
山田洋次監督(93)が11日、都内の葛飾柴又寅さん記念館と山田洋次ミュージアムで行われたリニューアル式典に「男はつらいよ」で諏訪さくらを演じた倍賞千恵子(83)らと出席した。
葛飾柴又寅さん記念館は「男はつらいよ」の舞台となった柴又に、1997年(平9)11月、山田洋次ミュージアムは2012年(平24)12月に、それぞれ開設。19年10月には両館の入場者数は累計で500万人を突破したが、3年起きにリニューアルされてきた。
そして、柴又は倍賞と木村拓哉(52)が出演する山田監督の新作「TOKYOタクシー」(11月21日公開)の舞台にもなった。木村演じる個人タクシー運転手の宇佐美浩二のタクシーに、倍賞演じる85歳の高野すみれが乗って、東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで向かう中、寄り道を依頼し、次第に心を許して自らの壮絶な過去を語る。
山田監督は囲み取材で「TOKYOタクシー」について聞かれた際、物語の始まりは柴又だと明かした。「東京に暮らしている、おばあさんがタクシーに乗って一日中、歩く話。最初、タクシーの乗るの、どこにしようか…倍賞さんと柴又が似合って、柴又が良いかな、と」と切り出した。「もちろん『寅さん』とは関係ないストーリーだけど『帝釈天の表に来てちょうだい』というセリフがある。柴又が出てくるんですよ、区長さん」と、青木克徳葛飾区長に語りかけた。
倍賞は「すみれさんが柴又出身と聞いた時『へっ!』と言ってしまった。まさか柴又から始まるとは思わなかった」と笑みを浮かべつつ、語った。「さくらとは違うタイプのおばあさん。(ロケは)さくらさんの家があったかなというところから。最初、違和感があったけれど、なくなった。とても面白いなと」と振り返った。
山田監督から「さくらとは(キャラクターが)全然、違うわね」と語りかけられると、倍賞は「仕事を持っている女性で、ネイルサロンをやっている」と、すみれのキャラクターのディティールを明かした。「さくらさんはネイルする人じゃない。3時間半かかって両方のネイルをして役を作っていく感じ。面白かった」と役作りを振り返った。
倍賞は「山田さんにとっても、違う作品では?」と山田監督に問いかけた。同監督は「僕にとって初体験のような映画若い時のシーンはきついのもあってね。苦労しましたよ。割と性的な描写が出てくる…好きじゃない。でも、物語の上で、避けて通れない。初めてでしょうね」とも語った。
明日12日にオープンする今回は「体験」「昭和」をテーマとして、入館者が体験できる展示物を新たに製作。通常は一般公開されることのない貴重な彗星(すいせい)「TORAJIRO」の宇宙塵(うちゅうじん)が展示される。その名付け親でもある東北大大学院の中村智樹教授も登壇した。