どれほど技術が進化しても、法規や市場環境の変化などさまざまな要因が影響するため、最新のモデルが最良とは限らないのが、クルマの面白い所。さりとてモデル末期のクルマは、熟成が進んでいるとはいえ、その後現れる新型車で劇的に進化する可能性を考慮すると、実際に購入するのはなかなか勇気がいる。
そこで、近々の販売終了またはフルモデルチェンジが確実視されている、モデル末期の車種をピックアップ。その車種がいま“買い”か“待ち”かを検証する。
今回採り上げるのは、ホンダで最も長い10代49年もの歴史を持つCセグメントカー「シビック」のハッチバック6MT車。高速道路とワインディングを中心として総計約400km試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業
2017年7月に国内デビューしたこの10代目シビックハッチバック6MT車、前期型に試乗したのはもう……いや、たった3年前の2018年初夏になるが、マイナーチェンジし後期型へと切り替わったのは2020年1月。
だがその際に公式発表されている主な変更点は少なく、ADAS「ホンダセンシング」の全車標準装備化、前後バンパー・フロントグリル・リヤロアガーニッシュ・18インチアルミホイールのデザイン変更、シフトノブの形状変更、ボディカラーラインアップの変更に留まっている(注:トップロードサンルーフのオプション設定追加はCVT車のみ)。
しかしながら、そのわずかな変更点が与えた影響は思いの外大きく、細部は違えど3年ぶりに対面したこのクルマへ抱いた印象は、「こんなに落ち着いた雰囲気だっただろうか…?」だった。
前述のデザイン変更は造型自体が大きく変わったわけではなく、マイナーチェンジ前後の実車または写真を見比べなければ気付かないほど細かなもの。とはいえデザイン要素はむしろ増えているため、特にエクステリアのアクはより強くなっているのだが、ホイールのデザインやボディカラーが落ち着いたものになるだけで、グッと大人びた印象に変わるのは驚きだ。
そんな後期型シビックハッチバックの運転席に座ってみると、やや短いシート座面と軽すぎてミートポイントが掴みづらいクラッチペダルは相変わらずだが、シフトフィールがよりソリッドで小気味良くなったことに気付く。
そして、クラッチをつなぎ走り出した瞬間に感じるのは、スポーツカーもかくやの低重心感と、並の高級車が裸足で逃げ出す乗り心地の良さだ。この大きな美点がマイナーチェンジ後も損なわれず維持されたのは、大いに賞賛すべきだろう。……荒れた路面でロードノイズが盛大になるのも相変わらずだが。
■ホンダ・シビックハッチバック(FF)
全長×全幅×全高:4520×1800×1435mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1330kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1496cc
最高出力:134kW(182ps)/5500rpm
最大トルク:240Nm/1900-5000rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式 前/後:ストラット/マルチリンク
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:235/40R18 95Y
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:16.4km/L
市街地モード燃費:12.5km/L
郊外モード燃費:16.8km/L
高速道路モード燃費:18.6km/L
車両価格:294万8000円