
<巨人3-4阪神>◇5日◇東京ドーム
千両役者がメモリアルアーチを決めた! 阪神佐藤輝明内野手(26)が伝統の一戦で球団通算8500号を放ち、2連勝でのカード勝ち越しに貢献した。初回に記念の先制3号ソロ、8回にも4号ソロを運んで巨人戦初の1試合2本塁打。3回には近本光司外野手(30)にも1号決勝2ランが飛び出し、今季初の3発で巨人を連倒した。きょう6日も勝って3連勝なら首位に立ち、7日のヤクルト戦で始まる甲子園開幕6連戦を迎えることができる。
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打った瞬間、ではなかった。佐藤輝の打球は左翼へ高く上がった。なかなか落ちてこない。東京ドームのざわつきが増す。スタンドギリギリに着弾すると、左翼阪神ファンから地鳴りのような歓声がはじけた。
「上がりすぎたかなと思ったんですけど。何とか入ってくれてよかったです」
初回2死。先発赤星の136キロカットボールを捉えた先制の3号ソロは球団通算8500号。3日のDeNA戦では8499号を放って王手をかけた男が、自ら大台にその名を刻んだ。
幼少期は1人の阪神ファンだった。地元西宮から甲子園に何度も通い、ファンクラブにも入会。憧れた大先輩たちの豪快な打撃は、今も記憶に残っている。「僕が小さい頃はよくホームランが出ていた。またそこに僕が1本ずつ積み重ねたことが、よかったんじゃないですか」。球団創設90周年を迎えた今季。歴史に名を連ねた背番号8は、少しだけ笑みをこぼした。
1発では終わらない。3回に出た近本の8501号勝ち越し2ランに続き、2点リードの8回には元同僚ケラーの152キロ外角直球を粉砕。またも左翼席にたたき込む8502号の4号ソロも決めた。昨秋キャンプから意識を置いてきた、中堅から左中間方向への打球。新打法が結実したような左翼への1試合2発は、プロ5年目で初だ。巨人戦の2発も初めてで、4本塁打&8打点は両リーグトップの2冠。シーズン71本塁打の量産ペースで、開幕直後こそ遠のいた快音が、完全に戻っている。
開幕前に「イチ押し」選手に挙げた藤川監督も大喜びだ。「ファンの方々からの期待も大きな選手ですから。記念すべきホームランを打ったということは選手もスタッフもファンの方々も、すべての方にとってハッピーな出来事ですね」。
今季初の1試合3発で巨人戦のカード勝ち越しを決め、再び貯金を1に戻した。首位巨人に0・5差に肉薄し、7日も勝てば首位に立てる。佐藤輝は「もっともっといい当たりを増やしていきたい」と貪欲に言った。そのバットで巨人戦3連勝を導いて勇躍、7日からの甲子園開幕6連戦に臨む。【波部俊之介】
▼球団通算8500本塁打=阪神 5日の巨人2回戦(東京ドーム)の1回、佐藤輝が赤星から今季3号を放って達成。1号は36年5月4日に藤井勇がセネタース戦で記録し、これはプロ野球の初本塁打だった。8500本到達は9球団目で、1リーグ時代から存続している6球団の中では最も遅かった。