EVやハイブリッド車でBレンジにすると回生ブレーキが強くきくようになり、ブレーキペダルを踏むタイミングをDレンジより遅くすることができる。これを、交通の円滑化と省コストに積極的に利用してしまおうではないか。
EVやハイブリッド車のBレンジの存在をご存じだろうか。一般的な走行に用いるDレンジの下に備わることが多く、これを使うとアクセルオフ時の減速エネルギーがより強く得られるようになる。では、果たしてどういうふうに使うといいのだろうか。
たとえば、高速道路や幹線道路で、渋滞もしていないのに前走車がブレーキを踏むと、あなたはどう思うか。「何かあったのか?」といぶかりながら車間が詰まれば自分もブレーキを踏み、速度を調整する。しかし前走車のさらに前にトラブルはなく、どうやら(さらに前のクルマとの)車間が詰まったためのブレーキ、下手をすればケータイに着信があったため──なんてことも少なくない。無用で心ないブレーキが後続車を驚かして急ブレーキを踏ませ、さらにその後続車がまたブレーキを踏み──となると渋滞が生じる。スピードコントロールにブレーキは欠かせないが、必要以上に点灯させるべきではないのだ。
MT時代はアクセルオフにともなうエンジンブレーキとシフトダウンで減速できた。しかしトルコンATやトルコンCVT、電気式CVTで占められる昨今は、ポンピングロスの回復というお題目も手伝ってエンジンブレーキが強く得られるパワートレインは少なくなっているのだ。
ならばブレーキ灯をなるべく点灯させないように減速しようではないか。そのための手段がBレンジである。
Bレンジでまず減速という行為が頻繁になると、ブレーキパッドの仕事も減る。長持ちするのだ。余談だが、欧州ではブレーキロータに、シリンダボアに施す溶射技術を用いる例が増えているという。回生ブレーキによってブレーキをかける機会が減り、そうするとパッドがロータを磨かなくなり錆が生じ、すると高級車や高額車では見栄えが悪い──という流れである。回生ブレーキの効果はそれほどまで得られるのだ。
なお、このBレンジを細かく段階的に調整できるようにしたのがMMC・アウトランダーPHEVのシステム、停車まで制動力を高めたのが日産のe-Pedalである。
EVやHEVは「モータの大トルクによる圧倒的な加速感」ということが美点として取り上げられることが多いが、減速方法についてもエンジン車とは異なる性質があるのだ。筆者が若い頃は「ブレーキをいかに踏まないで走れるか」なんてことも運転のうまさの指標のひとつだった。「あ、ブレーキ!」とあわててペダルを踏むのではなく、周囲の動きを把握しながらアクセルペダルオフでスムーズに減速。これでアナタも渋滞の原因をひとつ取り除くことができるのだ。