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スバルの前デザイン部長で現在は、首都大学東京で教鞭をとる難波治教授が、MFスタッフとともに東京モーターショーを取材したのは、もうだいぶ前。ジュネーブ・モーターショーも北京モーターショーも中止・延期になって華やかなコンセプトカーともちょっとご無沙汰気味の今こそ、もう一度、期待のコンセプトカーのデザインチェックをしようと思う。今回は日産アリア コンセプトを取り上げる
COMMENT◎難波 治(NAMBA Osamu/首都大学東京教授) まとめ&PHOTO◎MotorFan.jp編集部
「スリーク」、「シームレス」、そして「シック」
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難波教授:日産アリアです。いまのところ、コンセプトでしょうか。新しいEVのSUVコンセプトですね。
MF:そうです。コンセプトなんですが、「市販化前提」らしいですよ。発売が2020年か21年かはまだわかりませんが。
難波教授:まずは、日産のオフィシャルコメントから読み込んでみましょうか。
「スリーク」、「シームレス」、そして「シック」というキーワードに特徴付けられた「ニッサン アリア コンセプト」には、幅広いフロントフェンダー、超極薄LEDヘッドライト、そして輝く日産エンブレムを特別にあつらえたフロントシールド(ガソリン車のグリルに相当する部位)などエクステリア全般にわたり、新しいデザインランゲージの要素が散りばめられています。
ということです。
MF:ふむ。スリーク、シームレス、シックですか。
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難波教授:日産車は、これまでフロントエンドからというか、ノーズからフロントのサイドに回り込んでリヤのフェンダーにいく、それから大きくウェーブしたデザインの構成から、これは新しい世代に変わったったことを示しているのかなと思います。全体に、フロントからリヤに軽いウェッジを持ってシャープに抜けていて、しかもシルエットとして、非常にバランスが良いです。フロントタイヤとリヤタイヤにきちんと重量が乗っている、そんなプロポーションの良さ、アーキテクチャーの良さを感じるクルマですね。フロントエンド、それからリヤ周りは、今回出したIMKっていう、軽のEVコンセプトと同じように非常に新しい日産のフェイス周りのまとめ方を象徴的に見せているんだと思います。
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MF:リヤに回ってみましょう。
難波:じつは真横に一文字のテールランプは、とくに目新しくはないんです。ですから、アリア コンセプトのリヤ周りがのデザインは、とくに特徴的ではないと思います。しかし、ここまでシンプルな造形っていうのができていれば、デザインで求められる水準はクリアしてますね。それから、コンセプトカーだからなんですけど、タイヤが非常に四隅でしっかりと踏んばっていることにも注目してほしいです。ガラス、いわゆるガラスキャビンとタイヤの関係がしっかりとできているので、スタンスもいい。デザイン上の座りもいいということになっています。これは非常にクリーンで、綺麗な感じです。
MF:おっ教授、なかなか評価高いですね。
難波教授:ところが、ですね。ちょっと印象がきれいなぶん、インパクトが少ないなって感じ。癖がないことがいいところなんですけど、癖がないことが少し印象に残らないって感じになってしまっていますね。でもひと塊としては、すごくいい感じがします。
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MF:せっかくですからEVシティコミューターのIMKも見てみましょうよ。
難波教授:これは軽のEVですね。これも同じような造形テイストとか組み立ての仕方、手法で造形されています。ただですね、こちらはね、全長のないつらさというか、ホイールベースもそこそこなんですけど、タイヤのホイールアーチ、それからフェンダーの膨らみ、そこから前後に突き抜けるキャラクターのラインまでのバランスが、そのキャラクターラインの上、下というものの造形面のバランスがですね、やや重たくのしかかっています。とくにリヤのホイールアーチから上に重量感をすごく感じてしまいますね。Aピラーからルーフの抜けとかサイドに走るキャラクターとか、頑張ってスタイリッシュにしようとしてるんですけど、やっぱりちょっと苦労してる感じがします。
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