
<阪神3-5ヤクルト>◇9日◇甲子園
ヤクルト石川雅規投手(45)が、プロ野球史上初となる金字塔を打ち立てた。5回5安打3失点(自責1)で今季初勝利。これで工藤公康、山本昌、三浦大輔の23年を抜き、単独最多となる24年連続勝利となった。45歳以上の勝利も、浜崎真二、工藤、山本に次ぐ4人目の偉業だった。通算では187勝目。頼れるベテランが粘投し、チームに昨年4月2日以来、約1年ぶりの貯金をもたらした。
◇ ◇ ◇
24年連続勝利は前人未到の記録だった。「自分が自分なのか。信じられないところもある。1年1年、1試合1試合の積み重ね。そういう意味ではあっという間だった」。安堵(あんど)感と高揚感が入り交じる不思議な感覚だった。
2回は無死満塁から自身の悪送球も絡み、3点を先取されたが、粘った。4回は1死一、三塁でビーズリーはスリーバントを失敗させ、近本は遊ゴロでしのいだ。5回まで投げきり、6回に打線の5点の援護を受け、白星が転がり込んできた。
究極の“平凡力”で生きる道を探し続けてきた。直球は130キロ前後で、圧倒的決め球もない。石川は言う。「変な話、僕っていろんな意味で平均以下だと思うんです。でも結局、野球ってトータルじゃないですか。だから面白い」。
1年目のキャンプは鮮明に脳裏に残る。当時、絶対的な守護神だった高津監督の直球の制球力に目を奪われた。ブルペン捕手が構える内角低め、外角低めのミットはほとんど動かずミットに吸い込まれていく。「これが一流のプロか」。驚きとともに自らが生きる道しるべとなった。
球界最年長となった今、石川はキャッチボールもマウンドのように足場を固め、セットで構えて投げる。同じシンカーでもスピード、変化量に差を出し、何種類も投げ分ける。身長も167センチ。制球力を軸に引き出しをたくさん作った。それが“平均以下”でも戦える力となった。
4月9日。この日はちょうど94年4月9日阪神戦(神宮)で、活動休止中の「つば九郎」がデビューした記念日でもあった。「つば九郎と常に、今も戦っているつもり。大きな、大きな声援を送っていると思う。つば九郎がデビューした日に勝てたのは、本当に勝たしてくれたのかなと思いますね」。自らにとっても大事な記念日になった。これで通算187勝。次なる節目を見据える。まだ通過点だ。【上田悠太】