公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が世界を元気にする挑戦者たちを迎え、日本の将来について語り合うリレー対談。第12回目は、食品一筋40年、食卓に幸せを届け続ける株式会社フーズクリエート代表取締役・濱名正巳さんの新たな挑戦について伺いました。
ギフトに求められる、裏切らない美味しさ
喜多村:フーズクリエートは「食」の卸売業や小売をはじめ、販売支援や飲食店支援、商品開発と幅広く業務を展開されてますね。濱名社長のこれまでのご経歴を教えていただけますでしょうか?
濱名:私はニチイ(現在のイオンリテール)という会社に40年ほど前に入社しまして、12年間勤めさせていただいた後に独立し、現在に至っているという次第です。弊社はとくに「ギフト」をテーマに、その土地にしか無いもの、あるいはその土地ならではの味や、その生産者ならではの美味しさにこだわった贈り物やおもてなしの品を販売しているのが特徴です。
喜多村:ずっと食品畑を歩まれているわけですか。
濱名:そうです。生まれも漁業の家でしたし、食品オンリーですね。
喜多村: ギフトを扱ってるとおっしゃいましたが、どのような形で?
濱名:皆さんにも馴染みのあるお中元やお歳暮もそうですし、あとは冠婚葬祭をはじめとするお返しです。
喜多村:冠婚葬祭といいますと、結婚式に行ったとき帰りの引き出物の中にカタログが入っていますよね。ああいったカタログギフトも扱ってらっしゃるのですか?
濱名:ええ、カタログギフト自体は35〜36年前くらいから始まったもので、もともとは雑貨やキッチン用品でしたが、お客様のご要望があって食品も選べるようになったという流れです。弊社はカタログギフトの食品を扱って15年以上になりますね。
喜多村:カタログギフトの裏側というのは、あまり知らない方も多いと思いますが、濱名社長はどのようなことに力を入れてるのでしょうか?
濱名:ギフトや冠婚葬祭の返礼品というのは、その日ならでは、その瞬間ならではの、一生に一度のイベントをお支えするものですから普通のものでは済まされません。縁を結ぶ美味しさといいますか、やはり裏切らない美味しさにこだわっています。
高級キノコの一大産地、雲南省でビジネスを展開
喜多村:その美味しさへのこだわりという点で、いま取り組んでいる商品は何かございますか?
濱名:いま注力しているのは中国・雲南産の野生のキノコなんですよ。雲南省は世界的にも有名な野生キノコの産地で、松茸やイタリアンの高級食材として知られるポルチーニ茸、それから世界一の黒トリュフの産地でもあるんです。
そこで弊社では「香味小堂(コウミコドウ)」というブランドを立ち上げまして、雲南省のトリュフ、ポルチーニ茸、松茸を中心に原料を仕入れ、それらを使ったお惣菜の開発や、調味料などの加工品まで一貫して作っているところです。
喜多村:実は私も昔、伊藤園さんと一緒に中国福建省のウーロン茶を扱ったことがあります。中国とのビジネスは難しい面もあると思うんですが、その辺はいかがですか?
濱名: 私は独立した後、最初は大連、それから北京、上海と、約30年間、ご縁があって中国の百貨店や流通関係のコンサルティングのお仕事をいただいていました。今回はそうした中で、雲南省の方に出会ったわけですが、もちろん商習慣の違いはあるでしょうけど、お互い一生懸命取り組んでいます。食べ物に関しての意識は共通していますし、やはり美味しいものはみんなをハッピーにします。
喜多村:松茸、ポルチーニ、トリュフというと高級なラインナップですね。
濱名:ええ、安全、安心にこだわって、雲南省の少数民族の方々がすべて手摘みで収穫しています。ただ、決して高額で手が出ないというものではなく、乾燥させてより風味や香りを引き立たせたものをパウダーにしたり、ご家庭で楽しんでいただけるよう商品化しています。
例えば、パスタやオムレツに使ったりトリュフバターにしたり、料理にどう生かすかは、使う方次第といいますか、ふだんの生活を楽しんでいただけるように遊んでいただきたい。それが私たちの「食卓を豊かにする」という考え方です。
喜多村:パン生地に練り込んだりするとオーブンからいい香りがしそうですね。
濱名:実は一部の洋菓子店では、すでに塩トリュフサブレのような商品に使っていただいているんですよ。あとは、すき焼き店ですね。黒トリュフは熱を加えると香りが立ちますし、トリュフで割下を作ったすき焼きを提案しています。トリュフの風味はお肉との相性も抜群です。
喜多村:商品を開発するにあたってレシピのサポートは行っていないんですか?
