦いが続く。Jリーグきっての“錬金術師”と知られる指揮官は妥協なき日々を積み重ねていく。【佐藤隆志】