コンパクトカーの新基準となりそうな新型トヨタ・ヤリス。TNGAのGA-Bという新しいプラットフォームを使い、THS IIのハイブリッドモデルはWLTCモード燃費で36.0km/ℓという驚異的な燃費性能をもつ。対するライバルは、間もなく登場する新型ホンダ・フィットか? シリーズハイブリッドの日産ノートe-POWERか。いや、本家トヨタのアクアか? スズキ・スイフトか?
夢の3リッターカーの実現=WLTCモード燃費36.0km/ℓのヤリス
2020年2月10日に発売となる新型トヨタ・ヤリス。ここでは、WLTC燃費で36.0km/ℓをマークするハイブリッドモデル、「X 2WD」を取り上げる。なぜこのグレードをピックアップしたか。車両価格が199万8000円でちょうど200万円に収まるからだ。というわけで、「上限200万円」でコンパクトカーを選ぶとどうなるか?
新型ヤリスのWLTCモード36.0km/ℓという燃費性能は、自動車産業の夢の実現ということもできる。いわゆる「3ℓカー(3ℓの燃料で100km走れるという意味)」はずっと自動車産業が追い求めてきた目標だ。これまでVWのXL-1など「超・燃費スペシャル」なモデルがクリアしてきたレベルで、新型ヤリスが普通に売られる普通のクルマ、しかも価格200万円以下で実現したのは本当に驚異的なことなのだ。
まずは、サイズ比較から。
まずは、この3台。
新型ヤリス・ハイブリッドのWLTCモード燃費36.0km/ℓがいかにすごいか、は冒頭に述べたが、今回比較するその他のモデルはJC08モード燃費で計測されている。
計測方法はまったく違う。例えば
平均車速は
JC08モード:24.1km/h
WLTCモード:36.6km/h
最高速度は
JC08モード:81.6km/h
WLTCモード:97.4km/h
など、測定方法がかなり違うから、単純比較はできないが、ちょっと乱暴に言ってJC08モード燃費の85%程度がWLTCモードになると思っても大きくは外れないだろう。
つまり、新型ヤリス・ハイブリッドのWLTCモード燃費36.0km/ℓは、JC08モードでは42.4km/ℓ程度ということになる。ということを念頭に置いて、各モデルの燃費も見ていこう。
この3モデルを比較すると、じつは新型ヤリスがもっとも小さい。アクアはホイールベースはヤリスと同じ2550mmだが、全長は11cmも長い。日産ノートとなるとさらに5cm長い。ヤリスと比較すると16cmもノートは全長が長いのだ。
燃費を比較してみよう。
■トヨタ・ヤリス HYBRID X WLTCモード燃費:36.0km/ℓ
■トヨタ・アクアS JC08モード燃費:34.4km/ℓ
■日産ノートe-POWER X JC08モード燃費:37.2km/ℓ
となる。
今度は室内の広さも比べてみよう
■トヨタ・ヤリス HYBRID X 室内長×幅×高:1845mm×1430mm×1190mm
■トヨタ・アクアS 室内長×幅×高:2015mm×1395mm×1175mm
■日産ノートe-POWER X 室内長×幅×高:2065mm×1390mm×1255mm
となっている。
トヨタ・ヤリス vs スズキ・スイフトは?
■トヨタ・ヤリス HYBRID X WLTCモード燃費:36.0km/ℓ
■スズキ・スイフト ハイブリッドSL JC08モード燃費:32.0km/ℓ
■スズキ・スイフトスポーツ ベースグレード(6AT) JC08モード燃費:16.2km/ℓ
スズキ・スイフトハイブリッドは、スズキ独自の軽量で比較的簡便なハイブリッドシステムを搭載する。1.2ℓ直4+モーターのスイフトハイブリッドの燃費はJC08モード燃費で32.0km/ℓとなかなか良好だ。
走りの良さで定評のあるスイフトスポーツになると、1.4ℓターボ+6ATでJC08モード燃費は16.2km/ℓとなるから、これはヤリス ハイブリッドの競合車として取り上げるのはちょっと性格が違いそうだ。しかし、どちらも200万円内に収まる魅力的なモデルだと言える。
コンパクトなヤリスよりもさらに短い全長、それでいて軽快で小気味い走りを予想させるボディデザインは、スズキらしいし、大きな長所だろう。
室内の広さは次の通りだ。
■トヨタ・ヤリス HYBRID X 室内長×幅×高:1845mm×1430mm×1190mm
■スズキ・スイフト ハイブリッドSL 室内長×幅×高:1910mm×1425mm×1225mm
■スズキ・スイフトスポーツ ベースグレード(6AT)室内長×幅×高:1910mm×1425mm×1225mm
さて、車両価格200万円以下で買える新型ヤリスのライバルを見てきた。日産ノートは、2020年夏にもフルモデルチェンジが噂されている。e-POWERも進化するだろうし、プラットフォームも最新のCMF-Bが採用されるだろう。大きく性能もアップする次期ノートの登場が楽しみだ、
新型ヤリスの当面最強のライバルは、これも2020年に発売される新型ホンダ・フィットだろう。次は、ヤリスとフィットを比べてみよう。
ホンダ期待の新型フィットは、ハイブリッド系のパワートレーンを刷新する。従来のi-DCDから上級モデルが使ってきたホンダ独自の2モーターハイブリッドであるi-MMDに変更するのだ。
これをコンパクトなフィットに載せるために、さまざまな技術的トライがなされた。
新型フィットについては、価格、燃費等詳細は未発表だ。しかし、価格は直接のライバルであるヤリスとほぼ同じと思っていいだろう。
燃費データは、当然新型フィットはWLTCモード燃費となる。となるとヤリスの36.0km/ℓと直接比較されるわけだが、数年前に展開されたような「コンマ1km/ℓでもライバルを上回るために、装備を落として……」ということはなさそうだ。
同じi-MMDを搭載するインサイトLXはJC08モード燃費が34.2km/ℓでWLTCモードは28.4km/ℓとなっている。ひと回り(いや、二回り?)大きいインサイトで28.4km/ℓなのだから、新型フィットが30km/ℓ台半ばをマークするのは確実なような気がするが、どうだろう?
いずれにせよ、新型ヤリス、新型フィットの登場で、Bセグ・コンパクトカーの基準は大きく上がった。この2台がベンチマークとなって2020年代がスタートする。次期日産ノートe-POWER、次期マツダ2などがどう進化するのかも楽しみだ。