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18,000rpm以上回る過激派…と思いきや!? 車体もエンジンも優等生タイプでした。|カワサキ・Ninja ZX-25R SE


昨年の東京モーターショーで初公開されて以来、小出しにされた沢山の情報で溢れていたカワサキ・Ninja ZX-25Rと同SEが9月10日から、ついに新発売された。本誌でも早速Ninja ZX-25R SEのKRT EDITIONに試乗した。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●カワサキモータースジャパン

ライムグリーン×エボニー

カワサキ・Ninja ZX-25R SE KRT EDITION.......913,000円

メタリックスパークブラック×パールフラットスターダストホワイト(Ninja ZX-25R SE.......913,000円)
メタリックスパークブラック(Ninja ZX-25R.......825,000円)

 事前情報に溢れたのは、市場でも注目された証と言えるだろう。何しろ250ccにして4気筒エンジン搭載モデルの復活は多くのユーザーにとって大歓迎間違いなしである。


 既に情報過多なので詳細解説は割愛するが以前筆者が記した予想記事の誤りについて、言い訳を含めて少し触れておきたい。それはJonathan Reaがヘレスサーキットを疾走する映像から推測した記事で、ZX-25Rのボア・ストロークは「48.5×33.8mmあたりかもしれない」と記していたが、実際は50×31.8mmだった。


 かつてのZXR250よりもさらにショートストロークが追求されていた。


 筆者の読みが浅かったのは、インドネシア本国では50psを発揮する狙いがあったという点。この点を考えず、日本ではどうせ45psだろうから柔軟な出力特性を加味し排気量もギリギリまで大きく取るとストロークはZXR250より長めにするのではないかと予測したが、結果はハズレてしまったと言う顛末である。


 ちなみに圧縮比はZXR250より控えめなので、今後はまだポテンシャル向上の余地を残しているかもしれない。


 


 ところで往年のZXR250とギヤレシオを比較してみた。ZXR250がリヤに18インチホイールを履いていた点をは考慮していないが、総合減速比に着目するとローギヤで34.95 に対してZX-25Rは30.32 。トップギヤではZXR250の11.99 に対して10.74 と高めに振られている。


 ちなみに2気筒エンジンのNinja250はローギヤで24.27 、トップギヤでは8.41とさらに高めのセッティグである。つまりZX-25Rはトルクが小さな分をワイドな回転域でカバーするセッティングになっているわけだ。


 ただZXR250と比較すると、少々ヤンチャで俊敏ながらもギクシャクとシビアなエンジンフィールだった特性は、現代のニーズを踏まえて、いくらか穏やかで優しい方向にシフトされているように思えたわけである。


 少なくともレーサーレプリカでない事は間違いないが、果たして乗り味はどうか。

小気味好い吹け上がりと柔軟な出力特性が印象深い

 早速跨がると、上体の前傾具合や車体のサイズ感はNinja250と良く似た感じ。足つき性も同様に両足はベッタリと地面を捉えることができる。異なっているのは、ニーグリップ部を始めタンク&シートと車体にライダーが接する部分のフィット感がとても良い。


 車重は数値上では18kg重いとされているが、扱いやすさは特にその点が気になるレベルではない。またタンク内のガソリンの揺れが気になることも無かった。ハンドルはやや近く少し低い感じで、ステップは後退気味。走り始めるとマン・マシンの自然な密着度が高く、下半身の筋力も活かされる。


 筆者の体格にもピタリとマッチする。スポーツバイクに相応しい仕上がりである。ただし昔で言う所のレーサーレプリカの様な戦闘的スタイルではない。ステアリング切れ角も35°(ちなみにZXR250は31°) が確保され、あくまでもストリートスポーツとしてわきまえのある仕上がり具合に好感が持てた。


 エンジンを始動すると、ショートストロークの小気味良い4気筒ならではの連続音が響いてくる。それは意外な程静かで、住宅街での早朝始動でもそれほど気にする必要はなさそうだ。


 ただしアイドリングは1,800rpmと高く、暖機運転しているように思われてしまいそう。ZX-25R SEに限らない一般論だが、始動後は早々に発進して立ち去るのが正解である。


 操作の軽いクラッチを握り、ギヤをローに入れるとエンジン回転数は自動的に2,000rpmに高まってスタンバイ。クラッチミートしようとすると、さらに2,500rpmまで高まる。そのおかげでクラッチ操作だけで、アクセル全閉のまま発進してもエンストの心配は皆無。


 そのままそっと右手を開けて行けば、実にスムーズに加速を始める。至って穏やか、しかも柔軟性に溢れる出力特性である。意地悪してさっさと6速トップギヤに放り込んでアクセル全閉にすると、速度は16㎞/hまで落ちてくる。エンジン回転数も2,000rpmを下回るが、バイクはまるでギクシャクする事なくスムーズに安定して走り続ける。


