ミロク情報 Research Memo(1):持続的成長と収益性向上を目指す
ミロク情報サービス<9928>は、会計事務所及び中堅・中小企業向けに、財務会計・税務システムを中心とするERP(統合業務管理)製品を開発・販売する業界大手である。新規事業として中小企業等※の経営を支援する統合型DXプラットフォーム事業を育成中で、新たなクラウドサービスの開発やアライアンス戦略によってプラットフォーム基盤の強化に取り組んでいる。
※年商5億円未満の中小企業・小規模事業者を想定。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比13.3%増の41,461百万円、営業利益で同27.0%増の6,084百万円と過去最高を更新した。売上高は新ERPシステム「Galileopt DX」を中心に、中堅・中小企業向けのERP製品が好調で、クラウド・サブスク型への移行による一時的なマイナス影響を吸収し2ケタ増収となった。利益面でも、新製品発売による減価償却費の増加や人件費の増加を増収効果で吸収し、営業利益率も前期の13.1%から14.7%に上昇した。なお、同社はサブスク型の収益構造への移行を進めており、2023年3月期の主力ERP製品の売上高に占めるサブスク比率は18.0%となった。サブスク移行による業績への影響額は売上高および営業利益で約18億円のマイナス要因になったと見られ、実際の成長率はさらに大きかったことになる。なお、2023年3月時点のクラウドサービス・サブスク(ソフト使用料)のARR※は前期比48.9%増の4,540百万円と高成長が続いている。
※ARR (Annual Recurring Revenue)は当該月に発生した売上高を12倍にした数値。
2. 2024年3月期業績見通し
2024年3月期の連結業績は売上高で前期比0.3%増の41,600百万円、営業利益で同0.3%増の6,100百万円を見込む。成長が鈍化するように見えるが、主力ERP製品のサブスク型への移行を加速することが要因で(売上比率で25%超)、サブスク移行の売上高は売切り型契約で割り戻して換算すると約30億円となる。サブスク契約で実際に売上に計上するのは3~5億円程度になるため、2025年3月期以降に繰り延べられる売上高及び営業利益は25~27億円程度と同社では試算しており、実質的な業績は順調に拡大が続く見通しだ。なお、新規事業となる統合型DXプラットフォーム事業については、子会社のトライベック(株)が中小企業向け統合型DX支援サービス「Hirameki 7」を2022年7月にリリースし、拡販活動を進めている。2023年6月末時点で導入社数は9千社を超えた。大半は無料プランでの利用となっており、今後機能を拡充して有料プラン(月額6千円)への移行を進める予定だ。
3. 「中期経営計画Vision2025」の進捗状況
2021年5月に発表した「中期経営計画Vision2025」では、基本方針として既存ERP事業の進化とサブスクモデルへの移行を進めることで収益基盤の安定化と継続的成長を実現すること、また新規事業となる統合型DXプラットフォームを構築して成長ドライバーとして育成することの2点を掲げている。経営数値目標は、2026年3月期に売上高550億円、経常利益125億円としている。経常利益の増益内訳を見ると、ERP事業を中心とした単体業績で75億円、グループ会社で25億円、新規事業の統合型DXプラットフォーム事業で25億円となる。2023年3月期までの進捗状況について見ると、主力ERP製品の顧客開拓は中堅・中小企業ともに順調に進んでいるが、グループ会社の業績や統合型DXプラットフォーム事業は進捗が遅れており、今後の巻き返しが期待される。
■Key Points
・2023年3月期はERP製品の販売好調により2ケタ増収、営業利益、経常利益は3期ぶりに過去最高を更新
・2024年3月期はクラウド・サブスクシフトを加速することで一時的に成長鈍化を見込むも保守的な印象
・ 2026年3月期の経常利益125億円の目標達成は、統合型DXプラットフォーム事業の育成とグループ会社の成長がカギ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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