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SKYACTIV-X搭載のMAZDA3、400km走ってわかった○と×。数値(燃費)に表れない魅力はあるか?


2019年の日本の自動車業界最大の話題は、なんといってもマツダのSKYACTIV-Xエンジンだろう。革新的燃焼技術SPCCI、圧縮比15.0、24VのM-HYBRID、そしてその価格など話題に事欠かなかった。そのSKYACTIV-Xエンジン搭載のMAZDA3にようやく数日間試乗する機会を得た。走った距離は400km。果たしてSKYACTIV-Xの真価は?

SKYACTIV-X搭載モデルは、まったく別モノ

 ようやくSKYACTIV-Xエンジン搭載のMAZDA3に少し時間をかけて乗ることができた。「MAZDA3 FASTBACK X L Package」のFF、6ATモデル、車両価格338万463円のモデルである。




 SKYACTIV-Xエンジンについては、すでに当サイトでも数多くの記事を掲載してきたので、技術的な詳細については割愛する。




 ポイントは


・日本仕様は、圧縮比が15.0(欧州仕様は16.3)


・日本仕様は、プレミアムとレギュラーの両方に対応(欧州仕様はRON95に対応)


・最高出力/最大トルクは、日本仕様、欧州仕様ともに180ps/224Nmで同じ


 ということだ。




 スタッフがマツダR&Dセンター横浜で借り出して東新宿の編集部まで(約40km)、混雑した首都高と一般道を走った際の燃費系計は14.4km/ℓを示していた。

全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm

最小回転半径:5.3m
車重:1440kg 前軸軸重930kg 後軸軸重510kg


 さて、試乗車は前述の通り、FBのX L Package(FF、6AT)は、SKYACTIV-X搭載の最上級グレード(バーガンディレッドの本革シートのバーガンディセレクションを除く)である。




 MAZDA3については、これまでに試乗会以外で


ファストバックXD(ディーゼル/FF/6AT)を600km


セダン20S L Package(2.0ℓガソリン/FF/6AT)を400km


 試してみた。


 今回のファストバックX L Package(FF/6AT)の400kmを加えれば1400kmほど走ったことになる。




 という前提条件のうえで、X L Packageに乗り込んだ。

ボンネットフードを開け、カプセル化されたエンジンのカバーをこの写真のように開ける

ボンネットを開けると見える景色はこうだ

SKYACTIV-X エンジン形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCスーパーチャージャー+Mild Hybrid エンジン型式:HF-VPH型 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm 圧縮比:15.0 最高出力:180ps(132kW)/6000rpm 最大トルク:224Nm/3000rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム

エンジンのカバーの裏側はこちら

 イグニッションスイッチを押してエンジンを始動する。アイドリングは、ガソリン(SKYACTIV-G)でもディーゼル(SKYACTIV-D)でもない、やはりその中間な音と振動だ。


 走り出して、すぐに「いままでない感触」であることに気づく。


普通の自然吸気ガソリンエンジンでは明らかにない。


ディーゼルエンジンでもない。


過給ダウンサイジングターボでもない。


 なんとも不思議な感触だ。高応答エアサプライ(イートン製スーパーチャージャー)はシリンダーに送風することが目的で「過給機」として使っているわけではない。過去にあった機械式スーパーチャージャーが高く唸るような音はまったくしなかった。


 アクセルを踏み込んだ瞬間から、同じ2.0ℓのSKYACTIV-G2.0とはまったく違う太いトルクを感じる。でも、それはディーゼルのような大トルクではない。たとえば、1.8ℓディーゼルターボのSKYACTIV-D1.8(116ps/270Nm)のようなトルクの出方とも違う。G2.0と比較すると「24ps/25Nm」、Xの方がパワフルなのだが、その数字以上にトルキーに感じる。