 しかも驚くべきはそこからそおっと右手のスロットルを開けていくと、ジワジワとしかし着実に加速を始める。レッドゾーンが17,000rpm からの、極めて高回転高出力型なエンジンが、ここまで豊かな柔軟性を身につけられるとは、まさに信じられない思いで一杯になったのである。


 往年のZXR250の出力特性を思い起こすと3,000rpm以下ではほとんど頼りにならなかったし、本領発揮は6,000rpmを超えてからだったと記憶している。それと比較するとパワーバンドはずいぶん広くなりっており、実際には4,000rpmも回していれば、感覚的にはまるで不足のないパフォーマンスを発揮する。


 ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時の速度は18km/h。3速ギヤで出力特性を探ると8,000rpmから元気旺盛、さらに13,000rpmから勢いの増す吹け上がりがエキサイティング。回転はレッドを超えて18,000rpm までスンナリと上昇した。


 ただ、レッドゾーン近辺での伸び感では、むしろNinja250の方が鋭くなる高揚感が楽しめる。少しばかり伸び感が鈍くなるZX-25Rはあまり上まで積極的に引っ張ろうという気にはならなかった。早めにシフトアップして行く方が実際の加速力も強いだろう。


 6速トップギヤ、100km/hクルージング時のエンジン回転数は9,500rpm。120km/hクルージングなら11,500rpmである。トップギヤに入れっぱなしでオートマチック感覚で走るのも良し、2~3速シフトダウンして、高回転4気筒サウンドを満喫しながらの高性能を満喫するのもまた楽しい。


 クイックシフターも小気味よく決まるので通常はほとんどノークラチェンジを楽しむことになる。また停止時はニュートラルからローギヤにしかシフトできない。逆にローからはニュートラルへしかシフトできない仕組みになっているので、ニュートラルを探し出すのも容易だった。


 


 ……と、なにかとエンジンばかりに注目されがちなZX-25Rであるが、今回試乗して、むしろエンジンの優秀性よりも驚かされたのはハンドリングがとても素晴らしかった事である。


 それはもうクイックに向きを変え始める操縦性は、レーサーレプリカ時代のそれに負けていない。しかも驚きは素早い中にもしっとりとしたスムーズな挙動が伴うので、ライダーはリラックスした気分でいられる安心感が大きかった。


 装着タイヤはダンロップ製スポーツマックスGPR-300ラジアル。体重移動でコーナーへアプローチすると、それに伴いステアリングがスッと切れ込むが、タイヤ接地点の移動と相まったバランス点が絶妙で、旋回中も常にニュートラルな感覚が維持される。


 直進時はもちろん、コーナリング中でもさらに寝かして旋回力を強めるか、直進走行へと復帰させるか、いずれへも自由度がある。どの状態にあっても癖のない操縦性で走行ラインの修正が自由自在になるのである。


 従って危機回避能力も優れている。それに加えてUターン等でステアリングをフルロックまで操舵する場合でも、ハンドルを握る手と燃料タンクの間には適度な隙間が設けられていて、スロットル操作が邪魔される事はなく、市街地でも扱いやすい。


 そしてもうひとつ。フロントブレーキの効きと効き味、さらにその扱いやすさも素晴らしい。また前後サスペンションも上質な仕事ぶりが感じられフットワークの良さからくる安心感と快適な乗り心地が魅力的だ。


 ベーシックモデルのZX-25Rなら825,000 円というプライスはむしろかなりのバーゲンプライスと思えたのが正直な感想。末なが〜く大事に乗って、とっておけるコレクターズアイテムとしての素質も十分な物があり、90万円をオーバーするZX-25R SE の価格も納得のお値段である。




 なお、今回の試乗は市街地から高速と郊外を含めて約164kmを走行。レギュラーガソリンの消費量は8.07Lで燃料消費率は20.3km/Lだった。(※メーター表示の平均燃費率は21.3km/L)

足つき性チェック(身長168cm)

足つき性はご覧の通り、両足はベッタリと楽に地面を捉えることができる。シート高は785mm。後退したステップと低めのハンドル位置からか、ライダーは自然と身体の筋力を生かしたスポーティな気構えで乗ることができる。

ディテール解説

フロントマスクのデザインはNinja250と似た雰囲気だが、スクリーンの下に空いた逆三角形のエアダクトの存在がZX-25Rの特徴。風を積極導入するラムエアシステムの採用で、過給効果による高出力発生に貢献する。SEにはスモークのスクリーンが装着されている。

倒立式SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク-ビッグピストン)はSHOWA製のφ37mm。フローティングマウントされたシングルディスクローターにはNISSIN製の対向4ピストン・モノブロック油圧キャリパーがラジアルマウントされている。

カウルの中に覗く4本のエキゾーストパイプが壮観。写真からわかる通りそれぞれのパイプが連結されている。その後クランクケースの真下で1本に集合されている。

水冷の4気筒エンジンは右サイドカムチェーン方式のDOHC。狭角の16バルブは直打式で駆動される。クラッチにはアシストとスリッパー2種のカムシャフトが採用されている。

