目指すは、偉大な先輩に続く春の頂点だ。早実が関東・東京の7校目で選出され、最後の1枠に滑り込んだ。目標は「日本一」。昨夏も甲子園を経験したバッテリーを強みに、エース王貞治(現ソフトバンク球団会長)を擁した57年以来68年ぶりのセンバツ優勝を狙う。21世紀枠は壱岐、横浜清陵が選ばれた。関東・東京は明治神宮枠に21世紀枠を加え、計8校。出場校が増える記念大会をのぞくと、過去最多となった。
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エースの中村心大主将(2年)は堂々と宣言した。「チームの目標は本当に日本一。センバツで必ず達成できるように頑張りたいと思います」。和泉実監督(63)が「個性派が多い」と評する2年生たちだが、中村は「そこ(日本一)は全員一致している」と言い切った。
昨夏の経験がチームの原動力だ。甲子園3回戦の大社(島根)戦。中村は先発で7回1失点に抑えたが、延長11回サヨナラ負け。「あの負けがあったから、全員頑張れている」。大舞台での競り合いを3回も味わった。「精神面というか、どんな状況でも安定して戦える力が身に付いた」と新チームに引き継がれた。山中晴翔捕手(2年)とのバッテリーは東京屈指。昨秋の東京大会でも接戦を乗り越え、決勝まで進んだ。
それでも、優勝には届かなかった。何が足りないのか? 出した中村の答えは、制球と球威。キャッチボールから意識した。「力感ないフォームで質のいい真っすぐを制球できる」左腕の理想像として、中日ドラフト1位の金丸に関大時代から注目。動画を参考にした。体づくりでは、母由佳さんの作るおにぎりを毎日6、7個持参。授業や練習の合間に食べ、体重は秋より3キロ増の85キロになった。
成果を示す権利を得た。「甲子園の借りは甲子園でしか返せない」と力強い。68年前、同じ背番号1の大先輩が極めた頂点へ。「(王会長に)恥じないプレーをできたらと思います」。その上で、最高の報告をする。【古川真弥】