「〇〇ピレン」というモデルが次々と出てきたハスクバーナブランド。フロント18インチの、デコボコタイヤの付いた「スヴァルトピレン701」を紹介しよう。
TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔
ハスクバーナSVARTPILEN701…… 1,380,100円
新生ハスクバーナ
まずは最近のハスクバーナを簡単に説明したい。歴史的には主にオフロードの世界で活躍し、そして20年ほど前の日本ではモタードの上陸と共に再注目され、そして今はKTMグループの一員となって、KTMの派生ブランドという立ち位置といえるだろう。
ここで紹介する「ピレン」シリーズは701が今は絶版となってしまったKTM690DUKEがベースでフレームも足周りもエンジンも基本的に共通。そして今回は登場しないが、401シリーズはKTM390DUKEがベースでフレームも足周りもエンジンも基本的に共通というものだ。
このほかに、モトクロスモデル、エンデューロモデル、そしてモタードモデルなどを展開するが、コンペモデル、公道モデルに関わらず基本的にはみなKTMの兄弟車両と考えて間違いない。オフロードの世界では統のある、ヨーロッパの2大ブランドがタッグを組んだということだ。
量産市販車最大シングル
軽さは正義
個性的ルックス
ここまでの話は基本的にエンジンとフレーム、及び足周りと組み合わされた基本部分の性能の高さについてだが、ハスクバーナ版ピレンシリーズはその中でも個性が強いバージョンといえるだろう。690DUKEとの一番の違いはポジションだ。シートが高くステップが低いため膝の曲りがとても緩やかでリラックスできる。このスヴァルトピレンはフロント18インチでトラッカー的なワイドでアップなハンドルを装着していることもあり、DUKEよりも一回り大柄に感じて余裕を持ったポジションで乗れるが、一方で小柄な人にとって足つきはそれなりに厳しいかもしれない。
サイドパネルにデザインされた701の文字を配したり、タンデムシート後端がぴょこんと跳ね上がっていたり、タンクに機能とは関係なさそうなデコボコあったりと全てにおいて個性的である。あらゆるアイディアが出尽くしたと思われる現代において「〇〇っぽい」というのが一切ないデザインを実現したのは素晴らしいことだろう。
走りもそれなりにスパルタン
余裕のポジションと素晴らしい軽さは魅力だが、ビッグシングルエンジンはそれなりにスパルタンさも持っている。中~高回転域では楽しさが爆発するが、3000rpm以下ではどうしてもギクシャクしてしまうためストリートでは低めのギアを選択しておく必要がある。一方でフロントの18インチ化はいい意味で緩慢さが生まれ、ストリート向けになったとも言える。タイヤがオフロードも連想させるパターンになったこともあるだろう、全体的に「ユルさ」がプラスされ、エンジンの回転域さえ気を付けておけばその高いスポーツ性を意識せずにカジュアルに付き合うことも可能だ。
トラコンやABSももちろん備えるが、ストリートにおいてそれらが作動することは稀だろう。一方でクイックシフターは使うこともあるかもしれない。アップ・ダウン双方で使えるクイックシフターはクラッチ操作を不要にしてくれるアイテムだが、けっこう敏感な設定のためシフトペダルに意図せず触れてしまった時に突然点火カットが起きたりすることがあり注意したい。
トラッカー的スタイリングと包容力を手に入れたことでノンビリ走ることも可能にはなったが、本質的にはレディトゥレースなKTMスピリッツがまだまだ潜んでいるナ、と実感した試乗。個性的なバイクに乗りたい、いざという時にはエキサイト出来るスポーツ性も欲しい、毎日乗れるような付き合いやすさも欲しいというライダーに薦めたい一台だ。
ディテール解説
スイッチ類はいたってシンプル。一昔前のヤマハ車を彷彿させるデザインである。右側は電子スロットルのためワイヤー類など出ておらずすっきりしている。
主要諸元
エンジン形式:水冷4ストロークSOHC 4バルブ単気筒
排気量:692.7cc
ボア×ストローク:105×80mm
最高出力:55kW(74hp)/8500rpm
最大トルク:72Nm/6750rpm
圧縮比:12.8:1
クラッチ:APTCスリッパークラッチ
ミッション:6速(イージーシフト)
タイヤ(F・R):110/80R18・160/60R17
タンク容量:約12.0L
車両重量:約158.5kg(半乾燥)
製造国:オーストリア