圧縮比を高めて高効率運転を実現するオットーサイクルエンジンという仕組みを世の中に広く知らしめたマツダSKYACTIV-G。その源流とも言えるエンジンがZJ-VEM型である。
2007年7月のマイナーチェンジ版デミオに搭載されてデビューした、ZJ-VE型エンジンのミラーサイクル版がZJ-VEMだ。下死点を超えてもなおバルブを閉じない「遅閉じ」型で、圧縮行程
圧縮比を高めているのはピストン形状の変更。ZJ-VE型の浅皿型ピストン冠面に対して、ZJ-VEM型は平面形状として燃焼室容積を縮小、圧縮比を11とした。ピストンはこのほかにもスカート部の非対称剛性構造、ピンオフセット、スカート形状の最適化、そしてリングの薄幅化を盛り込み、摩擦損失の低減を図りながらガスシール性を満足させている。
吸気量が少なくなることによるトルクの減少は、かつてのミラーサイクル市販車・ユーノス800ではリショルムコンプレッサーを備え過給仕様としてクリアしていたのに対して、本機は自然吸気。吸気側に油圧式のカムフェーザー:S-VTを備え、ミラーサイクルに伴うトルクの落ち込みを抑える。また、マツダ初となるCVTを組み合わせることでトルク不足を補完していることもトピックだった。S-VTはミラーサイクル運転時のみならず、作動範囲を6500rpmまで拡大することで高回転域でのトルク特性向上にも寄与している。減速時のオルタネータ回生制御も実装している。
エキゾーストマニフォールドは短縮コンパクト化設計とし、触媒までの距離を短縮することで、冷間時の早期活性化を果たした。A/Fの把握についてはLAFS(Linear Air Fuel Ratio Sensor)とすることで、正確な空燃比を計測し、結果排気浄化率を高めることができた。
軽量化にも余念がなく、パワートレイン全体で約10kgものダイエットに成功している(排気関連で10kg/冷却関連で1.7kg/バッテリーサイズの縮小で2.2kg/そのほかエンジン補機において)。
■ ZJ-VEM
気筒配列 直列4気筒
排気量 1348cc
内径×行程 74.0×78.4mm
圧縮比 11.0
最高出力 66kW/6000rpm
最大トルク 120Nm/4000rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL In-Ex/×
(デミオ)
Z系列のエンジンはB系列の後継として登場し、その最初のモデルは1980年代末に登場したZ5エンジンだった。ZJ-VEは現在仕様の基本形で、もはやB系列との関連性はほとんど見られない。1.3ℓの本機はいわゆる「MZRエンジン」のシリーズでもある。このことからフォードの「シグマ」や「デュラテック」エンジンのシリーズと誤解されることも多いが、本機・ZJ型との関連性は低い。ちなみに前者はC、後者はL系列。
■ ZJ-VE
気筒配列 直列4気筒
排気量 1348cc
内径×行程 74.0×78.4mm
圧縮比 10.0
最高出力 67kW/6000rpm
最大トルク 124Nm/3500rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 直打
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL In-Ex/×
(デミオ)
ZJ-VEエンジンのボアを4mmアップして排気量を100cc増やした1.5ℓの上級パワーユニットだ。ZJ-VE同様に“Mazda2”(日本名:デミオ)、“Mazda3”(日本名:アクセラ)に搭載されたほか、プレミアム性を押し出した“ベリーサ”のメインエンジンとして搭載されていた点が本機の素性と用途を物語っているといえるだろう。チェーン駆動のデュアル・オーバーヘッド・カムシャフト、アルミ合金のブロックとヘッド、S-VT、4-1排気系など、メカニズムの基本部分はZJ-VEと同じである。
■ ZY-VE
気筒配列 直列4気筒
排気量 1498cc
内径×行程 78.0×78.4mm
圧縮比 10.0
最高出力 83kW/6000rpm
最大トルク 139Nm/4000rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 直打
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL In-Ex/×
(デミオ)