濱名:お客様が楽しむきっかけづくりはしたいと思っていまして、9月中旬の商品の発売に合わせて『家庭画報』の世界文化社さんから「ドライキノコの美味レシピ」というレシピ本を出すことにしたんです。料理研究家の真藤舞衣子さんと管理栄養士の柳沢幸江先生に監修いただきまして。キノコの健康食としての側面もよくわかる本になっています。
自然本来の美味しさとの出会いは、ずっと記憶に残る
喜多村:商品はネットで直販したり、スーパーや百貨店にも卸していくのでしょうか。
濱名:ええ。ただ、今回はWEBで販売するだけではなく、サイバー空間にスタジオジブリのような世界観を構築して、キノコ狩りをしたり、キノコマーケットで遊んだりできるような、もっと有機的な幸せ感もお届けしたいと思ってるんですよね。
喜多村:濱名社長のそうした食への思いは何が原点となっているんでしょうか。
濱名:私も地方出身で漁業の家に生まれたものですから、身の回りの自然のものを料理して食べるという食生活を送ってきました。新鮮な魚をいただくのはもちろん、山には春になれば山菜。山椒の新芽を摘んで山椒味噌を作ったり、細いふきは砂糖をまぶして綺麗な緑色のふき菓子にしたり… 夏には家で作ったしそジュースを飲んで、そして秋にはキノコです。
その美味しさが、滋味深いというのでしょうか、腑に落ちるような、心が豊かになるような美味しさで、ずっと自分に染み付いています。魚は単に海に入れば捕れるものではなく、地域や潮目が関係しますよね。キノコも同じように「城(シロ)」があって、それを狙って採りに行っても100パーセントあるわけじゃありません。その時の気温や気圧などの条件が揃わないと、あの花は出てこないんです。野生の食べ物というのは奇跡的に出てくるものなんですよね。そうした自然そのものの美味しさと出会った記憶は、やはり忘れられません。
喜多村:飲食足りて礼節を知るといいますが、良いものを食べることは人の体も心も豊かにしますね。
濱名:料理家の先生方には「一物全体」や「身土不二」といった考え方を提唱される方も多いですが、それに近いですね。いまキノコのブランド展開にワクワクしているのも、私が地方で育ったときに思った感覚と、流通業に携わる中でいろいろな方々から教わったことがちょうどマッチしているからだと思います。
喜多村:本来、そうした自然の味覚を楽しむには、例えば里芋やごぼうで筑前煮を作るにしても、泥やホコリを落としたり手間がかかるものです。御社の商品は、先人たちの知恵である乾燥技術を生かして、自然本来の味覚を手軽に味わえるようにしたものなんですね。
濱名:ええ、大切なのは、楽しく料理して、楽しく食べて、楽しく健康に生きてもらいたいということです。
喜多村:最後に、濱名社長は、これからの日本を支えるのは、どのような人財だと思われますか?
濱名:冒頭で申し上げました通り、私はニチイ時代に鍛えていただいたわけですが、あるとき先輩から「濱名君は自分のご飯のおかずを増やしたくて一生懸命頑張ってると思うけど、お客様のおかずをもう一品増やすように考えるともっといい仕事ができるよ」とご指導いただいたことがあるんです。それを聞いたとき、自分が情けなくなったというか、商いには心や哲学が必要なんだと思いましたね。
喜多村:ニチイさんとは、前身のセルフハトヤさん時代から私の父である公開経営指導協会の先代理事長がお付き合いさせていただいていましたが、初代社長の西端行雄さんもやはり同じような考え方でいらっしゃいました。小売は相手の立場で考え、三方よしで全員がハッピーにならないといけないのですが、近年は一度相手の立場に自分を置き換えて考えられる人が減ってきているように思います。
濱名:そうですね。私も、私たちが働くことで何かこの社会が良くなるよう、あるいは関係する皆さま方の会社が良くなるよう、努めていければと思っています。
◆濱名正巳 (はまな まさみ)
株式会社フーズクリエート代表取締役
株式会社フーズクリエート
所在地:東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル1025
URL: https://www.foodscreate.jp/
◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長
一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/