6月10日、トヨタはフルモデルチェンジを受けて新型に生まれ変わった「ランドクルーザー(300シリーズ)」を世界初公開(中東地域を中心にオンライン公開)した。新型ランドクルーザーは今夏以降、世界各地で発売される予定だ。
フレーム構造は踏襲しながらもTNGAに基づく新GA-Fプラットフォームを採用。エンジンは新開発となる3.5ℓガソリン&3.3ℓディーゼルのV6ツインターボを設定
ランドクルーザーは1951年8月、強力なエンジンを備えた4輪駆動車、TOYOTA BJ型として誕生した。このクルマは自動車として初めて富士山6合目までの登山に成功するなど、厳しい環境で高い走破性を発揮し、その実績も踏まえ、全国各地でパトロールカーとして採用されるようになった。こうして、「お客様をはじめ、このクルマに関わる様々な人々に安全と安心をお届けすることが目標」という、モビリティカンパニーへの礎ともいえる70年にわたって続く伝統がスタートした。
以降、累計約1040万台、年間30万台以上のランドクルーザーを、世界170の国と地域の方々に愛用されている。そうしたユーザーのために、ランドクルーザーが守り続けている本質が「信頼性・耐久性・悪路走破性」だ。「ランドクルーザーがあるからこそ行き来できる場所で人々の暮らしを支える、必要不可欠な道具」として、「人道支援や災害派遣などで人の命を支える存在」として、「ランドクルーザーだからこそ提供できる体験を通じて、より豊かな人生を支える存在」として、これらの用途と、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」というユーザーのランドクルーザーへの評価に応えし続けるため、トヨタは、世界中のカスタマーの使用実態に基づき、随時、開発・評価の基準をより厳しい方向に定めていくことで、ランドクルーザーを鍛え、進化させてきた。
300シリーズとなった新型ランドクルーザーは、2007年に登場した従来の200シリーズの後継として、「ランドクルーザーの本質である『信頼性・耐久性・悪路走破性』は、進化させつつ継承する」、「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを実現する」という2点の開発目標を念頭に、ランドクルーザーの本質を守る礎であるフレーム構造は踏襲しながらも、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づく新GA-Fプラットフォームを採用。さらに軽量化・低重心化、新パワートレインの採用、内外装のデザインを含めて、長年にわたる技術の積み重ねと最新技術を融合することで、素性の刷新を図っている。
フレーム自体を新設計し、軽量・高剛性化を実施。フレーム、車体を含めた車両全体の軽量化(-200kg)・低重心化、重量配分・サスペンション構造の改善等によって得られた素性の良さをベースに、「凄腕」「匠」といった社内の熟練テストドライバーやダカールラリー出場ドライバーをはじめとする評価メンバーによる実路走行での作りこみを通じて、オンロード、オフロードの双方で運転しやすく、疲れにくいクルマを目指した。なお、伝統の悪路走破性をさらに向上させるため、以下のような開発・新技術を採用している。
・サスペンションの基本性能(ホイールアーティキュレーション : タイヤの浮きづらさ)向上
・E-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System)の採用による接地性向上(世界初)
・ドライバー視点で障害物を直感的に可視化できるマルチテレインモニターの採用
・走行路面を判定し、自動でモード選択するマルチテレインセレクトの採用
新型には3.5ℓガソリン、3.3ℓディーゼルの2機種の新開発V6ツインターボエンジンを採用し、従来型V8エンジンをも超えるクラストップレベルの動力性能とドライバビリティの実現を図っている。3.5ℓガソリン仕様は415ps/650Nmを、3.3ℓディーゼル仕様は309ps/700Nmを発揮する。
また、環境性能についても、新開発のDirect Shift-10AT(10速AT)の採用ならびにボディの軽量化とも相まり、各地域の販売計画と燃費モードを加重平均し行った社内の試算では、従来型との比較で、車両使用時の年間二酸化炭素排出量を、グローバルの全台数分で約10%低減できる見込みとなっている。
