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三菱エクリプスクロスにマイナーチェンジで新たに設定されたPHEVモデルに試乗した。アウトランダーPHEV譲りのパワーユニットを搭載したエクリプスクロスPHEVだが、その走りは期待を大きく上回るものだった。これって、ほんとにSUV?
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
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三菱自動車はクロスオーバーSUVのエクリプスクロスを一新し、PHEVモデルを設定して20年12月4日から販売を開始した。そのPHEVモデルに箱根周辺で乗ったのだが、驚いたのなんの。ランエボXの再来、いや、ランサーエボリューションX(2007年発売)が進化したらこの方向だったのではないかと確信させる、よく曲がって楽しいクルマに仕上がっている。これ、本当にSUVか?
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まずはエクステリアから見ていこう。見てのとおり、「ダイナミックシールド」と呼ぶ三菱自動車の「顔」が大胆に進化している。一番上にあるライトはヘッドライトではなくなってデイタイムランニングライトになり、ヘッドライトはバンパー内に配置される。ふたつ並んだ上がヘッドライトで、下はフォグランプだ。
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リヤもデザインを一新した。従来型のテールゲートは上下2枚のガラスで構成されていたが、新型はシングルガラスに変更。スリーダイヤをモチーフにしたようにも見えるリヤコンビネーションランプが(とくに点灯時に)目を引く。パールのような輝きと陰影を持ったホワイトダイヤモンドを新色として用意した。
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フロントウインドウ寄りがラウンドしたダッシュボードにシルバーの加飾を組み合わせた構成に変更はないが、新型はより上質になっている。視線移動が少なくて済むインパネ中央上部に配置されるディスプレイ(スマートフォン連携ナビゲーション)が8インチの大型になったのも朗報だ(PHEVモデルは最上級の「P」に標準装備)。
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プラグインハイブリッドのパワートレーンは、アウトランダーPHEV譲りである。これをエクリプスクロス専用にチューニングした。エンジンはガソリン2.4ℓ直4自然吸気(最高出力128ps(94kW)/最大トルク199Nm)を搭載するが、あくまで脇役だ。基本的にはバッテリー(総電力量13.8kWh)に蓄えた電気エネルギーでモーターを駆動して走り、電気エネルギーがなくなるか、強い加速を要求したときにエンジンの力を借りるスタンスだ。
モーターはフロントかリヤ、どちらか一方に積んでいるのではなく、両方に積んでいるのが三菱自動車製PHEVの特徴だ。フロントに最高出力82ps(60kW)、リヤに95ps(70kW)のモーターを積んでいる。リヤの出力がフロントより高いのは、走りを意識してのことだ。
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「電池がなくなったときにエンジンがかかると安心するはずなんですけどね」と、開発を担当するエンジニアは話し始めた。「アウトランダーPHEVのときに経験したのですが、なぜかみなさん、エンジンがかかるとがっかりするんですよ」と、笑みを浮かべながら説明する。
その気持ちならわかる。モーターがもたらす走りがあまりに気持ちいいので、エンジンがかかると、ノックもなく部屋に騒がしい人が乱入してきた気分なのだ。本当は助けてくれているのに。
「そこでアウトランダーの19年モデルから、エンジンがかかっても回転をなるべく上げないように、上げるにしても加速に合わせて上げるようにしました。なるべく遠いところでエンジンがかかっているようにし、気にならないようにしています」
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バッテリー残量が充分に残っているときは、よほど強くアクセルペダルを踏まないと、エンジンはかからない。登坂車線があるような上り勾配の高速道路で前に遅いクルマが立ちはだかったとき、追い越しをかけようとアクセルペダルを踏み増す状況でも、エンジンを始動させずにモーターの力だけで反応良く、スムーズに追い越しが完了してしまう。エンジンがかかっても静かなのは、遮音材や吸音材を追加した効果も大きいようだ。
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ドライバーの指示に応えて、エンジンがスタンバイする場面もある。エクリプスクロスPHEVは「ノーマル」「ターマック」「スノー」「グラベル」の4種類のドライブモードを持っている。このうち「ターマック」はPHEV専用モードで、ほかの3つは1.5ℓ直4ターボエンジン(最高出力150ps(110kW)/最大トルク240Nm)を搭載するガソリンモデルにも設定されている。ドライブモードは、セレクターレバー右横のトグルスイッチで切り替えが可能だ。箱根の山道に向かう際、おすすめに従って「ターマック」に切り換えた。
