工藤貴宏さんが選ぶおすすめSUVは、予算300万円までならスズキ・ジムニー(特にシエラのMT)、予算600万円までならトヨタ・ハイラックス、そして予選無制限ならジープ・グランドチェロキーのトラックホーク。骨のある乗り味のSUVが勢揃いだ。
TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
予算300万円までなら「スズキ・ジムニー シエラ」
誰が何と言おうと、日本は武士道の国だ。だからSUV選びでも日本男児として恥じぬように硬派なクルマを選ぶべきである。
300万円以下で購入できるもっとも硬派なSUVはどれか。考えるまでもなく答えは出てくる。スズキ・ジムニーのほかにあり得ない。
ジムニーの武士道に通じるところ。それは基本に忠実なメカニズムに尽きる。軟弱なSUVなんて相手にもしないラダーフレームに、エンジンを縦置きとして搭載し、駆動方式は副変速機付きのパートタイム4WD。ジムニーのこの伝統的なメカニズムを前に、ほかのクルマを選ぶ理由なんて見当たるわけがない。
ジムニーには660ccの3気筒ターボエンジンを積む軽自動車版「ジムニー」と1500ccの4気筒自然吸気エンジンを積む普通車版「ジムニーシエラ」があるけれど、それは好みで選べばいい。個人的な好みはシエラで、トランスミッションは男らしくMTで乗りたい。なぜなら...シエラのMTが高速巡行時のエンジン回転数がもっとも低くて静かだから。騒がしいのは武士道に反するのだ。
予算600万円までなら「トヨタ・ハイラックス」
2017年秋、約13年ぶりに日本市場へ復活したトヨタ・ハイラックスに乗って興奮が止まらなかった。洗練されすぎた昨今の乗用車とは比較にならない、なんという懐かしい乗り味。しかし、これが妙に心地いいのだ。そこで600万円未満のベストはハイラックスとしたい。
実は、ハイラックスは硬派なクルマである。ラダーフレーム構造の車体に頑丈なサスペンションを組み合わせ、日本仕様は全車ともディーゼルエンジンに古典的な機械式4WDシステムをドッキング。なにが素晴らしいって、ランクル並みの悪路走破性を備えていることである。道なき道を走れる性能を持つ。これぞ男のロマンだ。いまやハイラックスは、ランクルにも通じる哲学を備えた味わい深いクルマになっているのだ。
室内も意外に広くて後席はゆったり座れるし、さらには大人が大の字になって寝られるほど広い荷台も備わるから実用性もバッチリ。車体は全長5.3mでちょっと大きすぎるけれど、これも味。
乗り心地が悪いとか、1ナンバーだから毎年車検とか高速料金が高いとか、ウィークポイントはいくらでもある。でも、それを超える魅力が詰まっているのだから文句を言っている場合ではないのだ。悪女だろうが小悪魔だろうが“惚れたら負け”の世界がここにはある。
ところでハイラックスはSUVなのか? トヨタの公式ウェブサイトを見るとしっかり「SUV」と分類されているのから、ここはその意向を尊重しておこう。
予算が無制限なら「ジープ・グランドチェロキー トラックホーク」
男は黙ってパワーである。
そう考えると、価格無制限クラスとしてイチオシはジープ・グランドチェロキーの「トラックホーク」に尽きる。なにが凄いかといえば、秘めたパワーだ。
たとえばスーパーカーメーカーのランボルギーニが誇る超高性能SUVの「ウルス」は650ps、高性能SUVとしておなじみのポルシェ・カイエンでもっともパワフルなのが「ターボS・Eハイブリッド」では680psと最近のSUVは高出力戦争も凄いことになっている。
しかし、そんなのまだまだ甘い。グラチェロのトラックホークは、なんと710ps。文句なしに頂点である。価格無制限級でSUVを選べと言われたら、これを買わずに何に乗れというのだ。
そんなトラックホークの心臓は、排気量6.2LのV8スーパーチャージャー付き。試しにテストコースでフル加速してみたら...あまりの暴力っぷりにもはや笑うしかなかった。昨今のクルマを取り巻く環境を考えると、こんなクルマが買えるのもそう長くはないかもしれない。だから、買える人は絶対に味わっておくべきだ。
『予算別ベストSUV・3選』は毎日更新です!
ますます人気が盛り上がっているカテゴリー、SUV。自動車メーカーも開発に力を入れており、ラインアップが充実しているのはうれしいのだが、どれを選べばいいのか迷ってしまいがち。
そんな迷えるSUVオーナー予備軍のために、「予算300万円まで」「予算600万円まで」「予算無制限」といった具合に予算別のベストSUVを紹介。毎日、自動車評論家・業界関係者に3台選んでいただくので、明日の更新もお楽しみに。