
<阪神6-2巨人>◇26日◇甲子園
猛虎が止まらん! 首位阪神が5番大山悠輔内野手(30)の8回決勝打に導かれ、今季最長の連勝を6に伸ばした。前日25日から「トルピード(魚雷)バット」を使い始めた主砲は2戦連続の決勝打を放ち、通算1000試合出場を自ら祝福。5度のV打はリーグトップで、6連勝中は4度のV打と勝負強さが際立つ。チームは球団77年ぶり、1950年(昭25)の2リーグ分立後では初の巨人戦開幕5戦5勝をマーク。今季最多の貯金6で、2位広島とのゲーム差を1・5に広げた。
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数メートル先の佐藤輝が一塁へ歩き始める。申告敬遠がコールされると、甲子園の四方八方から怒号にも似た大歓声が沸き起こった。今季甲子園最多の観客4万2631人も我を失いかけそうな空気感。渦中の大山だけは感情を揺れ動かすことなく、黙々と丁寧に素振りを繰り返していた。
「いや、もう冷静に打席に向かいました。そういう場面もあるだろうと想定して準備していました」
同点で迎えた8回裏1死二塁、4番が歩かされた。一、二塁でマウンド上には右腕の田中瑛。スライダーを見逃した直後の2球目、内角149キロシュートを振り抜いた。鋭いゴロで三塁線を破る決勝二塁打。二塁ベースに到達すると、5番はパンと手をたたいた。
「何回か対戦もあったので、ボールの軌道であったり、どういう投手なのかは頭に入っていました」
前日25日から使用する「魚雷バット」は芯が手元寄りにあり、内角球にも対応しやすい。新バットの利点も生かした“読み勝ち打”を決め、77年ぶりの巨人戦開幕5戦5勝に導いた。
クリーンアップのトリを任される今季。打点へのこだわりを隠さない。2月の沖縄・宜野座キャンプ中はフリー打撃から得点圏に走者を置いた場面を想定。安打、犠飛どころか、内野ゴロを転がすためのバットの出し方まで確認していた。
「場面場面で嫌らしい仕事ができるようになりたいので。あとは……何を考えているのか相手に悟らせないことですかね」
虎の背番号3は数年前と比べて明らかに“不気味度”が増した。狙い球が分かりづらくなった。
「捕手は打者のしぐさの1つ1つを『演技なのか演技じゃないのか』も含めて見ている。そこであえて『うわー見逃してしまった』みたいな雰囲気を出してみたり。ここ数年は対捕手の部分も増えてきました」
この日も勝負どころでバッテリーとの駆け引きに勝利。今季5度目のV打はリーグ最多の数字だ。
チームは8回表1死満塁のピンチを遊撃小幡の大ファインプレーから切り抜け、8回裏に4得点。主役は“一丸力”に胸を張った。
「その前のイニングの守備ですごく勢いがついた。本当に全員の勝利。お立ち台も僕だけでなくチーム全員で上がりたいぐらい」
今季最長の6連勝、今季最多の貯金6。藤川阪神が、強い。【佐井陽介】