ニチレイ:冷凍食品メーカー売上高ランキング1位、加工食品事業と低温物流事業を国内外に展開
同社の強みとして特筆すべきは、加工食品と低温物流の両事業を国内最大級の規模で保有し、それらを相互に補完・強化し合う構造にあることである。たとえば、食品事業では、食品工場が冷蔵倉庫の近隣にあることで、物流の効率化に寄与している。一方、低温物流事業では、食品事業の貨物が低温物流事業におけるベースカーゴとして機能しており、輸配送の効率化や安定化を実現している。
海外事業においては、加工食品事業では北米で展開しているアジアンフーズの販売が拡大している。北米以外では、タイでチキン加工品を生産し、日本や欧州向けの加工品以外に、中国、タイ国内向けに副産物などを販売している。低温物流事業では、特に海外市場では、欧州、ASEANで通関・付帯加工・保管・運送までを一貫して行う「ワンストップサービス」を提供している。欧州事業は1988年にオランダの冷蔵倉庫会社買収から始まり、その後M&Aを通じて業容を拡大、東南アジアにおいてもタイ、マレーシアに進出し、2024年度よりベトナムにおいても新倉庫が稼働している。
2025年3月期の売上高は702,080百万円(前期比3.2%増)、営業利益は38,315百万円(同3.8%増)と増収増益を確保し、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。加工食品事業では、円安や原材料高などコスト面の圧力が続いたが、販売数量の増加や価格転嫁が奏功し、売上・利益ともに拡大した。低温物流事業では、冷凍食品物流の取扱拡大が寄与し、国内拠点の稼働率向上により安定した収益が確保された。加えて、海外物流での円安による為替換算効果も業績押上げ要因となった。なお、特別損失として固定資産除却損等26億円超を計上したが、営業・経常段階での増益がこれを吸収し、純利益は堅調に推移した。
2026年3月期の会社計画は、売上高700,000百万円(同0.3%減)、営業利益45,000百万円(同17.4%増)と、売上高は横ばいを見込む一方で、利益面での大幅な改善を想定している。売上高は、加工食品・低温物流事業で増収を見込むが、水産・畜産事業での構造改革を継続するため前期比横ばいを想定。利益面では、加工食品事業で主力商品の増収効果や生産性の改善、北米事業の回復が寄与する。また、主力カテゴリーであるチキン加工品や米飯類への重点投資により、生産効率と収益性を一段と高める方針を掲げている。低温物流事業についても、国内の基盤拡充や海外事業の伸長を見込むほか、両事業ともに減価償却方法の変更も増益要因となる。
市場環境を見ると、加工食品事業では、家庭用でライフスタイルの変化や食のニーズの多様化・コロナ禍での再評価により今後も冷凍食品の需要拡大は続くとみられている。業務用も惣菜・外食・給食での冷凍食品使用はコロナ禍以前の環境に回復しており、今後もインバウンド需要増加に伴い、業務用全体の市場規模拡大が期待されている。日本国内では人口は減少しても、単身世帯・共働き世帯・シニア層は増加し、「タイパ」ニーズが広がる中、家庭用・業務用双方においてコストパフォーマンスに優れた冷凍食品への選好は根強い。一方で、物流業界ではドライバー不足や環境対応ニーズへの対応が急務となっており、持続可能な物流体制の整備が求められている。ただ、この点においても、独自の低温物流インフラを強みに対応力を高めており、次世代輸配送システム(SULS)の拡充によるトラックドライバーの業務負荷軽減や冷凍食品物流プラットフォームの構築による冷食メーカーの荷物の共同保管・共同配送による物流効率化など、優位な立場を維持している。
今後の見通しとして、同社は2025年度から新たに長期経営目標「N-FIT2035」、新中期経営計画「Compass × Growth 2027」を始動。前者では、収益力の強化と資本効率の向上に向け、営業利益率10%、ROIC10%、海外売上高比率40%、営業利益CAGR8%以上を掲げる。また、後者では、主に競争優位領域の深堀とグループシナジーの発揮、地域別戦略にもとづく海外事業拡大、人的資本経営の推進とグローバルガバナンス等の構築を実行し、営業利益率7%、ROIC8%以上、ROE10%以上、海外売上高比率30%を目指す。また、3年間で営業利益CAGR 13.5%という高成長を掲げており、特に加工食品事業では米飯類とチキン加工品をメインに新設・増設した生産設備の稼働を高め、生販利益を最大化させていく。低温物流事業では、輸配送ネットワークを活かした冷凍食品物流プラットフォームを拡充して顧客の物流効率化・安定化を実現させる。両事業ともに競争優位領域における施策を強化し、収益力の向上を図っていく。
設備投資は前中計比で増額の1,270億円(前中計比308億円増)を計画し、生産機能の最適化と新たな需要への対応を加速させる方針で、国内は首都圏、九州エリアでの設備投資を予定しているようだ。また、欧州・ASEANにおけるM&A戦略も進行中であり、グローバル成長の布石を着実に打っている。長期的には、2040年頃に冷凍食品市場の国内需要がピークアウトするとの見立てもあるが、同社は海外展開の強化や工場の再編などによってリスクヘッジを講じている。
株主還元については、配当政策と自己株式取得の双方を通じて、総還元性向の向上を図る姿勢を示している。DOE4.0%を目安からDOE4.0%を下限とする累進配当へ変更し、安定した増配を実施する方針。また、自社株買いについては、財務状況やフリー・キャッシュ・フローの見通しなどを総合的に判断し、機動的に実施していく。総じて、加工食品と低温物流という2つの基盤事業を有するなか、中長期的な事業成長力と安定的な株主還元の両立を志向する同社の今後の動向には注目したい。
<HM>
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