starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「わいせつか、芸術か」議論された「愛のコリーダ」はじめ過去作、旧作 現代に改めて見る意義


1976年の名作『愛のコリーダ』の再上映や『新幹線大爆破』のリブートが話題です。『愛のコリーダ』は、大島渚監督が監督し、猟奇的な実際の事件を基にした愛と官能の物語で、初公開当時、大胆な性描写によって賛否を呼びました。その後、映画は裁判を経て無罪判決を受け、2000年に再公開されました。一方、現在ではこうした表現の製作が困難であることから、過去の作品が一層新鮮に感じられる機会が提供されています。特に『昭和100年映画祭』など特集上映では、過去の名作を再評価する場となっており、技術が発展した現代だからこそ過去の作品に新たな発見があることを指摘しています。

「愛のコリーダ」(C)大島渚)プロダクション

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

24年に没後10年を迎えた、高倉健さんの代表作の1つである75年の「新幹線大爆破」が再構築、リブートされ、23日からNetflixで配信がスタートすることが話題となっている。高倉さんの12年の遺作「あなたへ」で共演を果たした草なぎ剛(50)が主演し、樋口真嗣監督が手がけた。元となった高倉さんの作品は東京・丸の内TOEIで開催中の特集上映「昭和100年映画祭 あの感動をもう一度」で見るチャンスがある。今年が昭和100年にあたることを受けて、昭和の時代を彩った名作・ヒット作42本を一挙上映する同企画で、22日に「新幹線大爆破」が上映される。

過去に作られた作品が、後世に時代に合わせて作り替えられて発表、公開されることがある。作品に時代を超える力があるからこそ、なせる業だろう。一方で、配信の普及やDVD、ブルーレイ化で作品を見る機会はあったとしても、新作の映画、ドラマが次々、世に生み出される中、わざわざ見ようという人は、どれくらいいるだろうか?

ただ、過去作、旧作と言われる作品は、その時代だからこそ作ることができたもの…裏を返せば、現代においては作ることが難しい、もしくは不可能と思われる作品が少なくない。CG、VFX(特殊視覚効果)の技術が進んだ現代であれば、ブルーバックなどを背に俳優が演じるところを、そうした技術がない時代は、危険なシチュエーションでも俳優自ら体を張って演じている。実際に演じただけに、映像から伝わってくる迫力は真に迫っている。

現代においては、そこまで表現すること自体、難しいのでは? と思われる作品もある。3月16日に都内で行われた第6回大島渚賞記念上映会で上映された、1976年(昭51)年の藤竜也(83)の主演映画「愛のコリーダ」も、そうした作品の1つだろう。同作は、愛人の女性が交際中の男性を殺害し、切断した性器を持ったまま逃亡した、1936年(昭11)の猟奇事件「阿部定事件」をモチーフに、大島渚監督が男女の情念と官能の世界を描いた。藤が料亭「吉田屋」の主人の吉蔵、11年に亡くなった松田英子(暎子)さんが、店の住み込み女中の定を演じた。

世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)に併設して開催される、フランス監督協会主催の監督週間に出品され、11回も上映されるなど大きな反響を得た。一方で、性器が露出するなど濃厚なセックスシーンが多数、描かれたことから、76年10月に日本国内で公開された際は、フィルムが2分間以上もカットされ、性器が露出したセックスシーンなどにはボカシを入れるなど、大幅な修整が施された。海外では無修整のまま上映された国もあり、大島渚監督は当時「これは私の作品ではない」と憤慨した。

「わいせつか、芸術か」の議論は、社会現象となった。さらに、作品のスチール写真や脚本を掲載した同名の単行本が、刑法175条に規定された、わいせつ物頒布罪に当たるとして、同監督と出版社社長が77年8月に起訴された。大島監督は「わいせつ、なぜ悪い」と、憲法で保障された表現の自由を主張し、79年の1審、82年の控訴審ともに同監督らに無罪判決が出た。製作から足かけ7年にわたった裁判だった。

2000年には、再上映された。上映にあたり、配給はカットされた部分の復活と、ボカシのないオリジナルプリントの上映を目指し、大島監督の許可を得て性描写をめぐる映倫との協議に入った。ノーカットでの上映こそ実現したが、性描写に対する映倫規定は「性器、恥毛は原則として描写しない」となっており、15カ所にボカシが入った「愛のコリーダ2000」として24年ぶりに劇場公開。21年には「愛のコリーダ 修復版」として公開された。

