萩原文博さんが選んだ「美しすぎるクルマ」、その頂点に立ったのはマツダ(アンフィニ)RX-7だ。1991年の登場なので約30年前の車なのだが、エバーグリーンな曲線美は今見てもホレボレさせられる。
TEXT●萩原文博(HAGIWARA Fumihiro)
皆さんは「マジックアワー」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。日没前や日の出直後の薄明の時間帯を指す撮影用語です。光源となる太陽が低い位置となり、普段はコントラストが強くて消えてしまうクルマのラインが浮き出てきて、特にクルマが美しく撮影できる時間なのです。
これから紹介するクルマは明るい太陽の下でも美しいスタイリングですが、このマジックアワーのタイミングで見ると美しさが際立つ、史上最高に美しいと思う3台を選びました。
第3位:ジャガー・XJ(X300系)
第3位はX300系と呼ばれるジャガーXJ(1994年~2003年式)です。アルバイトとして、自動車メディアに携わるようになり撮影するためのクルマを引取に行ったときに、その美しいスタイリングに心を奪われました。
このジャガーXJを美しいと思うのは、前後の薄さ、そしてフロントからリアへ流れるボディサイドの曲線の美しさです。現在のクルマと比べると非常に薄く見えるボディですが、この薄いボディと彫りの深いラインが実に美しいと思います。全幅は1800mmしかないのですが、セダンとは思えないワイド&ローのフォルムは今街で見かけても目を奪われます。
第2位:BMW 6シリーズ(E24型)
続いて第2位はE24型と呼ばれるBMW6シリーズ(1977年~1989年)です。当時「世界一美しいクーペ」と表されたクルマですが、まだ免許証のない高校生の時に雑誌で見て一目惚れしました。普段は自動車のカタログを後ろのページ、つまりスペックから見るほどのスペックマニアですが、この初代6シリーズはスペックを全く気にすることなく、グラビアのような写真を見て惚れ込んでしまいました。
そしてこの6シリーズをベースとしたアルピナB9クーペは、美しさと速さを両立した究極のクルマと自分の中では永遠に残っています。自動車メディアに携わるようになり、BMW633CSiを運転する機会を得ましたが、乗り味を云々言う前に「世界一美しいクーペ」と呼ばれたクルマに乗れるだけで満足でしたし、登場から20年経過しても全くその美しさは劣化していないことを覚えています。
第1位:マツダ・RX-7(FD3S型)
そして第1位はFD3S型マツダRX-7(1991年~2003年)です。
免許証を取得した翌年の1989年は国産車のヴィンテージイヤーで、日産スカイラインGT-RやフェアレディZ、マツダロードスターなど国産スポーツカーが次々と販売されました。そして1991年にFD3S型RX-7が登場し、自動車雑誌で初めて見たときに「これはカッコイイ!」と感動しました。
スポーツカーらしいワイド&ローのフォルムそして、アスリートの筋肉のようなフェンダーはまさに速く走るための機能性をデザインしたクルマなのだと感じました。特にFD3S型マツダRX-7は斜め後ろから見たリアスタイルが絶品。できればリアスポイラー無しのスタイルが本当のマツダRX-7の美しいスタイリングを堪能できると思います。
FD3S型マツダRX-7は仕事に携わるようになり、1型から6型まで運転することができましたが、乗る度に美しいスタイリングを眺めていましたし、自分がRX-7の企画を作った時はメインカットを、早朝のマジックアワーの箱根で最高の1枚を撮影し、高い読者支持率を獲得し社内で表彰もされました。いま思えば、RX-7の美しいスタイリングが自分のスキルを成長させてくれた1台と言っても良いかもしれません。
『美しすぎるクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。