これまでの人生において、所有したり試乗したりした輸入車のなかからベスト3を業界人に選んでいただく本企画。大音安弘さんの第1位は、フォルクスワーゲン・ボーラ。地味目(失礼!)なセダンだが、V6エンジン+フルタイム4WD+6速MTというホットなモデルが存在していたのだ。
TEXT●大音安弘(OTO Yasuhiro)
第3位:ルノー・メガーヌR.S. R26.R(2008年-)
最も衝撃を受けたFF車といっても過言ではないのが、「ルノー・メガーヌR26.R」だ。高性能なメガーヌR.S.(ルノー・スポール)をさらに鍛え上げたというスパルタンな限定車で、日本には未導入。ところがルノー・ジャポン公式イベントで、なんと試乗車があり、ステアリングを握る機会が得られたのだ。
メガーヌシリーズでも個性的なメガーヌ2の3ドアをベースとするだけに、見た目のインパクトも大。ただ車内の方がもっとファンキー。実用車なのに、リヤシートを取り払い、ジャングルジムのようなロールケージを装着。フロントシートもフルバケットタイプに置き換えられ、なんともレーシーな空気が漂う。一部のウィンドウをポリカーボネート製にするなど、装備をそぎ落として軽量化も行っている。
2.0L直列4気筒ターボは、湧き上がるようなパワーを発揮。フロントLSDによるカミソリのようなコーナリングに痺れた。あれから、色々なルノー・スポールのステアリングを握る機会があったが、あの衝撃を超えることはない。私の中では、ベストR.S.ともいえる一台だ。
第2位:BMW 335i(2006年-/E90系)
続いては、今も気になる輸入車の一台でもあるBMW335i(E90)を挙げる。その魅力は、BMW自慢の6気筒エンジンによる滑らかな回転フィールとワープ感覚の恐ろしい加速だ。
普段は、6気筒車らしい上品な駆け抜ける喜びを提供してくれる。しかし、アクセルをひと踏みすれば、ドライバーは、シートに体が押し付けられるほどの強烈な加速を襲われるのだ。
ただ、そこはBMW。如何なる時もビシッとした走りを見せ、ジェントルに振う。なんともクールなやつなのだ。それでいて、ノン「Mスポーツ」仕様を用意する。その姿は、まさに「羊の皮をかぶった狼」だ。
335iは、セダンだけでなく、ツーリングやクーペ、カブリオレにも設定されるが、やはり乗るなら、セダンの標準仕様が良い。発売当時は、約700万円の高根の花。今となっては故障も怖いので、おいそれと手は出せないが、中古車サイトで良さそうな車両を見つけるために、つい凝視してしまう。
実は、このエンジンを1シリーズクーペにも搭載した135iもあり、こちらなら、MTも選択可能。実際に手にするなら、この2台はかなり迷いそう(笑)。ただいずれも最終型でも10年落ちに近いため、手にするなら、ちょっとスリリングだ(汗)。
第1位:フォルクスワーゲン・ボーラV6 4モーション(2001年日本発売)
ベストオブベストには、愛車を挙げておきたい。それがフォルクスワーゲン・ボーラV6 4モーションだ。
「ゴルフ4」シリーズのセダン版である「ボーラ」の高性能モデルで、見た目はおっさんセダンだが、その中身は、(大げさに言えば)デチューンしたR32ともいえるもの。自然吸気仕様の2.8LのV6エンジンは、バンク角が狭いため、「歯並びの悪い直6」と例えられる。そのためか、回転フィールは、V6のようでも直6のようでもある。端的に言えば、心地よい回転フィールが持ち味なのだ。そのパワーを紡ぎだすのは、なんと6速MT。そしてハルデックス式の4WDシステムを通して、タイヤに伝達される。フルタイム4WDは、後輪側のトルクが強いので、走りもFF風味が薄いのも魅力なのだ。
R32の名を挙げつつも、正直、この手の4WDセダンと比べても、刺激は薄め。ただ高速ツアラーとしては抜群。乗り心地は良く、標準の本革レカロシートのおかげで疲れにくい。悪天候での4WDの恩恵も大きく、突然の雪に見舞われても、何度も安全に帰ってくることもできた。実に頼もしい相棒なのである。
入手から15年たった今、まだボーラは手元にある。年式相応に痛み、各部に劣化も進んでいる。ただ痛みを除けば、今も特に不満はない。当時の自分には、随分、背伸びした選択だったが、良い買い物だったと思う。
【プロフィール】
1980年埼玉県生まれ。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『モーターファン.jp』のほか、『ベストカーWEB』『webCG』『マイナビニュース』『日経スタイル』『GQ』『ゲーテWEB』など。歴代の愛車は、国産輸入車含め、全てMT車という大のMT好き。