 これまで味わったことのない感じだ。


 都内の渋滞をトロトロ走ると、燃費は12km/ℓ台中盤あたりだ。それでも、ほぼ「SPCCI燃焼」しているのに、まずは驚いた。




 翌朝、冷間始動(前夜20時にエンジンオフ、翌朝8時に再始動だったから、エンジンをカプセル化した効果で完全に冷間始動になったわけではないかもしれない。このあたりは、次の機会に確認したい)してすぐに、SPCCI燃焼になった。全開加速以外はほぼSPCCIでいけるようだ。

インテリアの質感はクラス随一。シートの出来もいい

後席の乗り心地は格段に改善されていた
本革シートは好みではないが、このシートはお尻が滑らずとても好印象だった


 SKYACTIV-Xエンジンを搭載するMAZDA3は、ほかのエンジンを積むMAZDA3とは別のクルマである。より上質なのだ。


 高速道路の料金所を出たところで、フル加速をしてみたが、「肌理が細かい」燃焼感がする。燃焼感とは妙な言葉だが、SKYACTIV-Dよりも精緻でSKYACTIV-Gよりも肌理が揃っているだけでなく一粒一粒が硬い感じ、とでも言おうか。


 ただし、6800rpmあたりから始まるレッドゾーンまでスカーッと吹け上がるわけではない。最高出力をマークする6000rpmあたりまでが気持ちよく回せる範囲だ。このあたりは、過去に存在した自然吸気超高回転型エンジンのようなキレの良さはいまのところない。最大トルクは3000rpmで発生するが、1500-6000rpmはどこでも気持ちよくエンジンが反応してくれる。




 ちなみに、SKYACTIV-G2.0の最大トルク199Nmは4000rpmで


 SKYACTIV-Xの最大トルク224Nmは3000rpmで発生する。ドライブしていても、Xが低回転から力強いことはすぐにわかる。




 加速は、SKYACTIV-X搭載モデルの方が明らかにいい。これはエンジンによるものと、最終減速比がG2.0とD1.8が4.095であるのに対して、Xは4.367と高いことも関係しているだろう。

トランスミッションはマツダ自製の6速AT。1速:3.552 2速:2.022 3速:1.347 4速:1.000 5速:0.745 6速:0.599 後退:3.052 最終減速比4.367

リヤはTBA(トーションビームアクスル)式 X搭載モデルは各部に手を入れているようだ

 今回の試乗でのチェックポイントのひとつは、乗り心地だ。D1.8を搭載するXD試乗した際には、跳ねる感じ、とくにリヤの突き上げ感が気になった。


 今回のX搭載モデルはどうか?


 これがまったく違うのだ。リヤの突き上げ感は大幅に改善されていた。これまで新型MAZDA3の後席に何度も乗って乗り心地を試してきたスタッフによれば、「まったく違います。乗り心地、これならOKです」とのことだった。


 マツダ開発陣にモーターファン・イラストレーテッド編集スタッフが取材したところによると、X搭載モデルは、空気圧を前260kPa(G2.0は250kPa、D1.8は260kPa)後250kPa(G2.0、D1.8も同じ)にしたという。それだけ? ではもちろんなくて、リヤサスペンションの支持剛性やアーム周りの板厚を上げたり、ステアリングラックの支持剛性を上げたりと細かな改良を施したらしい。


 とにかく、これなら満足な乗り心地だ。


 これらの施策は、X搭載モデルが「重い」ということも原因だろう。


同じボディ、同じトランスミッション、同じ駆動方式で


G2.0(FF/6AT):1360kg


D1.8(FF/6AT):1410kg


X(FF/6AT):1440kg


 とXがもっとも重いのだ。車重の重さは乗り心地には好影響を与えることが多い。G2.0やD1.8モデルも、このX搭載モデルと同じような乗り心地に改善されていることを望む。

