
2025-26シーズンに向けたロスターが固まった琉球ゴールデンキングスが7月29日、沖縄サントリーアリーナのサブアリーナで公開練習を行った。
午前中に選手を一部、二部に分けて軽めのワークアウトを実施。外国籍など、まだ合流していない選手もいるが、昨シーズンの終盤に足を負傷して離脱した岸本隆一や、新たに加入した佐土原遼、小針幸也の姿もあり、コート上では終始コミュニケーションや笑顔が多かった。
現状のロスターは、特別指定選手の崎濱秀斗、U22枠の平良宗龍、佐取龍之介も含めて16人。ジャック・クーリーやヴィック・ローら外国籍と帰化の4人が全員継続し、岸本や小野寺祥太、脇真大、松脇圭志など多くの主力が残留した。退団したのは伊藤達哉と植松義也の二人のみだ。
中でも注目を集めるのは、昨シーズンまでファイティングイーグルス名古屋で日本人エースを張り、日本代表候補にも招集されている佐土原だ。
4シーズン連続でBリーグファイナルに進出し、昨季は天皇杯全日本選手権でも初優勝を飾った強豪の琉球にどのような変化をもたらすのか。公開練習後の会見内容から探る。
佐土原「優勝リングが欲しい」…3Pシュート力の向上へ
プロ5年目、25歳の佐土原。192cm、97kg。フィジカルの強さを生かしたドライブやディフェンスに加え、近年は外のシュートにも磨きがかかる。昨シーズンの12.8得点、3Pシュート成功率35.7%、3.6リバウンド、2.0アシストは全てキャリアハイだった。
チャンピオンシップ(CS)の出場歴は広島ドラゴンフライズに所属していた2022-23シーズンのみ。Bリーグが開幕して以降、全てのCSに出場し続けている強豪の琉球に移籍した最大の理由は、チャンピオンリングへの渇望だ。
「『優勝リングが欲しい』ということが移籍理由の一つです。FE名古屋ではプレータイムや得点面でやり切ったと感じていて、日本人エースとしての自覚を持ってプレーしていました。キングスでもそういう気持ちでやっていきたいです。キングスは4年連続でファイナルに行っていますが、優勝は一度だけで悔しい思いがあると思うので、優勝に貢献したいです」
桶谷大HCが、挑戦者という意味を込めて「アンダードッグ(格下、弱者など)」という言葉を多用し、ディフェンスやリバウンドなど泥臭いプレーを好む琉球のスタイルにも好印象を抱いているという。「キングスはすごく泥臭く、粘り強いディフェンスでチームが盛り上がっていく。そういう方針が、自分に合っていると感じます。チームにとっても、自分のプレースタイルがフィットするんじゃないかと思い、選びました」と続ける。
FE名古屋での活躍が評価され、A代表にも招集されるようになって存在感が際立つ。ただ、「できることが増えた」という周囲の見方と、自身の感覚は少し違う。「個人的には、以前から今のプレーができている感覚です。レギュラーシーズンの60試合をどう戦うかという経験がなかったので、そこを理解し始めて自分のプレーを出せてきました」と淡々と語る。
一方で、自身の課題も明確だ。8月5日に開幕するFIBAアジアカップ2025の代表から落選したことに触れ、こう続けた。
「一つ課題になったのは、3ポイントシュートのタイミングや成功率です。身長が大きい相手が多い国際ゲームでも、中に入って得点を決められることは自分の良さではありますが、もっとバリエーションを増やすためには3ポイントシュートの成功率を上げることが必要です。キングスではEASLやオーストラリアでの試合もあって、挑戦できる場があるので、課題を克服できるように頑張っていきたいです」
クーリーやアレックス・カークといった強烈なインサイド陣を擁する琉球。ただ、昨シーズンは外回りの日本人選手の3ポイントシュート成功率はそこまで高くはなかった。佐土原が3ポイントシュートを高い精度で射抜くことができれば、よりインサイドのスペースも広がるため、オフェンスに好循環が生まれるはずだ。

桶谷HC、ローやクーリーへの好影響見込む
大型の新戦力に対し、桶谷HCの期待も大きい。「佐土原のフィジカルはBリーグの日本人選手の中でも1、2番の強さ。一番の武器のドライブ、あとディフェンスとリバウンドは天下一品だと思います」と高く評価する。昨シーズン、日本人の主力選手で190cm以上あるのは脇のみだったため、192cmの佐土原はチームに高さを加える。
それらを念頭に、桶谷HCは「佐土原がコートにいることで、ヴィックが3番(スモールフォワード)や1番(ポイントガード)とかの外回りのポジションをやりやすくなる。機動力があるメンバーの中でジャックを使う上でも、彼の存在がプラスになると思います」と語り、チームの戦い方の幅を広げるプレーヤーになると見る。
今年度以降のレギュレーションが変更となる天皇杯は、ファイナルラウンドが従来の集中開催に戻るほか、外国籍選手の登録が2人までとなり、コート上でプレーできるのは1人まで(オン・ザ・コートワン)となる。そのため、指揮官は「天皇杯を戦う上でも、佐土原の力がとても大切です」と付け加えた。
ちなみに、EASLも外国籍選手の登録が2人まで(2人同時のプレーは可能)のため、ここでも佐土原の存在が効果を発揮しそうだ。
桶谷HCいわく、佐土原は「本当にお喋り好き。一言話そうと思ったら、10分、15分ずっと喋り続けてる」という。大半の選手が残留したチームに溶け込むためには、それも大事な能力だろう。だからこそ、指揮官も「自分がどういう使われ方をするかの確認作業をすごくしてくれているので、本当にいいコミュニケーションが取れる選手だなと思います」と目を細めた。

小針幸也が描く「ツーガード」の多彩さ
もう一人の新加入選手である小針についても、桶谷HCは「スピード、ディフェンス、3ポイントシュートは期待できると思います」と評価する。
琉球には岸本、平良彰吾、崎濱、平良宗龍とポイントガードが多く所属する中、小針が移籍を決めた要因は何だったのか。本人が理由を説明した。
「オファーが来た時はものすごく嬉しかったですけど、複数のチームと迷っていました。その中で決め手になったのが、毎年ファイナルまで出場しているチームだったことです。あと、桶谷HCをはじめスタッフの体制が手厚く、若手のレベルアップでも成果を出しています。僕も若手から中堅になってくる年齢なので、人間としての成長も含め、レベルアップできる最善の場所が琉球だと思いました」
指揮官の言葉にあったように、最大の強みはスピードと、前線からプレッシャーをかけられるディフェンスだ。「これまで課題だった」という3Pシュートも、昨季は成功率が36.8%に達し、武器の一つになっている。得意とするオールコートでの速い展開に加え、ハーフコートでのバスケットにも磨きをかけたいという。
「一緒にプレーするのが楽しみな選手はいますか?」との問いに対しては、興味深い答えが返ってきた。
「今季の琉球はPG、SGともにガード陣が多いので、ツーガードもできると思っています。例えば平良彰吾さんと組んだ時にどれだけ試合のリズムを変えられるかとか、岸本さんと組んだ時にどれだけ僕がアタックして、隆一さんに3Pシュートを打たせられるかとか。考えるだけでもいろんなバリエーションがあるので、すごい楽しみです」
昨季はロスター11人で開幕を迎え、怪我人も続出する中で少しずつ戦い方の幅を広げていった琉球。16人でスタートする今季は、いろいろな組み合わせ、選択肢が考えられる状況下での走り出しとなったため、9月から始まるプレシーズンマッチの戦い方により注目したい。

(長嶺真輝)