第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)の各賞が、先月27日の配信番組および28日付の紙面で発表されました。動画や紙面でお届けできなかった受賞者、受賞作関係者のインタビューでの喜びの声を、あらためてお届けします。
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今年10月、76歳で亡くなった西田敏行さんに日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の特別賞が贈られた。出演作「敦煌」が第1回石原裕次郎賞に輝くなど、映画界に多くの足跡を残し、亡くなる9日前にも遺作「ドクターX FINAL」の舞台あいさつに立った。
西田さんと言えば、そのアドリブ力で多くの観客を引きつけた。盟友松崎しげる(75)も「西田は『三男三女婿一匹』で注目された。主演の森繁久弥さんはご存じのようにセリフの半分以上がアドリブなんだけど、西田はそれを平然とアドリブで返したんだよね」と48年前の逸話を明かした。
そのアドリブ力は「ドクターX」シリーズで1人の俳優がウイングを大きく広げるきっかけも作った。遠藤憲一(63)である。
所属事務所の小林保夫代表は言う。
「西田があの調子ですから、右腕役のエンケンさんも何かしなくちゃいけなくなった。たいへんだったと思うんですけど、それまでの悪役然とした感じから、少しずつキャラが変わってきた気がしました」
西田さんと遠藤が登場したのは13年の第2期からだが、後に院長となる蛭間(西田さん)のユーモアたっぷりのアドリブが、腰巾着として付き従う海老名医師(遠藤)のキャラに影響を与えたことは想像に難くない。回を追うに従い、目に見えて軟化していく印象があった。
そのこわもてから悪役が多かった遠藤は、その3年前のNHKテレビ小説「てっぱん」でコミカルな役を得てから徐々に役柄の幅を広げていたので、「ドクターX」での西田さんとの共演は絶妙なタイミングだった。
「こわもての割に小心」というギャップを視聴者に印象づけ、これがならではの持ち味として定着した。
西田さんが多くの共演者に残した影響は計り知れない。【相原斎】