モデル・俳優として活躍中の筧 美和子が、松井玲奈主演の映画『幕が下りたら会いましょう』で松井演じる麻奈美の妹・尚役で出演を果たした。上京後、志し半ばで旅だってしまう運命の役柄で、演じる筧自身も今回の作品や役柄の影響を受けたと撮影を述懐する。2014年に俳優としても本格デビューして以来、成長を続ける筧にさまざまな話を聞いた。
―演じられた尚というキャラクターの印象について教えてください。
彼女は序盤で亡くなってしまうので、作品の中で尚のことが多く語られるわけではないのですが、みなさんの中にずっとい続ける人物なので、短いシーンの中で尚という人を存在させることは難しかったです。プレッシャーもありつつ、でも尚のことを想像する作業は楽しくて、これまでのほかの作品とは向き合い方も違ったように思います。
―それは、どのように違いましたか?
尚にまつわるヒントをかき集めて想像するみたいなことが多かったです。普段もそういうやり方をすることもあるのですが、今回はニュアンス重視というか、感じ取ることが演じる上で大きかったです。彼女はひとりで頑張って東京に出ていたという背景もあるので、できるだけ尚のことだけに焦点を当てるというか、そういう気持ちではいました。
―役作りも難しそうですよね。
監督とも話し合いましたが、序盤で麻奈美役の松井玲奈さんに抱きしめられるシーンを撮り、感覚的なことではあるのですが、その時に麻奈美との関係みたいなものを体感できました。それがあったからこそその後のシーンでも尚としていられたなと思っていて、いわゆる役作りというよりは、尚が自分の中で形成されていく感覚ではありました。
―尚は、麻奈美との姉妹関係をどう捉えていたと思いますか?
それぞれの家庭で姉妹の形もそれぞれ違うと思うのですが、家族は生まれた時から選べないですよね。親も兄弟も。相性が合おうが合うまいが、ずっと生きている中でなぜかずっと近くにいるもの。冒頭のふたりの美容室のシーンなどはすごくリアルで、自分をさらけ出せる相手なんだけど、知りすぎていて素直になれなかったり、実は支えになっていたり、兄弟姉妹ってすごく不思議なんですけど、真奈美との間の根底にはお互いそういう想いがありつつも、素直になれないのだろうとは思います。
―尚の人生は悲劇で終わったかも知れませんが、彼女に対してはどういう感情を持ちましたか?
すごく残酷ではあるのですが、尚が必死で生きていた事が伝わりました。寂しさみたいなものはありつつも、前向きに自分の人生に向き合おうとしていた最中だったと思うので、本当に残念だったとは思いますが、でも自分の人生と向き合うために戦っていた人だろうなと思います。
―演じていてご自身に影響はありましたか?
最後のダンスシーンで、笑顔で踊っている場面は、尚にとっては演劇へのあこがれや家族と過ごしてきた時間が、あの瞬間にあふれていたと思うので、その時は自分にとってもこのお仕事をしていて宝物みたいに感じる時間があるので、そういうことがあるから頑張れるところはあります。そのことを改めて教わった感じがしています。そういう無心で楽しめる、そういうものに出会えたことを大切にしたいなと。
―プラスになったことも多そうですね。
改めてこの作品を経て思ったことは、目に見えないけれどつながりみたいなものを感じ取れたり、論理的ではないけれども心に響くものがあり、そういうものは演じる側も上手く説明できないけれど、心は映るなということを改めて今回の映画で感じました。そういうものをもっと残していきたいですし、誰かの心に届くことをあきらめたくないと思いました。
―今回で言うと尚は、つねにどこかにいるような存在感だったので、想いは届いていたと思いました。
ありがとうございます。そう言っていただけてとてもういれしいのですが、松井さんやしゅはまはるみさんが、わたしをそこにいさせてくれたと思うんです。なので今回、そう感じてもらえたのかなと思います。わたしもそういうことを改めて大事にしたいなと思いましたし、こういう作品は好きだなと改めて思いました。
―最後に楽しみに待っているファンの方へメッセージをお願いします。
観る方によって受け取り方が違うので、ぜひ頭を真っ白にして映画を楽しんでいただければと思います。
■ストーリー
冴えない日々を送る売れない劇作家に、1本の電話が妹の死を告げた。
過去と現実、様々な出会いと再会の”揺らぎ”の中で見つけた物とは—―。
実家の美容室を手伝いつつ、鳴かず飛ばずの「劇団50%」を主宰している麻奈美(松井玲奈)。
劇団員の結婚祝いで集まって馬鹿騒ぎをしていたある夜、妹の尚(筧美和子)が資材置場で亡くなった。
その日、尚からの着信があったにもかかわらず電話に出なかった麻奈美は、複雑な思いを抱えてしまう。
母親・京子(しゅはまはるみ)との新たな確執が生まれる中、劇団仲間の早苗(日高七海)と妹の部屋を引き払いに東京へ。
麻奈美は、様々な人々との出会いと再会を経て、自分自身と向かい合っていく事になるが—―。
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