タイヤは215/45R18サイズのトーヨー 空気圧は前260kPa後250kPa

標準でシートヒーター、ステアリングヒーターを装備。寒い冬にはありがたい

 NV性能の高さも特筆すべきところだ。風切音、ロードノイズともに非常に低く、車内はとても静かだ。試乗車にはBOSEサウンドシステムがオプション装備されていたが、標準オーディオの音の良さも確認済みだから、ここはどちらを選んでも問題ないだろう。


 高速道路100km/h巡航時のエンジン回転数は約2100rpm、110km/hは約2300rpm、120km/hは約2550rpmあたりだ。7速、8速でダウンサイジング過給エンジンを搭載するライバルのそれよりはちょっと高めの回転数だが、静かだから気にならなかった。

MAZDA3のオーディオにはCD・DVDスロットがある。今回は、日本が世界に誇る天才・冨田勲の「新日本紀行 冨田勲の音楽」とレーナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィルの「ベートーベン交響曲第9番(いわゆる第九)を聴いた。オーディオ、非常に良いです。

ブレーキのフィールはかなり変わった。いわゆる「ストロークで制御する」のではなく「踏力で制御する」ようになった。これはいい。でも、いきなり乗り換えて街中でブレーキを普通に踏むと「あれ?」と思うかもしれない。だが、慣れればこの方がコントロールしやすいはずだ

ボディ色はスノーフレイクパールマイカ

 今回400kmほど走行したが、内訳は、空いた高速道路:4割 酷い渋滞の高速道路2割 都内の一般路3割、郊外路1割だった。全体としてかなり交通状況は悪く、Xの旨味を堪能できそうな空いた郊外路はほとんどなかった。




 モード燃費は


WLTCモード燃費 17.2km/ℓ


 市街地モード 13.7km/ℓ


 郊外モード 17.6km/ℓ


 高速道路モード 19.0km/ℓ


 


 これに対して400km走った総合燃費は、14.3km/ℓだった。WLTCモード燃費の達成率は83.1%。空いた高速道路+空いた都内だとほぼモード通り(高速道路モード)18.6km/ℓを記録した。今回は渋滞が多かったが、東京周辺の通常の道路状況ならモード燃費の90%程度は楽にいきそうだと感じた。つまり15.5km/ℓ程度だろう。




 車重が80kg軽いG2.0搭載モデルのモード燃費は


燃費:WLTCモード燃費 15.6km/ℓ


 市街地モード 12.1km/ℓ


 郊外モード 15.8km/ℓ


 高速道路モード 17.7km/ℓ




だ。10%ほどXの燃費がいい。こちらも実燃費がモード燃費の90%だと仮定すると14.0km/ℓとなる。



燃料はハイオク推奨。レギュラーでも問題なく走る

 Xがハイオク、G2.0がレギュラーということを考慮して計算し直すと(レギュラー144円/ℓ、ハイオク155円/ℓとして)


X=10円/km


G2.0=10.3円/km


となる。つまり、燃費はほぼ同じなのだ。


ついでに、D1.8も同じ計算式で計算すると(軽油124円/ℓ)