エクステリアは、ランドクルーザーのヘリテージを継承し、オフロード走行時のダメージを受けにくいランプ位置やバンパー造形など機能美を追求。またインテリアは、悪路状況でもクルマの姿勢を捉えやすい水平基調のインストルメントパネルを採用。直感操作ができるスイッチ類を機能ごとにレイアウトし、形状や色など操作性を考慮したデザインとすることで、快適性も追求している。
パッケージについては悪路走破性を重視し、全長・全幅・ホイールベースなどの車両サイズと、ディパーチャーアングル・アプローチアングルは従来型を踏襲(一部グレードを除く)した。
先進機能による最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)を採用。歩行者(昼夜)や自転車運転者(昼)を検知し、衝突回避または被害軽減に寄与するプリクラッシュセーフティに、交差点での対向直進車や右左折時に前方からくる横断歩行者検知機能、ドライバーによる回避操舵をきっかけに操舵と車線逸脱抑制をサポートする緊急時操舵回避支援機能を追加。さらに、駐車場での前後障害物や、後退時の接近車両、および歩行者を認識し事故防止に寄与するパーキングサポートブレーキが新たに採用された。
●トヨタ・ランドクルーザー歴代モデル●トヨタ公式WEBサイト「新型ランドクルーザー・ティザーサイト」●ランドクルーザー車両系統図●歴代ランドクルーザー
【BJ】
・販売時期:1951年8月~1956年1月
・特徴:当時の警察予備隊向けに計画。警察予備隊の採用は叶わなかったが国家地方警察のパトロールカーとして採用。自動車として初めて富士山6合目まで登坂。車名は1954年よりランドクルーザー(陸の巡洋艦)
【20系】
・販売時期:1955年11月~1959年12月
・特徴:民間向けにふさわしい外観となった二代目。海外への輸出を開始。海外でトヨタの品質・耐久性・信頼性を広める役割(ランドクルーザー作戦)を負った
【40系】
・販売時期:1960年8月~1986年10月
・特徴:三代目、「信頼性・耐久性・悪路走破性」というランドクルーザーの本質を備えた代表車種クロスカントリー車として世界で高い評価と人気を獲得(24年のロングセラー、今日でも多くのカスタマーが愛用)
【50系】
・販売時期:1967年8月~1981年7月
・特徴:全く新しい、独自のデザインを持つ本格的ステーションワゴン型。ランドクルーザーの本質はそのままに、広い空間と快適性を備えた、300シリーズの祖先
【60系】
・販売時期:1980年8月~1990年1月
・特徴:50系の後継となるステーションワゴン型。車両の高速化に伴い、走行安定性向上のためワイドトレッド化。個人ユーザー向けに快適装備を充実
【70系】
・販売時期:1984年11月~販売中
・特徴:40系の後継モデルとして、ランドクルーザーの本質をいまも守り進化するヘビーデューティ型。登場翌年の85年から、ライトデューティ型が派生(90年には初代プラドが誕生)。ヘビーデューティ型は現在も販売中
【80系】
・販売時期:1989年10月~1998年1月
・特徴:60系の後継。ランドクルーザー史上最高のオフロード性能と高級セダンの装備・乗り心地を備えたステーションワゴン型
【90系】
・販売時期:1996年5月~2002年10月
・特徴:ランドクルーザーとして初のフロント独立懸架を採用。悪路走破性を備えながら、オンロード性能・乗り心地をさらに向上させた、専用の車体のライトデューティ型(プラドとしての二代目)
【100系】
・販売時期:1998年1月~2007年8月
・特徴:80系の後継。ステーションワゴン型として初のフロント独立懸架を採用。4WDとしての基本性能の向上に加えて高級4WDとしてのプレステージ性とオンロード性能・乗り心地を向上
【120系】
・販売時期:2002年10月~2009年8月
・特徴:新設計の高剛性フレーム(ランドクルーザーとして初の分割フレーム構造)を採用。電子制御の採用を含め悪路走破性とオンロードでの快適性を向上させたライトデューティ型(プラドとしての三代目)
【150系】
・販売時期:2009年9月~販売中
・特徴:120系からさらにボディ剛性を向上させ、オフロード走破性を高める先進技術を盛り込んだライトデューティ型(プラドとしての四代目)
【200系】
・販売時期:2007年9月~2021年春
・特徴:100系の後継。ステーションワゴン型としての分割フレーム構造を採用。プラットフォームを一新し、剛性、耐久性、衝突安全性能、室内の快適性を向上