第6回大島渚賞記念上映会では、主演の藤と、藤を03年の映画「アカルイミライ」で起用した黒沢清監督(69)のトークショーが開かれた。トークショーの前に「愛のコリーダ」本編が上映され、本編の鑑賞含め取材した。以前、鑑賞したのはずいぶん前のことで、性交シーンは腰から下がカットされていた覚えがあった。それが、第6回大島渚賞記念上映会で上映されたバージョンは、ぼかしこそ入っていたが下半身はカットされておらず、アンダーヘアなども、ずいぶん見えており、過去に見たものとは、ずいぶん違う印象を受けた。

第6回大島渚賞記念上映会で上映されたバージョンは「愛のコリーダ 修復版」。HDカムSR素材を元に、作品全体のフィルム傷やゴミを除去するレストア処理をした上で、退色しているシーンのカラーコレクションを行い、当時の色を再現している。オリジナル版から足されたシーンはないが「愛のコリーダ2000」の時にはなかった、子どもの裸にボカシを入れる指示が映倫からあったという。

藤はトークショーの中で「最初、私の予定じゃなかったみたいで」と、当初は吉蔵役にキャスティングされていなかったと明かした。「製作発表の2、3日前に崔さんから『赤坂の事務所で大島さんに会ってくれませんか?』と電話があった」と、大島組のチーフ助監督だった崔洋一さんから連絡があったと説明。その後、台本を手にしたが「その場で読んで欲しいと読み始め…セックスシーンが多いんで、ぼうぜんとしちゃいましたけど。これ、映画になるのかな? と」と、セックスシーンがあまりに多く、驚いたと振り返った。それでも「セックスシーン、セックスシーンと重ねた向こうの、男と女の情念を表現できる。実際、人間は、そうだもんな、いいなと思った」と納得したという。

鑑賞し、藤の話を聞きながら、現代において「愛のコリーダ」のような作品、表現をすること自体、相当難しいだろうと思わずにはいられなかった。ここまでのセックスシーンを演じることに、抵抗を感じる俳優も少なくないだろうし、事務所に所属していたら、なおさら出演を許すだろうか? 俳優の方でやると腹を決めて出演し、演じたとしても、作品を完成させる過程の編集段階で、局部と分かるシーンは、そもそも入れないのではないか。

そうした、現代では製作、表現が難しいと思われる名作、旧作をスクリーンで鑑賞する機会は、名画座の減少により少なくなった。一方で「昭和100年映画祭」のように、特集上映などでチャンスはある。古いもの、過去のものとしてではなく、現代では見ることができない、ある意味、新鮮なものとして見てみてはいかがだろう? きっと、新たな発見があるはずだ。【村上幸将】

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    おすすめ
    1. MIE主演「コールガール」が登場!「令和によみがえる。懐かしのちょいレア劇場」12月特集放送!CS衛星劇場

    2. 高橋一生 主演! 『連続ドラマW 1972 渚の螢火』制作決定!! 高橋「クライムサスペンスとして…」

    3. 【インタビュー】奥山和由監督、「この映画があることで魂が救われたと思ってくれる方がいればそれでいい」

    4. 映画『かなさんどー』松田るか&照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリ)インタビュー「許しを与えることは苦しいけれど素敵なこと」

    5. 長谷川慎✕古屋呂敏 ハグルーティーンを披露!ドラマ再編集版にはカットされたキスシーンも!『恋をするなら二度目が上等~special edition~』公開記念イベントレポ

    6. 本田望結×恒松祐里 映画『きさらぎ駅 Re:』 6/13(金)全国ロードショー決定! 「特報映像」解禁!!

    7. 中山美穂さん主演「Love Letter」30周年記念初日、豊川悦司「横に美穂ちゃんが…」

    8. 森田剛、今一番欲しいものは?ないと言いながら「髪の毛は欲しい」

    9. 草彅剛×清原果耶 映画『碁盤斬り』 フランスでも大ヒットスタート!!

    10. ミリオンオリジナルドラマ『100万円と壊れた愛』『なりすましの恋』吉川啓太監督&吉倉あおい&小川李奈インタビュー 「今いる場所から抜け出したい気持ちを持っている人たちの物語」

    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.