D1.8=7.0円/kmとなる。




 つまり、燃費ではXにアドバンテージはないのだ。

マツダコネクト2.0は、だいぶよくなったが、たとえば、この縮尺になると「VICS情報は反映されない」と言われてしまう。この縮尺だからこそ、渋滞情報が知りたいのに

価格は


G2.0と基準に考えると


D1.8が約27万円高


Xが約67万円高


 である。これをどう考えるか。Xは確かに異次元の体験をさせてくれる。運転していてとても楽しい。でも、ガソリン比67万円高か……。




 でも、もう一度車両価格を見て、競合車と比べてみると……




 MAZDA3のXの最上級グレード(つまり今回の試乗車 FF)が338万463円






 カローラスポーツの最上級モデル(ハイブリッドG Z FF)が282万4800円。


 レクサスCTのエントリーモデル(CT200h FF)が383万9815円


 メルセデス・ベンツAクラスのエントリーモデル(A180 FF)が334万円


 BMW 1シリーズのエントリーモデル(118i FF)が334万円


 アウディA3のエントリーモデル(スポーツバック30TFSI FF)が304万円


 VWゴルフTSIのガソリンの上級グレード(TSIハイライン FF)が338万円


 ルノー・メガーヌのスポーツ系でない上級グレード(GT FF)が346万2000円




 となる。MAZDA3の値付けは、欧州のプレミアムメーカーのCセグのエントリーグレードとほぼ同じにしてあることがわかる。




 比べるべきは、MAZDA3のG2.0搭載モデルではなく、メルセデスのAクラス、BMWの1シリーズ、VWゴルフのハイラインなのだ。と考えると、MAZDA3のX搭載モデルが与えてくれる新しいドライビングプレジャーと美しいデザイン、上質な内装は非常に魅力的に思えてくる。


 上記の競合車もレクサスCT、カローラスポーツを除けば燃料はハイオクだから、燃費性能もMAZDA3に分がある。

 今回の400kmの試乗を終えての個人的な結論は、


「MAZDA3買うなら、やはりSKYACTIV-X搭載モデルだ」


 である。これまで、「Xを待たなくてもいい。ディーゼルがいい」だの「価格差を考えるとG2.0もいい」と書いてきたが、やっぱりX、良かった。




 それほど、SKYACTIV-Xに魅力を感じた。G2.0の67万円高だと思うと選べないが、輸入車Cセグのエントリーグレードと比較すると抜群のコストパフォーマンスと言っていいと思う。


 


 あと少しだけ。


 G2.0やD1.8搭載グレードに乗った時のインテリアの質感は、まったく文句なしだった。ところが、X搭載グレードに乗ったら、少しだけ不満を覚えた。最上級グレードだから装備や質感もMAZDA3最上級だ。


 しかし、SKYACTIV-Xエンジンがもたらすドライブの質感は、いまのMAZDA3のインテリアの質感を上回る。


 たとえば、マツダ・コネクト2.0(格段に進化している)、たとえば、センターコンソールのカップホルダーの蓋、たとえばメーターのデザイン……。もっと上質にしないと釣り合わない。もっと言えば、SKYACTIV-Xは後輪駆動のクルマに載せてほしい。直列6気筒のSKYACTIV-Xを縦置きする美しいセダン、早く登場してほしい、とMAZDA3のXに乗って思った。




 SKYACTIV-X、まだ登場したばかりだ。その潜在能力をフルに発揮したわけではないだろう。それでも、これほどの感覚を味合わせてくれるのだ。これから、さらに磨きがかかってもっといいエンジンになっていくはずだ。




 その先行投資の意味も込めて、「X、アリ」と言っておく。




 最後にひとつ苦言を呈していいなら(ちょっと言い訳も入っているが)、SKYACTIV-Xエンジン搭載グレードの発売でようやくMAZDA3のラインアップが完成したわけだが、新型のデビューと同時に少なくともパワートレーンに関してはラインアップを完成させておくべきだと思う。せっかくMAZDA3を選んだ人、選びたかった人に後悔の念を与えてしまったかもしれないから。



MAZDA 3 FASTBACK X L Package


全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm


ホイールベース:2725mm


車重:1440kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式Rトーションビーム式


駆動方式:FF


エンジン


形式:2.0ℓ直列4気筒DOHC


型式:SKYACTIV-X HF-VPH


排気量:1997cc


ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm


圧縮比:15.0


最高出力:180ps(132kW)/6000pm


最大トルク:224Nm/3000rpm


燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)


燃料:無鉛プレミアム


燃料タンク:51ℓ


燃費:WLTCモード燃費 17.2km/ℓ


 市街地モード 13.7km/ℓ


 郊外モード 17.6km/ℓ


 高速道路モード 19.0km/ℓ


モーター MK型交流同期モーター 4.8kW/60.8Nm

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