中西製作所 Research Memo(5):2036年3月期に売上高500億円を目指す長期ビジョンを設定
2. 長期ビジョン
同社は、国内市場が人口減少に伴い横ばいから緩やかな縮小傾向にあると認識している。一方で、食品製造業や飲食業では人手不足が深刻化しており、自動化・省人化へのニーズが増大していると見ている。このため、同社は学校や病院といった主力市場の拡大に加え、人員と製品力を増強し、自動化・省人化ニーズに対応する必要があると考えている。こうした環境認識に対して同社は、「厨房エンジニアリングのリーディングカンパニー」として、チャレンジ精神と高い技術力で食の未来を創造し、関わる人すべてに笑顔と健康を届けるという長期ビジョンを設定した。
具体的には、主力市場である給食市場への厨房機器の製造・販売に加え、中食・食品加工などの食品エンジニアリング、海外、そのほか新規領域への積極的な進出・拡大を図ることで、厨房機器・食品加工業界をリードする存在となる。その過程で、多様な顧客の要望に積極的に挑んできたチャレンジ精神と、その礎となる技術力に磨きをかけ、新たな価値を創造し続けることで、食の未来を創造する考えである。また、顧客が満足する製品・サービス提供に加えて、従業員が安心感と誇りを持って働ける環境づくりにも注力するなど、社内外すべてのステークホルダーに愛され信頼される企業を目指す。こうした長期ビジョンを実行することで、2036年3月期に売上高500億円を目指すこととした。
以下に分野別の環境認識と戦略的方向性を示す。
(1) 給食
現在売上高構成比で62%を占める給食(学校、病院・福祉、事業所)について、主力の学校は、少子化に伴い7~18歳人口が2030年までの10年間で15%減少すると予想され、市場縮小が見込まれる。しかし、給食センターの着工は安定しており、自動化・省人化ニーズが高いことから、今後も給食調理のセンター化と大規模化が進むと予測される。特に、PPP・PFI※方式での増加が想定され、受注により長期的な関係維持が可能となるため、同社は自動化・省人化ニーズへの対応強化とPPP・PFI案件を含む受注率向上を通じて、市場シェアの拡大を図る。
※ PPPは公共事業を公共団体と民間が連携して行うこと。PFIはPPPの1つで、民間の資金や経営能力、技術などを効果・効率的に活用して公共事業を進めること。
病院については、再編統合による病床削減や介護施設への転換政策で病院数は横ばい~減少が見込まれる。しかし、大手事業者のセントラルキッチン化や、中規模病院での人手不足を背景とする調理・洗浄の自動化・省人化・集約化ニーズの高まりへの対応力を強化し、売上高の拡大を図る。
一方、福祉施設については、老人福祉施設の増加が見込まれるものの、100人以下の小規模施設が中心で、同社の大型機器との親和性は低い。事業所については、テレワークの浸透や就業人口の減少により、将来的な減少が予測され、コンビニエンスストアなどとの競合もあり、大幅な増加は見込みにくい。これらの状況から、同社は学校と病院市場への注力を優先する方針である。
(2) 中食・食品加工
売上高構成比5%程度の中食・食品加工では、生産性の向上や食の簡便化志向を背景に多様なニーズが浮上している。食品工場の立地件数は近年減少傾向にあるものの、コンビニエンスストア向け食品工場では機器の高スペック化が進み、中食需要の拡大に伴い冷凍食品工場や惣菜工場、セントラルキッチンも成長すると見られる。このため同社は、大手コンビニエンスストア向けのベンダーやエンジニアリング会社、食品メーカーへの営業を強化する方針である。また、食品工場向け製品ラインナップの拡充を図ると同時に、地域密着型営業を展開することで、売上の底上げを図る。
スーパーやコンビニエンスストアでは、店舗数は横ばいだが、大手による寡占化が進んでいる。そして、惣菜類の生産効率向上のニーズの高まりにより、プロセスセンターやセントラルキッチンでの加工・調理の集約化が進んでいる。このため、同社製品に対する需要は堅調に拡大すると見込まれ、同社は営業強化を図る。
6次産業については、コロナ禍以降事業体が漸減傾向にあるが売上は漸増しており、商品の高付加価値化が進んでいると推測される。しかし、農業経営体法人化は進展が芳しくなく、全体に占める割合はわずかである。このため同社は、既存技術の用途転用を模索しつつも、事業規模の観点から食品工場やセントラルキッチンを優先する方針である。
(3) 外食
売上高構成比で30%を占める外食では、大手チェーン店による堅調な開店計画に加え、生産性向上を目的に機器の入れ替え需要が一定数見込まれる。しかし、コロナ禍からの回復やインバウンド消費拡大のなかでも中食に需要が奪われ、食の外部化ニーズを取り込めておらず、市場は横ばいで推移すると見られる。
同社の売上依存度が高い大手既存顧客に対し、安定的な機器納入と人手不足による省人化ニーズへの対応として、厨房レイアウト設計を含めたノウハウを発揮しやすい状況にある。一方で、景気による需要変動や、チェーン各店への機器設置・メンテナンスに必要な人員確保が課題である。このため、他部門との協力体制構築により人員体制を増強・整備し、売上拡大への足場固めを進める方針である。
ホテルについては、インバウンド消費の拡大を背景に、都市部でのホテル建設、地方部での宿泊施設の高付加価値化が進んでいる。しかし、同社はホテル市場でのシェアが低く、ホテル仕様の施工ノウハウやコスト面で課題を抱えている。このため、飲食店分野のノウハウを活用しつつ、ホテル分野の開拓を段階的に進める方針である。
(4) 海外
売上高構成比が1%未満の海外は、コロナ禍が明けたものの市場の動きが鈍く、日本製機器の需要が期待ほどには伸びなかった。しかし、難易度が高いと見られていた代理店・販売店の獲得では7ヶ国10社を確保することができた。さらに、重点製品についてはEU(欧州連合)加盟国の基準を満たすCEマークを取得した。また、卓上型過熱水蒸気オーブン「DEECO」をシンガポールとミラノの展示会に出展し、特に欧州で「過熱水蒸気による調理」への関心を高めることに成功した。このように、厳しい環境のなかでも一定の進捗があったことから、今後は現地法人の設立を含めたさらなる海外体制の充実と、各製品の海外市場対応を進める方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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