<全国高校サッカー選手権:上田西2-0矢板中央>◇2日◇3回戦◇フクダ電子アリーナ
長野・上田西(7大会ぶり3度目)が栃木・矢板中央(2大会連続14度目)を2-0で撃破し、7大会ぶり8強進出を決めた。
前半3分、PKのピンチをGK牧野長太朗(3年)が左に飛びストップ。「前日練習の感覚はあまりよくなかったけど感覚で思い切り飛んだ。良かった」。好セーブで流れを引き寄せると、同11分、右ロングスローからDF東風谷(こちや)宗太(3年)がDF和泉亮哉(3年)のシュートのこぼれ球を押し込んで先制。後半21分にもロングスローからFW柳沢纏(まとい、3年)がヘディングシュートで加点した。
シュート数は9本に対し17本を浴びたが、牧野が好セーブを連発。東風谷らもゴールライン上で相手のシュートをかき出すなど集中したディフェンスで無失点に抑えた。白尾秀人監督(44)は上田西のチームカラーにかけて「ウチは黄色いミツバチ軍団。蜂のように刺し、最後はしっかり体を投げ出してくれた。選手たちの成長に感動している」とべた褒めした。
この日の先発平均身長は相手より3センチ低い172・1センチ。控えにも180センチ以上の選手はいなかったが、ロングスローを起点に2ゴールを挙げた。白尾監督は秘技に「あまり教えられない(笑い)。ストーン(あえて動かない選手)の使い方とかですね」とけむに巻いた。
上田西は17年度に県勢初の4強入りを果たしたが、その後は低迷。県予選準優勝3度、8強3度と苦しんだ。主戦場はプリンスリーグ北信越ではなく、県リーグ。強豪校の練習場は人工芝が主流の中、土の上で練習を積む。それでもハードワーク、速攻と遅攻の使い分けの判断、そしてセットプレーに磨きをかけ矢板中央の「赤い壁」を崩した。
白尾監督は高校サッカー界の名将である故小嶺忠敏さんに誘われ、高2年の終わりに鹿児島・与論から名門の長崎・国見に転校した。この日の試合前には国見の2学年後輩、元日本代表FW大久保嘉人氏(42)から送られたビデオメッセージを選手たちに見せ、モチベーションアップにつなげた。好プレー連発の牧野は「高2の夏に練習に来てシュートを打ってくれた。今日も日本のレジェンドからの言葉に力をもらえた」と喜んだ。
準々決勝は高校年代最高峰のプレミアリーグに所属する千葉・流通経大柏(3大会ぶり8度目)と対戦する。国士舘大の先輩である敵将・榎本雅大監督(46)とのマッチアップになる白尾監督は「強いのは間違いないが、臆せず挑みたい」。守護神の牧野も「7大会前の先輩たちに並ぶだけでなく、超えていきたい」と強豪連破を誓った。【小林忠】