
中村橋之助(29)福之助(27)歌之助(23)の成駒屋三兄弟が自主公演する「第3回神谷町小歌舞伎」が5月1、2日、東京・浅草公会堂で、昼夜公演の計4公演を行う。日刊スポーツの取材にこのほど応じ、橋之助は「ターゲットは世界にいる全員だと思ってやっていきたい」と宣言した。
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歌舞伎のチュートリアル的な位置付けを目指して23年にスタートした同公演も今年が3度目。毎回メインを決め、演じたいものを届けてきた。今回は歌之助がメインで口上も担当。「ありがたいことに、去年解説も少しやらせていただいたこともあったので、それも踏まえながら固くなりすぎず、お話をするような感じで皆さんに解説できたらなと思います」と自然体だ。
昨年の口上は福之助が担当。「歌之助はいろんな経験を積んできていますから」と話すと「あとはセンス」とにやり。
今回の演目は「弥生の花浅草祭」と「義経千本桜」。橋之助はこのテーマを“愛”とした。「義経千本桜は親子の愛がテーマ」とし、「ここまで支えてもらった浅草への愛といったらおこがましいですが、感謝を込めて『弥生の花浅草祭』としました」。
歌之助が選んだ「義経千本桜」は3大名作の1つ。「川連法眼館の場」は通称「四の切」と呼ばれ、父芝翫、兄橋之助も佐藤忠信を演じてきた。同作を選んだ歌之助は「澤瀉屋さんのやり方を小さい時からずっと見てきて、いつかやりたいと思っていました」という。「去年初めて義太夫狂言のメインをやらせていただいて、次を目指す上で『四の切』をやりたいと思っていた」。
昨年の挑戦では「こんなに隅々まで考えて芝居をしなきゃいけないんだってことに難しさを感じました」という。「忠信に挑むのは心配な部分もある」と素直に認めつつも、「静として橋之助が出てくれるので、そこは兄たちの胸も借りながら、若いからこそできるエネルギーで、自分が今できる全てを出し切りたいです」と胸を張った。
橋之助の忠信挑戦も23歳だった。「忠信というのは、恐らく歌舞伎役者全員が1度はやりたいという、本当に大きな大きなお役です」という。「1カ月間、子供の頃から憧れてたお役をできてうれしいと過ごしていた」と振り返り、「もちろん難しいことに挑むので軽いことは言えないのですが、“楽しむ”ところも持っていて欲しい」とエールを送った。
また、橋之助にとっては初の女形となる。「女形願望はあったんです」とし、「歌之助に『やりたいんだけど』と言ったら、二つ返事でした。だから僕もすごく楽しみです」と目を輝かせた。
福之助は歌之助を“芝居っ子”と称し、「役ができるという喜びを感じてやるタイプ」とした。「四の切は歌之助ができないとお芝居として成立しないのですが、憧れが力になるタイプなので、やってくれると信じています」。
兄たちからのエールを受けた歌之助は「お稽古までは自分を追い込んで、始まったらとにかく楽しみたいですね」とほほ笑んだ。
「四の切」のコアは忠信、静、義経の3人となる。今回三兄弟がそれぞれを演じる。橋之助は「歌之助が真ん中ですが、今回3人の力を合わせてというところがある意味、僕たち成駒屋三兄弟の今のレベルというものを試されるところかなと思います」と覚悟も口にした。【川田和博】