
<明治安田J1:東京V1-0横浜>◇9日◇第25節◇味スタ
東京ヴェルディがホームで強敵横浜F・マリノスを最少スコアで押し切った。
DFラインを高く保ち、テンポの速い攻撃で横浜陣内に押し込んだ。ボールを支配し、相手を守勢に回らせた。特にヤンマテウス、エウベルというJ1を代表する両ウイングに守備をさせることで、横浜の強みを削いだ。チーム一体となった攻守は城福浩監督(64)の狙い通りの展開だった。
「前半はほぼ一方的な試合がやれたというふうに思っています。あれだけCKを取ったのか、何本取ったのか分からないですけど(※12本)、あそこで(得点を)取り切る力はまだ課題として残っていますし、前半の流れの中で点を取りたかったなという思いはあります。そういう焦れる展開の中でも辛抱してゼロで抑えきったことで、自分たちがクロスの狙いとしているところで、準備してきたところで、しっかり点を取れた。今日は負けられない試合の中で選手がよく辛抱してくれたというふうに思います」
ハードワークを繰り返し、後半17分にFKを起点に右サイドからMF斎藤功佑がクロスボールをファーサイドへ送ると、攻め上がっていたDF谷口栄斗が相手マーカーをなぎ倒すようなパワフルなヘディングシュートをたたき込んだ。
昨季のリーグ6位躍進を支えた主力選手が次々とヴェルディを去った。そういう中で、リーダーシップを取ろうと意欲を持った谷口が得点まで挙げたのは象徴的だった。
「いろんな変化があった時こそ、我々が何を大事にして、何だけは手放さないようにして、何を積み上げてきたのかというのを振り返るチャンスになるんです。積み上げてきたものを放り出す必要は何もないわけで、それを辛抱強く積み上げてやり続けること。でも足りないものには向き合うこと。メンバーが変わったのであれば、新しい選手がそこに新しい風を吹かせること。だからこそ、練習はJリーグで一番厳しいものにならなきゃいけない。これはもうみんな当たり前のように共有してきたので、そこに立ち返るいい機会だった」
城福監督はいつも通りブレなかった。後半23分に途中出場でピッチに送られたFW白井亮丞(りょうすけ)が後半45分に交代するという「インアウト」を命じた。
「亮丞がインアウトしたのは象徴的なことであって、彼だけの問題じゃないと言いました。(1-0と)勝ち点3を持ってピッチに出て行った選手が、じゃあどんな守備をしたのかと。本来であれば、相手は前掛かってきているので、2点目を取るようなチャンスを作れたのか、相手陣深くでサッカーをやったのか。もちろん後から入った選手だけの問題じゃないですけれども、彼らが成長しないとこのチームは持たないんですよ。主軸と思われていた選手が出ていくチームなので、彼らにもっと厳しく、もっと高いハードルを与えて、そこを乗り越えていってもらわないと、このチームが勝ち点3を取り続けるというのは難しい」
J1残留へ大きな勝ち点3を手にし、暫定で12位に浮上した。しかし浮かれた様子は微塵(みじん)もなかった。試合後、緑の指揮官はあえて選手たちを前に「勝ったとは思えない声掛け、共有を提示しました」。勝って兜(かぶと)の緒を締めた。
この日のベンチ入り20人の平均年齢は横浜の28・60歳に対し、24・90歳。そこに見える“キャリア”“実績”は一目瞭然だ。だからこそヴェルディがJ1に居続けるためには若い選手を鍛え、その成長を待つしかない。
1-0というスコアに、あらためて東京Vの生きる道を見た。【佐藤隆志】