MITメディアラボは、Tangoの空間認識機能を使ってスキャンした室内にVR空間を上書きするシステム「oasis」を発表した。
AR &VRテクノロジーの可能性が垣間見えるシステム「oasis」とは
MIT(マサチューセッツ工科大学)にあるMITメディアラボの研究員Misha Sraは、このほどTangoテクノロジーとVRヘッドセットを併用して、室内を自由にVR空間で上書きするシステム「oasis」を発表した。
同システムが実現していることを簡潔に言えば、「VRヘッドセットを装着すると、リアルな室内を好きなVR空間にできる」ことだ。もっとも、VRヘッドセットを装着すれば、VR空間を自由に設定できるのは当然である。同システムの画期的なところは、VR空間にいながら、リアルな空間の状態を認識できることだ。
同システムの魅力をもっと簡単に言うと、ルームスケールが散らかっていても、リアルなモノにぶつからないのだ。とは言え、「百聞は一見にしかず」なので、下のデモ動画を見ると同システムの目指していることが分かるだろう。
デモ動画を見ると、はじめはよくあるTango活用アプリのようにTango実装タブレットを使って任意の室内をスキャンする。その後、スキャンしたデータをもとにして、VRヘッドセット装着時に見えるVR空間を生成する。この段階でVRヘッドセットを装着すると、室内はもはやVR空間で覆われる。
同システムが真価が発揮されているところは、VRヘッドセット装着中でもリアルな室内の空間認識を実行しているので、例えばリアルな室内に置かれたイスにVR空間内でも座ることができるのだ(デモ動画2分10秒から2分30秒あたりを参照)。もちろん、VR空間内ではリアルなイスを、岩やテーブルといったほかのモノで描画することもできる。
Misha Sraが言うにはリアルタイムな空間認識機能をもつ同システムを使えば、たとえルームスケール内にモノが散らかっていても、そうしたモノの存在をVR空間内に反映できるので、気にすることはない、とのこと。また当然ながら、壁の位置も認識しているので、壁にぶつかるようなこともない。
ところで、同システムのデモ動画ではTangoを実装したモバイル型VRヘッドセットを使っているのだが、ひとつの思考実験として、TPCAST等でワイヤレス化したVIVEに同システムのTango機能を実装してみたら、どうなるであろうか。おそらく、ハイエンド型VRヘッドセットに不可欠な「ルームスケール」という概念が一掃されるだろう。
つまり、同システムの延長線上には、ARとVRを併用することでのみ可能な「完全なスタンドアローン型VRヘッドセット」の姿が垣間見えるのである。その完全なVRヘッドセットを装着すれば、通信可能な範囲内でどこでもハイエンドなVR体験ができるのだ。
もっとも、同システムはまだ研究段階にあるので、同システムを実装したデバイスがリリースされるようなことはまだない。しかしながら、VIVEのワイヤレス化が実現したように、ことVR/AR業界では「昨日の不可能は今日の可能」であることを肝に銘じたほうが良いだろう。
MITメディアラボ研究員Misha Sraが公開しているoasisのページ
http://web.media.mit.edu/~sra/oasis.html
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