はじめに
今年の夏は、地元やご近所で安心・安全に楽しむ「プチトリップ」が主流になりそう。そこで、今回は街のお散歩途中に気軽に楽しめる人気のパブリックアートに注目。なかでも、ちょっと疲れた時に“ひと休み”ができる、座れるアートをご紹介します。この夏のおでかけは、カメラを片手にゆっくりのんびりアート鑑賞を楽しんでみてはいかが?
Text:ART&旭
【立川】街全体が美術館!? 109点のパブリックアート
西東京エリアに住む人たちにとって都心への入り口であるとともに、自然にも恵まれた人気の街・立川にあるパブリックアートエリアが「ファーレ立川」です。駅の北口から高島屋方面へとペデストリアンデッキを進むと、やがて街中に置かれた数々のアート作品に出会えます。その数なんと109点。ここは米軍基地跡地の再開発にあたり「基地の街から文化の街へ」の思いを込めて作られた場所で、イタリア語で「創造」を意味する「ファーレ」と名付けられました。
▲車止め(ベンチ)
数あるアート作品の中で一際目立つのが、米国のアーティスト、ヴィト・アコンチによる「車止め(ベンチ)」。車を縦切りにしたようなオブジェは車止め兼、実際にベンチとして座ることができます。
強化プラスチックで作られた本体は敷石の質感も写していて、思わずニヤリとさせられるウイットに富んでいます。エリア内には他にも、ニキ・ド・サンファルの「機能するアートーベンチ」や、アレシュ・ヴェゼリーの「ダブルベンチ」などの座れるアート作品があり、楽しく休憩するにはもってこいです。
住所:東京都立川市曙町2-37
電話番号:042-523-2111(内線4501)
ファーレ立川アート管理委員会事務局(立川市地域文化課)
【六本木】散策気分でアートを体感! 六本木ヒルズのストリートスケープ
六本木ヒルズを東京の文化の中心地にしよう! というアイデアの一環としてスタートした「六本木ヒルズパブリックアート&デザインプロジェクト」。敷地内の各所にあるアートとデザインの境界を越えた、美しく機能的な作品が、創造的な文化都心の景観を形造っています。
六本木ヒルズのメインストリートである、けやき坂通りとさくら坂通りの歩道上では、内田繁氏がアート・ディレクションを担当し、世界的に評価が高いデザイナーとのコラボレーションから生まれた世界初の試み"ストリートスケープ"が楽しめます。
▲雨に消える椅子
エリア内には、巨岩のようなガラスの塊でできている「雨に消える椅子」や、ジャズの名曲がタイトルとなった「愛だけを・・・」、7種のポーズとテーブル・椅子が一体となった「デイ・トリッパー」など、ユニークでデザイン性に優れたモニュメントのようなベンチ10基が設置。散策しながら座って休憩しているだけでも、素敵なアートを体感することができます。
▲愛だけを・・・
▲デイ・トリッパー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
電話番号:03-6406-6000(森タワー総合インフォメーション)
【墨田区・台東区】休みながらのゆるゆる観光。台東・墨田をアートで満喫
「GTS(藝大・台東・墨田)観光アートプロジェクト」によって誕生したGTS観光アートライン。浅草と東京スカイツリーをアートで繋ぐ観光ルートになっていて、東京スカイツリーのビューポイントに12の環境アート作品と5つのアートベンチが設置されています。
空に瞬く星と、台東区の伝統的な風景や街並みをモチーフにした「灯り空」。
▲灯り空
GTSのロゴがデザインされており、藝大・台東・墨田の三者共催事業のメッセージが形に込められた「GTSベンチ」。
▲GTSベンチ
台東区にある「ササエル」は東京スカイツリーカラーの白い金属板が、軽やかに舞うような曲線を描くベンチです。
▲ササエル
▲ササエル(左)、瓦(右)
また、墨田区にある同じ題名「ササエル」は人と人が支えあうというテーマが素直に造形されたユーモアがあふれる作品、瓦に見られる伝統美を生かしたデザインその名も「瓦」は、昔瓦の生産が盛んだった場所に設置されました。アートを楽しみながら、浅草や東京スカイツリー観光を満喫してみてはいかがでしょうか。
住所:東京都墨田区・台東区
電話番号:03-5608-1111(墨田区役所)、03-5246-1111(台東区役所)
【豊洲】かつて使われていた車輪がアートに。豊洲のトルクベンチ
▲©2014 中村哲也
豊洲フォレシアの晴海通り側に設置された「トルクベンチ」は、2014年に現代美術家・中村哲也氏によって作られたパブリック・アート。貨物を運ぶ列車に用いられる車両(貨車)をモチーフにしており、造船業などで栄えたこの地域の歴史を残すために作られた、全57点のアート群の一つです。車輪とレールは、造船所時代の豊洲を走っていた貨車の部品をそのまま使ったのだそう。
オフィスビルの中で存在感を放つカラフルな色合いと、足元にあるレールが特徴的。近付いてみないとベンチであることに気づきません。「『これ座っていいの?』と感じるような違和感を目指した」という中村氏の言葉にも納得です。
「この貨車型の彫刻は、腰掛ける人、腰掛ける場所の記憶、過去から現在そして未来への時間の流れが一つに分け込む装置である」(展示プレートより)。木漏れ日の中で佇むトルクベンチ。豊洲の街がたどった歴史を回想しながら、座ってみてはいかがでしょうか。
住所:東京都江東区豊洲3-2-24
アートディレクション:清水敏男
アートコーディネート:TOSHIO SHIMIZU ART OFFICE
【横浜】港町・横浜の中心で大切な人を思う椅子
▲結婚式
横浜駅からみなとみらい線に乗り換えること約3分。みなとみらい駅南側に隣接した人気の大型複合施設「クイーンズスクエア横浜」の屋外スペースにあるのが、座れるアート作品「結婚式」です。
抽象絵画を思わせる大胆な色使いと、椅子の間からひょっこりのぞき込むユーモラスな青い顔に癒されます。作者の牛島智子さんは九州を中心に数々の抽象作品を制作しているアーティスト。このカラフルな椅子は、隣接したホテルの結婚式場で式を挙げたカップルに、ぜひここで記念写真を撮って欲しい、との思いで作られました。
「人と人のつながり」がテーマのこの椅子は、もちろん一人で座ってもOK。隣の空いた席にこれから座る人や、昔座っていた旧友を思い出すスペースになるかもしれません。目の前には横浜を象徴する大観覧車。港町の休憩時間、あなたは誰を思いますか?
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい 2-3 (クイーンズスクエア横浜 クイーンズパーク)
電話番号:045-682-1000(クイーンズスクエア横浜)
おわりに
街で出会える「座れるアート」を紹介しました。車を縦切りにしたようなユニークなものや、SNS映えも期待できそうなカラフルなものなど、街のなかには多彩なアートが溢れています。ぜひ、ちょっと座りに出かけてみてください。