ホンダの電気自動車、Honda eは、街中ベストを標榜するだけに、航続距離は控えめだ。それでも200kmは走るはず。それなら、ファーストカーとして使えるのではないか? 試してみた。
Honda e AdvanceのWTLC交流電力量消費率は138Wh/kmである。この数字は、エンジン車におけるkm/ℓの逆(km/ℓは1ℓの燃料で何km走れるか)で、1km走るのに何Whの電気を使うか、を表している。だから、数字が小さい方が「電費がいい」ということになる。
Honda eの138Wh/kmは、現在日本で販売されている電気自動車のなかで非常に優秀な数字だ。Honda eより優れた数字を持つのは、
トヨタC+pod(54Wh/km)と三菱ミニキャブMiEV(127Wh/km)の2台のみ。
マツダMX-30EVは、145Wh/km
日産リーフSが155Wh/km
だ。
Honda eのバッテリー容量は35.5kWhだから、
35500Wh÷138Wh/km=257.39kmが一充電走行距離になる(のだが、カタログ上は259kmとなっている。きっと小数点以下の数字があるのだろう……)。
259km÷35.5kWh=7.296km/kWh
という数字が出てくる。
これは1kWhのバッテリーで何km走れるか、という意味だ。Honda eの電費計の数字が7.3km/kWhとどのくらい離れているか、を見ながらドライブしてみよう。
今回の試乗のテーマは、「Honda eはファーストカーになり得えるか?」である。モード電費は航続距離が259kmとなっているが、実際は200km程度と予想される。ガレージが2台分あってセカンドカーを所有できる場合はともかく、都会で暮らす多くの人にとって、1台所有が一般的だ。Honda e1台で、日々の暮らしは問題ないだろうか?
現在、ホンダのホームページを見ると、
「Honda eは生産台数が限られているため、複数期間にわたってご注文を受付けする方式を採用しております。
弊社といたしましては可能な限りお届けできるよう取り組んでまいりますので、何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます」
オーダー受付期間:第三期2021年2月4日〜
納車時期目安:2021年5月〜
受付台数:数百台
とある。絶対的な販売台数は少ないけれど、人気は高いようだ。
その人気のモトになっているのは、まずはその愛らしいデザインだろう。愛らしいデザインと優れた走行性能、サイドビューカメラや一面液晶パネルのインパネなどの先進的なイメージが、思わず「Honda e欲しい!」と思わせるのだ。僕も欲しい。
とはいえ、ガレージは1台分。とりあえず、電動車の試乗をさせていただくことが増えてきたので、自宅に200V(15A)のEV用コンセントを設置はしている。でも、200kmで大丈夫か?
ユーザブルバッテリー容量は28.5kWhだとして、その95%は約27kWh。200V/15A=3kWのEVコンセントによる充電だから、約9時間でフル充電ということになる。
航続距離は193kmと表示されていた。
日々の通勤だけなら往復30km、平日毎日編集部まで通勤したととしても150km。週末充電してあれば金曜日まで充電しなくて済む、という計算になる。
では、週末のドライブはどうだろう?
筆者が週末出かける先でもっとも多いのは、地元三浦半島である。つまり実家への往復だ。今回の試乗は、電費を競うことが目的ではないので、アクセルワークに気を遣うこともなく普通にドライブしてみた。
Honda eの美点は、その取り回しの良さ、後輪駆動らしさがほのかに感じられるハンドリングと加速フィール、そしてサイドカメラミラーシステムの使いやすさなど数多い。試乗中、隣を走るクルマの乗員、街中を歩いている人の視線は、ちょっとしたスーパーカーに乗っていると同程度(それ以上?)だ。みんなちょっと目が優しい(気がした)。
5日間、Honda eと過ごしてみた。この間の走行距離は391.9km。
平均電費は6.4km/kWhだった。
モード電費は約7.3km/kWhだったから、6.4km/kWhはモード電費の約88%だ。
とすると、普通に走ると
6.4×28.5kWhで182.4kmということになる(気を遣ってドライブすれば190kmくらいか)。
結論から言えば、まったく不安も不便も感じなかった。ただし、取材で東京ー名古屋くらいはクルマで出かける(いまはコロナ禍でそういう機会もめっきり減ってしまったが)ことが多いことを考えると、筆者の場合、Honda eだけですべてを賄うのは少し難しいかもしれない。
筆者のマイカーはEVではないので、自宅の電気(東京電力)の契約は、ごく普通の「従量電灯B 50A」だ。電気料金は
120kWhを超え300kWhまでは1kWh=26円48銭
それを超えると30円57銭
である。ここでは26円48銭を使って計算してみよう。
61.2×26.48=1620円
391.9km走るのに1620円だから
4.13円/km
という計算だ。
マイカー(F30型BMW 320d 2.0ℓ直4ディーゼルエンジン車)の燃費が軽油が少し安い時期の計算(109円/ℓ)で7.08円だったから、Honda eの方が圧倒的に安い、ということになる。
Honda e Advance
全長×全幅×全高:3895mm×1750mm×1510mm
ホイールベース:2530mm
車重:1540kg
サスペンション:Fマクファーソン式 Rマクファーソン式
モーター形式:交流同期モーター
モーター型式:MCF5型
定格出力:60kW
最高出力:154ps(113kW)/3497-10000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000 rpm
電池:リチウムイオン電池
総電力量:35.5kWh
総電圧:355.2V
WLTC交流電力量消費率:138Wh/km
一充電走行距離WLTC:259km
車両価格○495万円