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<明治安田J1:東京V0-1清水>◇第1節◇16日◇国立◇観衆5万2541人
3季ぶりJ1復帰の清水エスパルスが、因縁のピッチで再出発した。
23年J1昇格プレーオフ(PO)と同カードになった開幕戦で、東京ヴェルディに1-0。POでは勝てなかった相手にリベンジし、J1では904日ぶりとなる白星を挙げた。2季連続で主将を務めるFW北川航也(28)がヘディングで決勝点。下部組織出身のエースが挙げた1点を守り切り、02年ゼロックス杯以来23年ぶりに聖地国立で勝った。
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因縁マッチの勝利を「全員」で喜び合った。1点リードで迎えた後半追加タイムは「7分」。2年前のPO決勝の悪夢すらかき消す大声援がスタジアムにこだました。清水が1点を守り切り、試合終了の笛。秋葉忠宏監督(49)はほえ、選手もピッチで歓喜の輪を作った。2万人が駆けつけたオレンジサポーターも総立ちで喜んだ。「あの日」の悔しさを払拭(ふっしょく)するための、2年間の努力が報われた瞬間だった。
均衡を破り、勝利に導いたのは、頼れるエースだった。0-0の前半40分、ロングボール1本で右サイドを崩すと、味方の浮き球クロスに北川が頭で合わせた。「得点に関わった選手個々の良さが出たシーン。僕は合わせるだけだった」。今季始動からの実戦では無得点だった点取り屋が、大事な開幕ゲームで値千金の決勝弾。歓喜の雄たけびも飛び出した。
守備陣も、エースが挙げた1点を守り切り、完封勝利で船出した。23年のPO決勝は1点リードの後半追加タイムに追いつかれ、年間順位が上だった東京Vに昇格をさらわれた。北川は「サポーターの思いを考えれば、何が何でも勝たないといけない試合だった」。天国から地獄に突き落とされた試合の借りは、同じピッチで返す。「その勝利につながるゴールが取れたことが良かった」と胸を張った。
2年前とは違う笑顔でピッチを引き揚げる選手に、サポーターは特別なチャント(応援歌)で背中を押した。「共にいこう いつまでも 俺たちがついている」。チャント名は「リバイブ」で、意味は「復活」。昨季は1度も歌うことがなかった魂の詩が、聖地国立に響き渡った。北川は「まだ1試合が終わっただけ。まだまだこれから」とチームの思いを代弁した。因縁の相手に雪辱し、国立での呪縛も解いた。王国復活を印象づける1年が華やかに幕を開けた。【神谷亮磨】
◆清水の国立 公式戦の白星は1-1からのPK戦を5-4で制した02年2月23日のゼロックス杯鹿島戦以来23年ぶり。同年8月17日のJ1横浜戦で0-0と引き分け、03年からは10連敗を喫した。その後も3試合連続ドローと「鬼門」にしていた。もっとも、J1リーグ戦に限ると、通算19勝1分け12敗と白星先行。95~00年に12連勝を記録するなどJ1の国立開催を得意にしていた期間もある。