
メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのジャーマン・プレミアム3、そしてレクサス、アキュラ、インフィニティのジャパニーズ・プレミアム3。メイン市場であるアメリカでの2020年の販売成績が明らかになった。さまざまな角度から分析してみよう。
世界的な新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で自動車販売台数はおしなべて前年割れとなった。今回のテーマであるジャーマン・プレミアム3(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)もジャパニーズ・プレミアム3(レクサス、アキュラ、インフィニティ)も、すべて販売台数は前年マイナスとなった。

上のグラフは緑色が2019年実績、青色が2020年実績だ。
一見してわかるのは、全ブランド前年割れであること。そして2020年実績は、メルセデス・ベンツ、BMW、レクサスがほぼ同じになったことだ。
2019年の販売台数は
1位:BMW 33万80003台
2位:メルセデス・ベンツ 31万6094台
3位:レクサス 29万8114台
だったのに対して2020年は
1位:BMW 27万8732台
2位:レクサス 27万5041台
3位:メルセデス・ベンツ 27万4916台
となったのだ。3ブランドの販売台数は拮抗している。

メルセデス・ベンツ SUV依存度 65.2% 販売台数1位は?

2020年、メルセデス・ベンツの北米セールスは前年ー13.0%の27万4916台だった。このうち、A/C/E/SクラスやSL、AMG GTなどの「CAR」の販売台数は9万5710だった。つまり残りはSUVだったということだ。
SUV比率は65.2%だった。

そして、もっとも売れたモデルは、
1位:GLCクラス 5万26256台
2位:GLEクラス 4万8154台
3位:Eクラス 2万7102台
だった。1-2がSUV、しかも上級SUVだったのである。
BMW SUV依存度 52.4% 販売台数1位は?

BMWは、北米で非常にSUV依存度が低いメーカーである。27万8732台の販売台数のうちSUVは14万6152台で52.4%に過ぎない。3シリーズが売れているから? いや、そうでもないのだ。
これは統計のマジックで、BMW of North Americaのデータで「X1」と「X2」がパッセンジャーカーに分類されているから、である。
X1:1万4405台
X2:7387台
がSUV(分類ではlight trucks)に入っていないのである。ためしに、この2モデルをSUVに分類すると
SUV比率は60.3%となる。
それでも他ブランドよりはずっと低めの数字である。

さて、そんなBMWの2020年北米セールスTOP3はどうなっているか?
1位:X3 5万9941台
2位:X5 5万642台
3位:3シリーズ 4万1442台
だった。
アウディ SUV依存度 65.6% 販売台数1位は?

アウディの2020年北米販売台数は前年ー16.7%の18万6620台だった。ジャーマン・プレミアム3といっても、上位2ブランドと比べると見劣りする販売台数である。そのなかでも健闘したのが、Q3だ。前年+84%の2万7251台を売り上げた。e-tron(5919台)e-tron Sportback(1283台)のEVの販売台数が増えているのはアウディにとって明るいニュースだった。

アウディの2020年北米セールスのTOP3は、すべてSUVである。
1位:Q5 5万435台
2位:Q3 2万7251台
3位:Q7 2万5371台
ついでにいえば、Q8も1万2371台のセールスを記録している。A6(1万535台)よりもQ8の方が売れているのだ。
レクサス SUV依存度 75.2% 販売台数1位は?

今回紹介する6ブランドのうちもっともマイナス幅が小さかったのがレクサスだ。前年ー7.7%の27万5041台のセールスをマークした。その源になったのは、SUVである。もともとレクサスはSUV、ハイブリッドのイメージが強いプレミアムブランドだったが、2020年の北米でのSUV依存度は75.2%と非常に高かった。
UX、NX、RX、GX、LXというラインアップで21万6836台。これは前年ー4.7%。一方の「CAR」は、6万8205台で前年ー15.8%だった。

レクサスの2020年北米セールスのTOP3は、次の通りだ。
1位:RX 10万1059台
2位:NX 5万5784台
3位:ES 5万1336台
とにかく、RXの強さは際立っている。並み居るライバルたちを凌いでの10万台突破は(前年ー9.0%ではあるが)、アメリカ人にRXがいかに愛されているかが窺える数字である。
アキュラ SUV依存度 73.4% 販売台数1位は?

2020年、ホンダの上級ブランド、アキュラの北米販売台数は13万6983台で前年−13.0%だった。ちなみにNSXの年間販売台数は、わずか128台。前年が238台だったからほぼ半減だ(前年の成績も芳しくないが)。それでも前年ー13.0%で済んでいるのは、SUVの頑張りによるもの。MDXとRDXの2モデルの販売台数は、10万601台。比率にしてじつに73.4%である。

アキュラの2020年北米セールスTOP3は
1位:RDX 5万2785台
2位:MDX 4万7816台
3位:TLX 2万1785台
だった。
インフィニティ SUV依存度 73.4% 販売台数1位は?

インフィニティの2020年は、前年−32.5%で、他ブランドより大きく販売台数を落としてしまった。
販売終了したQ70、QX30の影響も大きかった。救いは2019年にモデルチェンジしたQX50がコロナ禍のなかでも前年プラスを記録(+12.2%の2万885台)したことだろう。

そんなインフィニティの販売TOP3は次の通りだ。
1位:QX60 2万2880台
2位:QX50 2万885台
3位:Q50 1万6533台
だった。
こうして6ブランドの販売台数データを見てみたが、どのブランドもSUVブランドなのではないか、と思うほどSUV比率が高い。各ブランドのTOP3セールスのなかで、非SUVモデルは
・メルセデス・ベンツEクラス
・BMW 3シリーズ
・レクサスES
・アキュラTLX
・インフィニティQ50
の5台のみだった。
自動車メーカーにしてみれば、単価の高い(利益率が高い)SUVが売れるのはうれしい半面、重くて前面投影面積が大きく燃費性能はどうしても厳しくなるSUVが増えるのはCAFE規制などへの対応という面では苦しい。
それにしても、もはやSUVがノーマルな車型で、セダンやクーペ、ハッチバックが「少数派」という時代になったとあらためて認識する販売データだった。この傾向は世界的なものだが、いつまで続くのか? またEV/PHEVの販売台数の増加もだんだんと見えてきた。2021年がどうなるのか? 新型コロナウイルスの影響がどうでるのか? 注視していきたい。