Lサイズ高級ミニバンの代表モデルといえば、トヨタ・アルファード/ヴェルファイア、通称「アル/ヴェル」である。2020年の販売台数は、アルファードが9万748台、ヴェルファイアが1万8004台だった。大差を付けてアルファードが人気だったわけだが、これまではそうでない時期もあった。アルファードとヴェルファイア、どっちが人気だったか、販売台数から繙いてみる。
2000年初代アルファードはエルグランドより売れた?
もう1台の人気ミニバンがホンダ・オデッセイだ。オデッセイの販売台数は
1997年:8万2350台
1998年:5万8667台
1999年:4万8211台
2000年:12万391台
2001年:7万1011台
トヨタはすでにエスティマを持っていたが、よりわかりやすく豪華なミニバンとしてアルファードを投入したわけだ。エスティマのコンポーネントをうまく使い、日本専用、乗用専用としたアルファードは、初代からヒットした。
アルファード/エルグランド
2002年:5万2366台/4万439台
2003年:8万3529台/3万5865台
2004年:8万5953台/3万1314台
2005年:8万1647台/4万2823台
と登場してすぐにエルグランドを凌ぐ人気を獲得した。
2008年2代目アル/ヴェル時代の幕開け
2008年に初めてのフルモデルチェンジを受けたアルファード。このとき、アルファードはトヨペット店専売となり、ネッツ店向けにヴェルファイアが登場した。
販売台数の推移を見てみよう。
2代目アルファードと初代ヴェルファイアを比べると2008〜2015年のモデルライフを通じてずっとヴェルファイアのほうが売れている。
現行3代目に移行したのは、2015年2月だ。
2015-16年こそ、ヴェルファイア優位だったが、2017年にアルファードが逆転して以来、差は広がる一方。
トヨタは「トヨタ店・トヨペット店・ネッツ店・カローラ店」の4つの販売チェンネルを持っている。アルファードは主にトヨペット店で、ヴェルファイアは主にネッツ店で販売されていた。それが2020年5月からは全チャンネルで全モデルが買えるようになったことも、アルファード優位に拍車をかけたのかもしれない。
とはいえ、アルファード/ヴェルファイアは、おもにフロントフェイスのテイストを作り分け、ターゲットを上手に買えて多くのユーザーの心を掴んできたわけだ。現行モデルでは、アルファード顔の方が人気だった……ということだろう。
先ほどのグラフをモデル毎に色分けしてみた。2代目アルファード<初代ヴェルファイア、3代目アルファード>2代目ヴェルファイアという図式がよくわかる。
トヨタとしては、販売チャンネルのためにアルファード/ヴェルファイアの2モデルを作ってきたという面ももちろんあるが、ふたつのテイストの豪華ミニバンをリリースすることで、リスクを分散しているとも言える。
次のグラフは、アルファード/ヴェルファイアの販売台数と、アル/ヴェル合計販売台数の推移だ。
2011年は東日本大震災の影響で販売が大きく落ち込んでいる。2014年は消費税増税でやはり販売が低迷した。しかしその2年を除けば、8.5万〜11万台の間で推移していることがわかる。
アルファードの人気がイマイチのときはヴェルファイアが、ヴェルファイアの人気がイマイチのときは、アルファードが売れる。
販売チャンネルの一本化と販売車種半減というトヨタの大方針のもと、アルファード/ヴェルファイアも、いずれはどちらかに統合される……という噂もある。が、一方で、トヨタにとってアル/ヴェルの存在は大きい。なんといっても台数が多く、そして車両価格も高い。これが、デザインの失敗でこけると影響は大きい。アルファードとヴェルファイアでテイストを変えて、リスクを減らす……というやり方は、理に適っているとも思うのだが。少なくともここ20年の販売台数の推移を見ると、その戦略は成功している。