御堀直嗣さんが選んだ「2020年の推しカー」はホンダe、アウディe-tronスポーツバック、ホンダ・フィット。第1位のフィットは、衝突安全性能を満たしながら前方視界を改善する車体を採用したことを高く評価した。
TEXT●御堀直嗣(MIHORI Notsugu)
ホンダ初の量産市販EVは、一充電走行距離を割り切り、それでいて十分な実用性を確保する新たなEV像を提案した。そのうえで、後輪駆動を採用することにより、最小回転半径を軽自動車より小さい4.3mとし、取り回しのよさは抜群だ。
難点は、リチウムイオンバッテリーの購買戦略の遅れから、初年の国内販売台数がわずか1000台でしかないという販売対応である。本気でEVを普及させる気があるのか、疑われる姿勢だ。
電気自動車(EV)専用開発であるだけでなく、世界的に使われている永久磁石式同期モーターではなく、昔ながらの誘導モーターを使うことで、有限資源である希少金属を使わず高性能EVを実現した。
これには先例があり、テスラのEVも同様に誘導モーターを使う。高性能追求のため単に最新鋭の技術や材料を使うのではなく、EVの普及を視野に汎用技術で最良のEVを目指した視点は評価できる。
また、カメラを使った後方確認も、左右のドア内側に画像用の画面を設置することにより、余剰な情報で運転者に気を散らせない工夫など学ぶべき点は多い。
1990年代以降、衝突安全性能向上のためとして運転者の前方視界が悪化の一途をたどり、いまだ改善されていない。世界の自動車メーカーは、交通事故死者・重症者ゼロを目指していると言いながら、運転の基本である視界の改善に回答をもたらしてこなかった。ところが、フィットは衝突安全性能を満たしながら前方視界を改善する車体をフィットで採用した。世界初といえる快挙だ。
『2020年の推しカー』は毎日更新です!
いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)の中から、「他人はどうか分からないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!