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「ターマックはよりスポーティに走れるモードです。切り換えると、走りのアシストをスタンバイするために、エンジンがかかります。アクセルのレスポンスは良くなり、回生ブレーキはB5になって、S-AWCのセッティングはより曲がる方向になります。ワンディングを意のままに気持ち良く走れるモードとお考えください」
補足しておこう。アウトランダーPHEVと同様、エクリプスクロスPHEVもモーターによる回生ブレーキ力をドライバーの意志で調節できる。DレンジのときはB2に相当する回生ブレーキがかかる。パドルシフトを引くと、B0(回生ブレーキはかからず惰行)からB5まで、6段階でブレーキ力を調節することが可能だ。B5は回生ブレーキが最も強い状態となる。
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エクリプスクロスPHEVはツインモーター4WDをベースにAYC(アクティブヨーコントロール)、ASC(アクティブスタビリティコントロール)、ABSを統合制御するS-AWC(車両運動統合制御システム)を搭載する。エンジニアが「S-AWCのセッティングはより曲がる方向」と説明したのは、AYCのブレーキ制御をより強めに作動させる(旋回内側後輪のブレーキをより積極的につまむ)ということだ。
ターマックを選択したときのエクリプスクロスPHEVは、峠で無敵である。誰かと競争して勝ったという意味でなく、意のままに走る気持ち良さの意味において、敵なしだ。狙いどおりに減速し、思ったとおりに向きを変え、次のコーナーに向かって反応良く加速する。上りだけでなく、下りも楽しい。強力に効く回生ブレーキのおかげで、アクセルペダルの加減で車速だけでなくクルマの向きをコントロールできる楽しさが味わえる。
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脚はしなやかに動き、傷んで亀裂だらけの路面であってもなめるように追従する。しっかりロールするが、ロールスピードが上手にコントロールされているので、自信をもって(不安を感じずに)コーナーに臨むことができる。エクリプスクロスは車体剛性にも気を遣ったというが、しっかりした剛性が走りにも効いているのだろう。
峠でのキャラ変ぶりに驚いたというのが、正直なところだ。しかし、それだけに終わらないのがエクリプスクロスPHEVの魅力である。ひとしきり走りを楽しんだあと、ノーマルモードに戻して山を下りることにした。インパネ下部のUSBポートには音楽ファイルを収納したUSBメモリーが差してある。「どれどれ」とスイッチを入れてボリュームを上げていくと、女性ボーカルの澄み渡った歌声が響き渡った。ちょっと、いや、だいぶ、感動した。
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「どこのオーディオ?」とAピラー根元のスピーカーグリルに目をやったが、ロゴは見あたらない。それもそのはずで、三菱自動車オリジナルのサウンドシステムである。走行状況を問わず静かだからオーディオが聴きやすいのもあるが、それだけではない。
「ターゲットは50代です」と、担当したエンジニアは説明してくれた。「若い方にとっては重低音がいいのかもしれませんが、そういう方々が聴く音楽のジャンルは違うのかなと。ジャズとか女性ボーカルといった、中高音域を重視したチューニングになっています」
走って良し、聴いてよし。エクリプスクロスPHEVは、ランエボ世代が2020年代を共に過ごすクルマにふさわしい。
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エクリプスクロスPHEV P
全長×全幅×全高:4545mm×1805mm×1685mm
ホイールベース:2670mm
車重:1990kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式&マルチリンク式
駆動方式:ツインモーター4WD
エンジン
形式:2.4ℓ直列4気筒DOHC
型式:4B12MIVEC
排気量:2359cc
ボア×ストローク:88.0×97.0mm
圧縮比:12.0
燃料供給:PFI
最高出力:128ps(94kW)/4500pm
最大トルク:199Nm/4500rpm
燃料:レギュラー
燃料タンク:43ℓ
フロントモーター
型式:S61
最高出力:82ps(60kW)
最大トルク:137Nm
リヤモーター
型式:Y61
最高出力:95ps(70kW)
最大トルク:195Nm
リチウムイオン電池
総電圧:300V
総電力量:13.8kWh
燃費:ハイブリッド燃料消費率WLTCモード 16.4km/ℓ
市街地モード 15.7km/ℓ
郊外モード 16.8km/ℓ
高速道路モード 16.5km/ℓ
EV走行換算距離(等価EVレンジ):57.3km
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ):57.3km
交流電力量消費率WLTCモード 213Wh/km
市街地モード 175Wh/km
郊外モード 183Wh/km
高速道路モード 204Wh/km
車両本体価格:447万7000円