
欧州が震源地となって電動フィーバーが自動車業界を席巻する昨今だが、国内ではマツダ・SKYACTIV-Xや日産・VC-TURBOをはじめ、海外勢からもNEWエンジンの情報が届くようになってきた。自動車用パワートレーンの主役は、まだまだ内燃機関である。ただ、規制や燃費と戦うエンジン技術は益々高度化・複雑化しており、その技術を理解するのも一筋縄ではいかなくなった。ということで今回は、最新エンジンを正しく理解するために重要なキーワードをピックアップし、わかりやすく解説する。第一回は「ウェットサンプ」だ。
一般的な市販車のほぼすべてがウェットサンプ、ドライサンプはごく一部にとどまる

基本的にエンジン下のオイルパンにオイルを溜めるものがウェットサンプ、エンジン下部にオイルを溜めず、独立したオイルタンクを持つものがドライサンプと考えればよい。
ドライサンプから先に説明すると、エンジンをできる限り低位置にマウントしたいレーシングマシンなどで用いられるもので、オイルタンクから常にオイルを供給することで、高G下でも安定したオイル供給が可能という特徴を持つ。タンクではなくオイルパンにオイルを溜め、そこからポンプで汲み上げたオイルを各部に回すウェットサンプでは、高G下でオイルパンに溜まったオイルが偏り、オイルポンプの吸入口が露出してしまいオイルが汲み上げられないという事態を招きやすい。もちろん、そのようなことが起きないように、オイルパンを深くしてその底からオイルを汲み上げるようにしするという手法もとられるが、オイルが常にタンクから供給されるドライサンプほどの効果を得ることは難しい。ただし、ドライサンプは、エンジンケース内に落ちたオイルをすべて回収するためのスカベンジングポンプや、エンジンとは別にオイルタンクが必要となるなど、構造が複雑となりがち。
そもそも高Gに対応する必要のない一般市販車では、メリットを見出す方が難しいとあって、採用はごく一部にとどまる。


