中国で生産された190ccクラスのスポーツネイキットがCBF190Rだ。エンジンは空冷でパワーを控えめとしミッションは5速。しかしストリートにおけるその走りは水冷のライバル達に勝るとも劣らない。
PHOTO●渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)
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ホンダ・CBF190R.......359,000円(税込)
今回取り上げるCBF190Rは、中国の新大州ホンダ(シンタイシュウホンダ)で生産されているモデルだが、このマシンは中国だけを狙っているわけではない。拡大しているアジアのマーケットで200ccクラスのリーダーとなるべく送り出されたマシンである。
ホンダは当初、150ccクラスのブランドイメージを構築しようと様々なモデルを投入。ホーネット160でそれなりの成功を収めたが、アジア最大のマーケットであるインドではKTM200DUKEなど200ccクラスが人気。ホンダが当時ラインナップしていたホーネット160とCB300では排気量のギャップがあった。そこで200ccクラスにCB190の各モデルが投入されることになったのである。
CBF190Rはその中で、もっともスポーティなバージョンだと言ってよいだろう。中国では、このモデルを使ったワンメイクレースも行われているほどだ。
このマシンは、ビックバイクに勝るとも劣らないデザインや質感、倒立フォークの採用やフルLEDライトなど、充実した装備が特徴だ。ゴージャスな作りの国内仕様モデルを見慣れたテスターの目から見ても、チープな印象はまったく受けない。
空冷190cc単気筒エンジンは、トルクフルかつスムーズ。低中回転では振動もほとんど感じず、メカノイズも聞こえない。下手な水冷エンジンよりよほど滑らかで気持ちの良い回り方をする。
回転を上げるにつれてパワーが増えていき、レブリミットまで勢いが衰えることなく回っていく。高回転でのパワーを追求しているわけではないから上の方でトルクが盛り上がるようなことはないが、高回転で苦しげなフィーリングにはならないから、速く走りたい時に高回転を常用してもストレスはない。ミッションは5速だが、全域でトルクの太いエンジン特性の為、まったく不足を感じなかった。とても完成度の高いエンジンである。
ハンドリングは素直かつ軽快。ラジアルタイヤを装着している為に高い安定感と接地感があり、思い切ってマシンをバンクさせることができる。
サスペンションの動きも良好だ。タンデムの多いアジア圏の使い方に合わせ、リアサスが硬めになっているから、もしもタンデムを重視しないのであれば、スプリングやリアショックを交換するなどして、もう少しリアの動きを良くしてやると、更に気持ちよくコーナーリングできるようになるだろう。
ただし、ポジションには違和感がある。着座位置とハンドル位置の関係でハンドルがとても近いのである。ハードにブレーキをかけてコーナーに侵入しようとしたり、体重移動したりすると、ハンドルへ不必要な力がかかりやすく、気をつけないと不安定な挙動を起こしそうになる。
また、フルロックでUターンしようとした時も内側のグリップが体に近くなるため操作しにくい。もしもこのマシンを購入して、その点が気になるようであれば、ハンドルポストにアダプターを取り付けてハンドルを前に出すか、あるいはタンクにパットをつけて着座位置を後ろにずらすこともできる。
ただし、こういう改造はライダーの重心や荷重のかけ方が変化するため、ハンドリングに影響が出る。モディファイする場合は、そのあたりの兼ね合いも確認しながら進めなければならない。
アジアの激戦区200ccクラスに、敢えて空冷エンジンを搭載して最高出力も控えめとし、5速ミッションとしたのは、このマシンがスペックではなく、走りの楽しさで勝負しようとしているからに他ならない。CBF190Rで走り出すと、そのことがよく理解できるのである。
足つきチェック(ライダー身長178cm)
ディテール解説
全長×全幅×全高:2029×739×1041mm
シート高:769mm
ホイールベース:1356mm
最低地上高:150mm
車重 142kg
エンジン型式:4 ストローク空冷単気筒OHC
排気量:184cc
ボア✕ストローク:61.0×63.0mm
圧縮比:9.5:1
最大出力 :12.4kW/8000 rpm
最大トルク:16.3Nm/7000 rpm
燃料タンク容量:12L
燃料供給方式:インジェクション
始動方式:セルフスターター
変速機:5速
タイヤサイズ(フロント):110/70R17 TL
タイヤサイズ(リヤ): 140/70R17 TL