スイングアーム下からちょこんと顔を出すショートエンドマフラー。マフラーの主チャンバーは車体真下の中央にレイアウトされている。

ロングスイングアームのピボット付近上部にリンク機構を設けたホリゾンタルバックリンク式モノショック・サスペンション。車載工具のフックレンチを使ってプリロードが5段階調節できる。

リヤアームは右側を湾曲させた高張力鋼製のロングスイングアームを採用。リヤブレーキはφ220mmのシングルディスクにNISSIN製1ピストンのピンスライド式油圧キャリパーを装備。

トップブリッジの下側にクリップオンされたセパレートハンドル。トップブリッジに見られる肉抜きされた造形や、専用にあつらえた(と思われる)ブレーキマスターシリンダーのタンクデザインなど、このバイクに掛けられた思い入れの強さが現れている。

ハンドル左側スイッチは一般的な通常のスイッチを縦列左側にレイアウト。下から順にベストポジションにあるホーンボタン、プッシュキャンセル式ウインカースイッチ、ヘッドランプの光軸を切り替えるディマースイッチ、向こう側には人差し指で扱うパッシングスイッチがある。縦列右側はハザードスイッチ、その上がマルチファンクションボタンで、メーター表示やKTRC(カワサキ・トラクション・コントロール)、パワーモード、KQS(カワサキ・クィック・シフト)の切り替えができる。
ハンドル右側のスイッチはシンプルに一つだけ。前後方向に動かすグレーのスライドスイッチは前方に押すとエンジンキルスイッチに、手前に引くと始動用セルスタータースイッチとして機能する。
レッドゾーンは17,000rpmから。丸いアナログ表示の回転計をメインに右側にモノクロ液晶のデジタル表示、左に各種パイロットランプが組み合わせられている。基本的にはNinja 250のメーターと共通デザインだ。

SEには標準装備されたクイックシフター。UP/DOWN両方で機能する。装備されていないZX-25Rにはオプション(40,810円)で追加装備できる。

前後でセパレートされた段付きのダブルシート。フロントシートはワイドなクッションデザインで、前方は細身。厚みに不足の無いクッションは、こしのある座り心地だ。
車体左脇のキーロックを解錠すると、リヤシートクッションは簡単に脱着できる。シート下のスペースにはオプションのETC2.0車載器キット(38,500円)が収納されていた。シートロックブラケットの下にUSB電源ソケットが装備されている。
シートエンドのテールカウルに組み込まれた赤いテールランプはLED式。クリアレンズのウインカーには12V10Wのオレンジバルブが使われている。

マフラーの存在さえ見えない。後方ほどシュッとシェイプされたデザインは空力特性追求へのこだわりが感じられる。

◼️主要諸元◼️

型式:2BK-ZX250E


全長×全幅×全高:1,980mm×750mm×1,110mm


軸間距離:1,380mm


最低地上高:125mm


シート高:785mm


キャスター/トレール:24.2°/99mm


エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ


総排気量:249cm³


内径×行程:50.0mm×31.8mm


圧縮比:11.5:1


最高出力:33kW(45PS)/15,500rpm(ラムエア加圧時34kW(46PS)/15.500rpm)


最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/13,000rpm


始動方式:セルフスターター


点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式:圧送式ウェットサンプ


エンジンオイル容量:2.9L


燃料供給方式:フューエルインジェクション


トランスミッション形式:常噛6段リターン


クラッチ形式:湿式多板


ギヤ・レシオ:


 1速…2.928(41/14)


 2速…2.055(37/18)


 3速…1.619(34/21)


 4速…1.333(32/24)


 5速…1.153(30/26)


 6速…1.037(28/27)


一次減速比/二次減速比:2.900(87/30)/ 3.571(50/14)


フレーム形式:トレリス


懸架方式(前/後):テレスコピック(倒立・インナーチューブ径φ37mm)/スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)  


ホイールトラベル(前/後):120mm/116mm


タイヤサイズ(前/後):110/70R-17M/C (54H)/ 150/60R-17M/C (66H)


ホイールサイズ(前/後):17M/C×MT3.50/ 17M/C×MT4.50


ブレーキ形式(前/後):シングルディスクφ310mm(外径) /シングルディスクφ220mm(外径)


ステアリングアングル(左/右):35°/ 35°


車両重量:183kg(184kg)


使用燃料無鉛:プレミアムガソリン


燃料タンク容量:15L


乗車定員:2名


燃料消費率(km/L):


24.0km/L(60km/h・定地燃費値、2名乗車)


 18.9km/L(WMTCモード値、1名乗車)


 最小回転半径:2.6m

⚫️試乗後の一言!

量産の工業製品として、芸術的レベルの魅力が感じられた。

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